主張と対策は書いたのに、指定の字数に届かない。余白を埋めようとして、社会の変化や管理職の決意を長く説明していませんか。文章が増えても、最初の主張を理解するための材料は増えていないことがあります。
書き足す前に、読み手が補わなければならない説明を探します。この記事は編集部が提案する推敲の方法です。以下は架空の材料例で、文章の代筆はしません。最低字数の有無や数え方は、受ける試験の指定を確認してください。
短いことと、説明が足りないことを分ける
短くても問いに答えている文章はあります。一方、主張の名前だけが並び、事実や理由が省かれているため短くなった文章もあります。字数だけで良否を決めず、何を説明した原稿なのかを読みます。
たとえば「業務を標準化する」という施策の名前はあっても、どの業務の何がばらついているのかがなければ、必要性は読み手の想像に任されています。そこで足したいのは、標準化の大切さを繰り返す文ではなく、自分が観察した事実です。
| 確かめる不足 | 自分へ投げる問い | 水増しになりやすい追加 |
|---|---|---|
| 事実 | 何が実際に起きているか | 世の中全体の背景 |
| 理由 | なぜその課題を選ぶか | 重要だという言い直し |
| 関係 | なぜその施策が必要か | 別の施策の追加 |
| 実行 | 誰が何を変えるか | 意欲や決意の繰り返し |
| 確認 | 実施後に何を見るか | 必ず改善するという断定 |
表を上から全部埋めればよいわけではありません。設問の要求と、自分の原稿で不足している説明に合わせて使います。
架空例:業務の共有を進めたい
架空の事務部門で、担当者が休むと処理の場所がわからなくなるという材料があるとします。「情報共有を進める」と書いたところで止まっているなら、読み手は何を共有し、何が変わるのかを知りたいはずです。
材料を考える問いとして、保存場所が見つからないのか、最新の手順がわからないのか、担当者しか判断できない例外があるのかを分けます。それぞれ、必要な対応は同じとは限りません。
もし実際に知っているのが保存場所の問題だけなら、例外処理の多さまで事実として作らないようにします。字数を増やすために経験を足すのではなく、持っている事実を丁寧に区別します。不明な点は、確認したい事項として扱えます。
次に、共有する情報の更新を誰が担うか、古い情報を使わないように何を確認するかを考えます。こうした問いに自分で答えると、施策名だけでは表れていなかった実施条件が見つかります。本文には設問と字数に必要な材料を選んで書きます。
足す内容を選ぶ手順
- 設問の要求と、原稿中の回答箇所を照合する。
- 主張を読んで「なぜ」「具体的には」と問い返す。
- 答えるための事実や考えが手元にあるか確認する。
- 不足を補う材料だけを加える。
- 足した部分が中心の主張から外れていないか読む。
問い返しても材料がない場合は、文章の技巧では埋められません。練習段階なら、経験を振り返ったり、公開資料や扱ってよい記録を確認したりする準備へ戻ります。根拠がない数字や、他人の経験を自分の実績のように置くことは避けます。
字数と全体の準備については、論文の字数に合わせた考え方も参照できます。ここでは、執筆後に足りない内容を探す方法に絞っています。
例を足すか、例の意味を説明するか
すでに具体例があるなら、別の例を増やす前に、その例から何を考えたかが書かれているかを確かめます。出来事だけ詳しく説明し、自分の判断が一言で終わっている場合があります。
反対に、同じ判断を何度も言い直しているなら、必要なのは新しい表現ではなく根拠です。「連携が大切」「協力が必要」「一体で進める」という文を増やしても、誰と何を調整するかは明らかになりません。追加する文の役割を先に考えます。
練習用には、余白に「この文で新しく伝わること」を短く記します。同じ答えが続くなら重複している可能性があります。逆に、何も書けない文は、読みやすさをつなぐ役割があるのか、なくてもよいのかを点検します。
足りないのが材料か、説明かを見分ける
経験はあるのに書けない場合と、経験や観察がない場合では、準備が違います。前者なら、何を見てどう判断したかを自分に問い返します。後者なら、適当な経験を作るのではなく、設問に使える別の材料があるかを探します。
事実を詳しく書けるのに論文が短い場合は、その事実から何を考えたかが省かれているかもしれません。反対に、考えを長く説明できるのに具体例がない場合は、判断を支える材料を確かめます。どちらも「もっと詳しく」と一括りにせず、不足の種類を分けると取り組みやすくなります。
書き足す内容に迷ったら、読者がその段階で知っている情報を考えます。自分には当然の役割分担や仕事の流れも、説明がなければ伝わりません。ただし、業務の手順書になるまで詳しく書く必要はありません。主張を理解するために必要な前提を選びます。
最低字数を満たすために不要な内容を足すより、問いへの答えを支える説明を増やすことを目指します。練習段階で材料不足がわかったなら、書き直しだけを繰り返さず、観察や経験の振り返りへ戻る判断もできます。
追加した文を消しても説明が同じなら、その文の必要性を再検討します。
空欄の理由を分けて次の準備を決める
不足する説明を表にしたとき、空欄がすべて同じ理由とは限りません。経験を思い出せない、事実を知らない、選ぶ理由がまだ決まっていない、といった違いがあります。それぞれ必要な準備を一つずつ選びます。
経験なら自分の行動を振り返り、不明な事実なら扱ってよい資料で確かめます。判断が未定なら、材料を増やす前に何を重く見るかを考えます。検索で見つけた一般論をどの空欄にも入れる方法では、原稿の不足と結びつかないことがあります。
追加する前に「この材料でどの問いに答えるか」を短く説明します。それが言えない材料は、字数が増えても今回は使わない選択ができます。
指定に届けば終わりにしない
書き足した結果、前半は現場の課題、後半は社会全体の課題というように、扱う範囲が変わることがあります。主語や対象が途中で広がっていないかを確認します。字数が満ちても、問いへの答えが散らばっては意味がありません。
自分では説明済みだと思う部分ほど、実際の言葉を指し示して確認してください。頭の中の経験を読み手は知りません。一方、すべての経験を説明する必要もありません。判断を理解するための材料を選びます。