自分で書いた部分は「である」なのに、後で足した文は「です」になっている。資料の表現をメモした部分が、そのまま原稿へ残っている。書き直しを重ねた論文では、文体の混在だけでなく、誰の言葉なのかが曖昧になることがあります。
文末を直す前に、自分の文章と引用や要約を分けて確認しましょう。この記事は編集部の推敲の提案です。例は架空で、特定の試験の規則ではありません。文体や引用に指定がある場合は、その指示を優先します。
「です」を全部置き換える前に
文体の統一は、単純な語尾の一括置換では済まないことがあります。引用した言葉まで変更すると、元の表現と違ってしまいます。また、「考えられる」を「である」に変えると、推測を断定へ変えてしまう場合があります。
まず、自分が説明している地の文と、外部の資料の内容を扱う部分を見分けます。さらに資料の言葉をそのまま使った引用なのか、自分の言葉でまとめた要約なのかを確かめます。引用の必要性や出典表示は、試験の条件に従って扱います。
| 文章の種類 | 文体の点検 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 自分の説明 | 選んだ文体が続いているか | 文体の統一で意味を変えない |
| 自分の推測 | 推測であることが伝わるか | 断定表現に置き換えない |
| 資料の要約 | 自分の言葉で書けているか | 要約を自分の実績にしない |
| 短い引用 | 引用の範囲が明確か | 元の表現を勝手に直さない |
| 作業用メモ | 本文に残してよいものか | メモの口調を残さない |
「である調なら評価が高い」といった一般化をする必要はありません。指定を守り、自分の説明として一貫して読めるかを確かめます。
架空例:会議の記録から材料を選ぶ
架空の業務改善の練習で、会議に出た意見を材料にしたとします。手元のメモには話し言葉があり、原稿には自分の考察があります。この二つを続けて写すと、文体だけでなく主語や立場も切り替わります。
必要なのが発言そのものなのか、そこで確認した問題なのかを考えます。発言の再現が必要でなければ、扱ってよい事実を自分の言葉で整理する方法があります。ただし、誰かの意見を職場全体で確認された事実へ広げないようにします。
ここで「使いにくいという意見があった」という材料と、「使いにくい仕組みである」という判断は同じではありません。文末を整えるだけのつもりで、根拠の確かさを変えていないかを見ます。架空の例でも、この区別を残して練習できます。
実在の会議記録や社内資料を外部のサービスへ入力する必要はありません。練習では情報の取り扱い規則を守り、個人や組織が特定される材料を避けます。
文体を点検する手順
- 試験の指定と、自分が使う地の文の文体を確認する。
- 原稿の文末を順に読み、混在する箇所へ印を付ける。
- 引用・要約・作業メモが混ざっていないか確かめる。
- 自分の文を直し、推測や条件の意味が保たれたか読む。
- 最後に段落全体で主語と立場が続いているか見る。
文末だけを拾うと、内容の流れを気にせず混在を探しやすくなります。そのあと全文へ戻るのは、語尾だけでは判断できない意味の変化を確かめるためです。二つの読み方を使い分けます。
全体の確認項目は、論文の見直しチェックリストでも整理しています。この文章は、文体と文章の出どころが混ざる場合に絞っています。
文末が同じでも、文の役割は違う
同じ語尾が続くのを避けようとして、必要のない言い回しを増やすことがあります。読みやすくする工夫はできますが、変化を付けるためだけに断定や推量を入れ替えないようにします。
「実施する」は行動の表明、「実施できる」は可能性、「実施が必要である」は必要性を述べています。見た目が似ていても、役割は異なります。文体をそろえるとは、全部を同じ意味の文末にすることではありません。
また、体言止めを多用すると、メモの列挙のように読める場合があります。効果を狙って使ったのか、作業用の箇条書きが文章になっていないのかを確かめます。設問が文章での論述を求めているなら、その条件に合う形へ自分で整えます。
文章の出どころを練習メモに残す
公開資料を参考にした場合は、どの資料の何を使ったかを練習用の記録へ残しておくと、後で事実を確かめられます。メモの段階で引用と要約が混ざると、原稿になってから区別するのが難しくなります。引用を使う必要がなければ、無理に引用を増やす必要はありません。
他者の説明を少し語尾だけ変えても、自分の考察になったわけではありません。資料から得た事実と、それを受けて自分が判断した内容を分けます。その違いが原稿でも読めるかを確かめることが、文体の点検とつながります。
また、直接の発言を再現する必要がないのに、記憶だけでかぎ括弧へ入れた文章を作らないようにします。正確な言葉を確認できないなら、発言の趣旨を扱うのか、そもそも材料にしないのかを考えます。実在の人を特定する情報も不要です。
語尾を整えたあと、出典に由来する説明だけが自分の主張と同じ断定になっていないかを確認します。文章が滑らかになっても、根拠の区別が消えたなら修正が必要です。誰が何を述べているかを、読みやすさと一緒に守ります。
用語の表記も合わせて確認します。同じ対象を別の呼び方で書いているなら、意図した使い分けかを見ます。文末はそろっていても、対象の名前が変わると別のものの説明に見えることがあります。略称を使う場合は、読み手が対応をたどれるようにします。
自分の判断が始まる場所を探す
資料の要約の後に自分の考察を置いた場合、その境目を指し示してみます。書き手には分かっていても、読み手には資料の結論が続いているように見えることがあります。誰の判断なのかが伝わる表現かを確認します。
逆に、自分の意見の後に資料を添えたからといって、意見全体が資料で裏付けられたことにはなりません。資料が支える事実と、そこから自分で考えた部分を分けます。
文末をそろえる作業の最後には、引用符の閉じ忘れや、要約なのに引用符を付けた箇所も見ます。見た目の統一と、言葉の出どころを正しく示すことを一緒に確かめます。
内容の修正を終えてから、もう一度見る
文体を整えたあとに内容を足すと、その部分だけ口調が変わることがあります。最後の見直しでは新しく書いた文も含めて確認します。ただし、残り時間が限られるときに文末だけへ集中し、設問への答えの欠落を見逃さないようにします。