働き方改革や長時間労働は、昇格・昇任論文で出やすいテーマの一つです。「ワーク・ライフ・バランス」「多様な働き方」「時間外勤務の縮減」のような言い方で出ることもあります。

このテーマは、世の中の動きを長く書いてしまいがちです。論文で求められているのは、制度の説明ではなく、管理職として自分の職場で何をするか、だと考えられます(推測)。

この記事では、職場の実態の示し方と、管理職の打ち手として書く準備の手順を説明します。

※この記事に出てくる職場と例は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。

このテーマで評価されること

働き方のテーマは、世の中で話題になることが多い分、読み手はよく似た論文を何本も読むことになります。その中で目に留まりやすいのは、制度の話ではなく、その職場の時間の使われ方が具体的に見える論文だと考えられます(推測)。

書く側から見ると、次の3つを自分の言葉で言えるかが準備の目安になります。

  • 自分の職場で、時間はどの仕事に、どの時期に使われているか
  • その時間の使い方を変えるために、受ける役職で何を動かせるか
  • 変えた後、仕事の出来ばえをどう確かめるか

背景として、法律の決まりに短く触れるのはかまいません。厚生労働省の説明では、民間の時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とされています。臨時の特別な事情があって労使で合意した場合でも、年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満などの上限があります。

ただし、決まりの説明は1〜2文にとどめます。公務員や教員には、別の決まりや指針があります。自分の職場に当てはまる決まりは、職場の規程や案内で確かめてから書きます。

自分の職場の実態を数字で示す

材料集めは、職場の時間の使われ方を数字にすることから始めます。

切り口 集める数字の例
1年の波 月ごとの時間外の合計を12か月並べたときの、山の位置
1日の波 時間外に入ってから片付けている仕事の種類
仕事の種類 会議、資料づくり、問い合わせ、移動など、時間を食う仕事の割合
休み 年休の取れた日数、休みの日に連絡が来た回数

数字は、合計や平均を出すだけで終わらせず、分けて並べてみます。12か月に並べると山の時期が、仕事の種類に分けると時間を食っている作業が見えてきます。論文の問題の段落には、こうして分けた後の数字を使うと、打ち手とのつながりが見えやすくなります。

正確な数字がなければ、おおよその値でかまいません。「繁忙期の3か月は、係の2人が月40時間前後」のように書けば、問題の形は伝わります。個人が特定できる書き方は避け、人数や割合でまとめます。

業務の見直しと人の配置

時間を減らす打ち手は、仕事の量を減らすか、仕事の配り方を変えるかのどちらかです。「早く帰ろう」と呼びかけるだけでは、仕事の量は変わりません。

  • 量を減らす:やめてよい作業、回数を減らせる会議や報告、二重の確認を探す
  • 時期をならす:締切が集中する仕事を、前倒しや分割で散らす
  • 配り方を変える:担当が一人に固まっている仕事に、もう一人の担当を付ける
  • 会議と報告を見直す:使われていない資料や、目的が重なる会議を減らす

管理職の打ち手として書くなら、自分が決められることを中心にします。全社の制度を変える提案は、受ける役職の権限を超えやすいので、上に提案する形で1つ添える程度にとどめます。

休みやすさと公平さ

働き方のテーマでは、休みやすさも材料になります。休みにくい理由の多くは、休んだときに仕事が止まる、代わりの人に迷惑がかかる、という不安だと考えられます(推測)。

打ち手は、休む人の気持ちではなく、仕組みに向けます。仕事の進み具合を係の全員が見られるようにする、担当を2人ずつにする、といった形です。

休みやすさの打ち手を書くときは、休む人の代わりに誰が何をするのかまで書きます。「休みを取りやすくする」とだけ書くと、残った人の負担が増えるのではないか、という疑問が残るからです。代わりを務める人の仕事を何で減らすかを1文添えると、職場全体を見て書いていることが伝わります。

成果を落とさない工夫

時間外を減らす話だけで論文を閉じると、読み手は「その分、納期や品質に響かないのか」と考えます。時間のものさしと並べて、出来ばえのものさしを最初から用意しておきます。

  • 減らす作業を選ぶときに、「これだけは質を落とさない」ものを先に決める
  • 効果を確かめる数字に、時間だけでなく、成果の数字(処理件数、苦情、期限の守れた割合など)も入れる
  • 最初の数か月は、前と後を比べて、質が下がっていないかを確かめる

