昇格・昇任試験の準備で、手が止まりやすいものの一つが論文です。当サイトでは、知恵袋の質問76件を読みました(2026年10月)。準備中の人の悩みで最も多かったのが論文の書き方で、9件でした。

昇格・昇任論文についての質問は、別に16件を集めました。そのうち「何を書けばよいかわからない、書き出せない」が8件、「型や構成がわからない」が6件ありました。件数は検索語の選び方に左右されるので、よくある悩みの種類として見てください。

書き出せない原因は、文章力より、書く前の準備にあることが多いと考えられます(推測)。この記事では、書き始める前にやることを、評価の観点に沿って説明します。

なお、昇格パスは論文を代わりに書くことはしません。この記事にも、そのまま写せる見本の文章は載せていません。自分の職場の事実から、自分で組み立てるための手順です。

※この記事に出てくる職場や数字は、説明のために作った架空のものです。

まず、形式と観点を確かめる

論文の形式は、試験によって大きく違います。

  • 公務員・教員:試験の当日に、会場で書く形が多く見られます。たとえば東京都の主任級職選考(種別A)は、2時間30分で2題から1題を選びます。基本的な認識を300〜500字程度、具体的な取組を1,200〜1,500字程度で書く形です(令和7年度の実施要綱)。
  • 民間:事前に提出する形と、当日にテーマが出る形の両方があります。当サイトで読んだ知恵袋の質問では、800〜2,000字ほどの例が見られました。

評価の観点は、形式が違っても似ています。東京都の同じ要綱では、論文を「問題意識、問題解決力、論理性、表現力等」で評定するとしています。民間向けの対策の説明でも、これに「具体性」「立場に合っているか」を加えたものが挙げられています。

観点 評価する側が確かめていること
問題意識 テーマの背景をわかっているか。職場や組織の目線で問題を捉えているか
問題解決力 解決策が課題から筋道立てて出てくるか
論理性 問題点、課題、解決策が対応しているか
表現力 短い文で、誤りなく書けているか
具体性 自分の職場の事実や数字があるか。誰が、いつ、何をするか
立場 受ける役職にふさわしい範囲の提案か

試験の要綱や案内に観点が書かれていれば、それを手元に置きます。書かれていなければ、上の表を目安にします。

手順1:職場の事実を「材料カード」に集める

書き出せないときは、テーマを見てから書く中身を考え始めていることがあります。そうすると、一般論に流れやすくなります。

先に、自分の職場の事実を集めておきます。カード1枚に1つの出来事を書き、次の4つの欄を埋めます。

  • 事実:何が起きたか(数字があれば数字)
  • 原因:自分はなぜ起きたと考えるか
  • 自分がしたこと:そのとき自分は何をしたか
  • 結果と残った課題:どうなったか、何が残っているか

架空の例(市役所の窓口の係)を1枚だけ示します。

欄 中身
事実 転入の手続きが集中する3〜4月、窓口の平均の待ち時間が約40分になった
原因 手続きに慣れた職員が2人に偏り、ほかの職員は確認に時間がかかった
自分がしたこと よくある質問を1枚の確認表にまとめ、係で共有した
結果と残った課題 待ち時間は約30分に縮んだ。担当の偏りは残っている

このカードを3〜5枚作っておくと、人材育成、業務改善、住民サービスなど、多くのテーマに差し込めます。当日にテーマが出る試験でも、材料から考え始められます。社名や人名は、カードの段階から伏せておきます。

手順2:問題点・課題・解決策を対応させる

材料がそろったら、文章を書く前に、次の対応表を作ります。ここで大切なのは、1つの課題に1つ以上の解決策が対応していることです。

問題点(事実) 課題(何を変えるべきか) 解決策(誰が・何を・いつまでに)
(カードから) (自分の言葉で) (自分の役職でできる範囲で)
(カードから) (自分の言葉で) (自分の役職でできる範囲で)

表を埋めたら、次の問いで自分の表を点検します。

  • 課題の欄が「意識改革」「連携強化」のような言葉だけになっていないか。それは具体的に何が変わることか。
  • 解決策は、受ける役職の権限の中で実行できるか。主任なら係の中、課長なら課の範囲になっているか。
  • 解決策に、誰が、いつまでに、が入っているか。
  • 問題点の中に、職場や上司への不満だけに読めるものはないか。

手順3:骨組みを作り、時間を計って書く

対応表ができたら、序論、本論、結論の骨組みにします。東京都の主任級のように、前半に短い「認識」、後半に長い「取組」を書かせる形式なら、それに合わせて字数を割り振ります。

骨組みの各段落に、どのカードの事実を使うかを書き込んでから、本文を書き始めます。本番が手書きなら、練習も手書きか、少なくとも時間を計って書きます。時間内に書き終えることも、評価の前提だからです。

当日にテーマが出たときの進め方

会場でテーマを見てから書く形式では、材料カードを持ち込めません。カードの中身を、テーマに合わせて思い出すところから始めます。

  1. テーマの言葉を分ける:たとえば「職場の課題と、その解決に向けた取組」なら、「課題」と「取組」の2つを問われています。問われていることに線を引き、答える順に番号を振ります。
  2. カードを選ぶ:覚えているカードの中から、テーマに合うものを1〜2枚選びます。合うものがなければ、いちばん近い出来事を、テーマの言葉で言い直せないかを考えます。
  3. 対応表を余白に書く:問題点、課題、解決策を、単語だけで書きます。きれいに書く必要はありません。
  4. 字数を割り振る:序論、本論、結論に、おおよその字数を書き込みます。

ここまでを、全体の時間の1〜2割で終えると、書く時間を十分に残せます(目安。推測)。

字数が合わないとき

練習で書いてみると、字数が足りない、または大きく超える、ということが起こります。

  • 足りないとき:解決策の「誰が、何を、いつまでに」が抜けていないかを見ます。多くの場合、足すべきなのは前置きではなく、解決策の中身です。
  • 超えるとき:テーマの一般的な説明が長くなっていないかを見ます。背景の説明を短くし、職場の事実と解決策に字数を回します。

字数の調整は、言い回しで埋めるのではなく、対応表に戻って中身で調整します。東京都の主任級職選考の形式に合わせた準備は、東京都の主任級職選考の論文にまとめました。

一般論と、自分の論文の違い

評価する側から見て、一般論の論文は「どこかで読んだことのある文章」に見えます。比べるために、1文だけ例を示します。

  • 一般論:職員の育成を推進することが求められている。
  • 材料のある文:慣れた職員が2人に偏り、繁忙期に待ち時間が約40分まで延びた。

2つ目の文は、上手な言い回しではありません。けれども、この職場でしか書けない事実です。採点する人が知りたいのは、この事実をどう見て、どう動くかです。

書いた後に一般論の文を見つけて直す手順は、論文で「一般論」と言われたときにまとめました。

文章を道具に任せないほうがよい理由

生成AIなどの道具を使うと、整った文章はすぐに作れます。ただ、そうした文章には、自分の職場の事実が入りにくくなります。

また、会場で時間を計って書く試験では、その場で材料を思い出し、自分で組み立てるしかありません。材料と骨組みを自分で作り、自分で書く練習を重ねるほうが、本番の力になります。

書いたものを見てもらうには

論文は、書いた後に評価する側の目で見てもらうと、直す場所がはっきりします。社内で頼みにくいときは、外の手段を使う方法もあります。

昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は無料で試せます。

プランの説明を見る 無料体験を見る

関連する記事