時間と成果の両方のものさしがあると、「早く帰る」話ではなく、仕事の進め方を変える話として読まれやすくなります。

管理職自身の働き方も材料になる

働き方のテーマでは、部下の時間外だけでなく、管理職自身の働き方を問われることもあります。部下には早く帰るように言いながら、上司が遅くまで残っていると、部下は帰りにくくなります。

論文で、自分の働き方に一言触れておくと、言っていることとやっていることがそろって見えます。たとえば、次のような点です。

  • 夕方以降に部下へ急ぎの依頼を出さない
  • 自分が抱えている決裁や確認を、部下の仕事が止まらない時間までに済ませる
  • 会議の時間を決め、終わりの時刻を守る

ただし、管理職が一人で仕事を抱えこむことを打ち手にするのは避けます。管理職の時間外が増えるだけで、職場の仕組みは変わらないからです。任せる仕事と、自分が持つ仕事の分け方を書くほうが、管理職の打ち手として伝わります。

テーマの出され方の違い

このテーマは、題名の言い方によって、中心に置く材料が少し変わります。

  • 「時間外勤務の縮減」なら、時間の数字と、時間を使う仕事の見直しが中心
  • 「ワーク・ライフ・バランス」なら、休みやすさと、時間に制約のある人の働き方が中心
  • 「多様な人材が力を発揮する職場」なら、仕事の配り方と、成果の見方の公平さが中心

整理表を作るときに、表の欄外へ「この材料は時間外の話として使う」「休みやすさの話として使う」と書き添えておくと、題名の言い方が変わっても、中心に置く行を選び直すだけで済みます。

架空の例:材料の整理表

食品メーカーの営業管理の係で、係長を目指すAさんは、次の表を作りました。

項目 Aさんの職場の材料
実態 毎月の部門会議の前の3日間、係の5人が資料づくりで合わせて40時間ほどの時間外
仕事の種類 集計表が12枚。そのうち会議で話題になるのは、ここ半年で5枚ほど
原因 表は年々足されてきたが、やめる決まりがなく、前の月の表を写して作り続けている
打ち手1 会議で使われた表を3か月記録し、使われない表をやめる案を課長に出す
打ち手2 残す表は、元のデータから集計できる形に作り直し、写す作業をなくす
質を保つ点 会議で判断に使う数字は減らさない。やめた表も、求めがあればその都度作る
効果の測り方 会議の前の時間外、会議の場で追加の資料を求められた回数

元の文と比べると、違いは1文でも見えます。

  • 前:職員の意識改革を進め、長時間労働の是正に努める。
  • 後:会議の前の3日間に集中する資料づくりを、使われていない集計表の廃止と作り直しで減らす。

この後に何を書くかは、表の行から自分で組み立てます。

一般論にならないための点検

  • 法律や世の中の動きの説明が、2文を超えていないか
  • 「意識」「雰囲気」で終わる打ち手がないか
  • 時間を減らす打ち手に、成果を保つ工夫が添えてあるか
  • 打ち手の主語が、自分や係の人になっているか

「ワーク・ライフ・バランスの実現に努める」のような文が段落の結びに残っていたら、論文で「一般論」と言われたときの手順で、時間と仕事の名前が入った文に直します。時間を食う仕事の原因を「なぜ」で掘る方法は、昇格論文のテーマ「業務改善・生産性向上」と共通です。

教員の管理職選考を受ける人は、学校ならではの事情を扱った教頭試験の論文テーマ「学校の働き方改革」を先に読むと、材料の集め方の違いが分かります。

よくある書き方と直し方

よくある書き方 読み手の見え方 直し方
序論で法律や社会の動きを1段落書く 自分の職場の話が始まるまでが遠い 決まりの説明は1文にし、すぐに職場の数字へ移る
打ち手と効果の段落で、時期の話が出てこない 1年のどの山を低くするのかが見えない 山の時期を名指しし、その時期の仕事に打ち手を当てる
効果が「職員の働きやすさの向上」だけ 何で確かめるのかが分からない 時間の数字と、仕事の出来ばえの数字を1つずつ書く

どの直し方も、時間の話を、仕事の中身の話に結びつけることが中心です。

書いたものを見てもらうには

働き方の論文は、毎日その時間外の中にいる本人ほど、事情を省いて書いてしまいがちです。会議の前に忙しい理由が自分には明らかでも、読み手には書かれた分しか伝わりません。

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