校長試験(校長選考)の論文は、教頭のときの論文と比べて、求められる視点がもう一段上がります。学校の課題をどう解くかに加えて、学校をどこへ向かわせるかという、経営の方針が問われます。
この記事では、公開資料で確かめた形式の例をもとに、出題の型と、学校経営方針として書く準備を説明します。テーマの予想はしません。どのテーマにも使える材料と組み立て方に絞ります。
※この記事に出てくる人物と学校は、説明のために作った架空のものです。
校長の論文で見られること
はじめに、論文がどの段階に、どれくらいの重みで置かれているかを見ておきます。次の表は、教育委員会の資料で読み取れた2つの自治体の校長選考です。自分の自治体では、受ける年の要項で形式を確かめてください。
| 自治体(資料の時期) | 校長選考の形式 |
|---|---|
| 熊本市(令和8年6月の報告。令和9年度の採用に向けた試験) | 一次は論文(90分、100点)と勤務成績(50点)、二次は個人面接(200点) |
| 島根県(令和7年6月の会議資料。令和8年度に向けた試験) | 一次は論文記述(90分。学校管理・学校教育)と面接(15分)、二次は面接(20分)を2回 |
熊本市の資料は、校長選考の論文の出題内容を「管理職として必要な教育制度、教育法規、学校の管理運営、教育時事等」と「熊本市の教育行政」としています。
論文で見られるのは、次のような点だと考えられます(推測)。
- 学校の課題を、根拠のある事実で示しているか
- 課題に対して、校長としての経営の方針を示しているか
- 方針を、教職員が動ける具体策に落としているか
- 自治体の教育の方針や、法令・制度を踏まえているか
出題の型
校長の論文の出題は、大きく次の型に分けて考えられます(推測)。
| 型 | 問われ方の例(架空) |
|---|---|
| 教育課題型 | 「〇〇の課題について、校長としてどう取り組むか」 |
| 学校経営型 | 「あなたが目指す学校像と、その実現のための方策」 |
| 組織運営型 | 「教職員の力を生かす学校組織づくりについて」 |
| 地域連携型 | 「家庭・地域と連携した学校づくりについて」 |
どの型でも、骨組みは同じです。学校の現状と課題、目指す姿、校長としての方針、具体策、効果の確かめ方。この骨組みで材料を準備しておけば、型が変わっても組み立て直せます。
学校の課題の立て方
課題は、自分が勤める学校、または勤めてきた学校の事実から立てます。
- 子どもの姿:学力の傾向、生活の様子、不登校、いじめの対応の状況
- 教職員の姿:年齢の構成、経験の偏り、勤務の時間、研修の機会
- 学校の運営:会議、校務分掌、情報の共有、行事の見直し
- 家庭・地域:連携の仕組み、保護者の声、地域の資源
課題は1つか2つに絞ります。たくさん並べると、校長として何を優先するかが見えません。教頭として見てきた事実は、校長の論文でも大事な材料になります。
経営方針と具体策のつなぎ方
校長の論文の中心は、方針と具体策のつながりです。
- 目指す姿を言う:数年後に、子どもと教職員がどうなっているか
- 方針を1文で言う:その姿に向けて、学校として何を大事にするか
- 具体策を2〜3つに絞る:誰が、何を、いつまでに
- 評価の仕方を書く:どうなれば、方針が進んでいると言えるか
方針の言葉だけが立派で、具体策が「研修の充実」「意識の向上」で終わると、経営の方針として読まれにくくなります。具体策を、教職員の行動の言葉にします。
目指す姿の書き方を比べる
1の「目指す姿」は、校長の論文で最も抽象的になりやすい部分です。1文ずつ比べます。
- 抽象的な文:子どもが生き生きと学ぶ、笑顔あふれる学校をつくる。
- 姿が見える文:3年後、授業の終わりに自分の考えを書いて説明できる子どもを、各学級の大半にする。
2つ目は、何を見れば近づいたと言えるかが分かります。目指す姿が具体的だと、方針も具体策も、それに合わせて絞りやすくなります。
法規や教育行政を、論文にどう入れるか
熊本市のように、法規や教育行政が出題の範囲に示されている場合、制度の知識を論文に入れる必要があります。ただ、制度の説明に字数を使いすぎると、学校をどう動かすかが薄くなります。
入れ方の目安は、次のとおりです。
- 制度や方針は、名前と要点を1〜2文で示す
- すぐに「本校では」と、自分の学校の事実に戻る
- 制度が求めていることを、学校の具体策のどこで満たすかを書く
自治体の教育振興の計画や、その年度の重点は、論文の中で1つ触れられるように要点を書き出しておきます。覚えるのは文言そのものより、自分の学校のどの課題と結びつくか、という対応です。
教職員を動かす書き方
校長は、自分で授業をするのではなく、教職員を通じて学校を動かします。論文でも、教職員をどう動かすかを書きます。
- 任せる:教頭、主幹教諭、主任に、どこまでを任せるか
- 支える:教職員が動きやすいよう、時間や仕組みをどう整えるか
- 育てる:若手、中堅、ベテランそれぞれに、何を期待するか
- 確かめる:進み具合を、いつ、どう確かめるか
「全教職員が一丸となって」という言葉は、気持ちは伝わっても、誰が何をするかが見えません。役割の名前で、行動を書きます。
材料を集める時期
校長の論文の材料は、教頭として日々の校務の中で集められます。
- 年度の初め:学校経営の方針が、教職員にどう伝わり、どう動いているかを見る
- 学期の終わり:子どもの姿、教職員の勤務、行事の振り返りを、事実と数字で書き留める
- 年度の終わり:方針と結果を比べ、来年度に変えることを1つ書き出す
教頭のときに見てきた事実は、校長の論文の一番の材料です。思い出して書くより、その時期に書き留めておくほうが、具体的な事実が残ります。書き留めるときは、うまくいったことだけでなく、思うように進まなかったことも残しておくと、論文の課題の材料になります。
架空の例:小学校の教頭
小学校の教頭をしているTさん(52歳)は、校長の論文の練習で、具体策に「教職員の働き方改革を推進する」と書いていました。比べるために、1文だけ例を示します。
- 一般論の文:教職員の働き方改革を推進し、子どもと向き合う時間を確保する。
- 方針として書いた文:行事の準備を学年から分掌に移し、主幹教諭に進行の管理を任せて、学年会の時間を月に2時間減らす。
2つ目の文は、上手な言い回しではありません。けれども、誰に何を任せ、何がどれだけ変わるかが分かります。
Tさんは、ほかの具体策も同じ目で見直しました。すると、主語が「教職員」「本校」になっている文が多く、役割の名前が出てくるのは1か所だけでした。主語を教頭、主幹教諭、学年主任などに置きかえていくと、校長が誰に何を任せる経営なのかが、読み手に伝わる形になりました。
もう一つ、Tさんの論文には、具体策を進めた結果をどう確かめるかが書かれていませんでした。学年会の時間の記録と、学期ごとの教職員への短い聞き取りを、確かめ方として足しました。
一般論にならないための点検
| 問い | 「いいえ」のときに足すもの |
|---|---|
| 学校の事実と数字が入っているか | 子ども、教職員、運営の事実 |
| 目指す姿に、期限があるか | 何年後に、どうなっているか |
| 方針と具体策が対応しているか | 方針ごとに具体策を1つ以上 |
| 具体策の主語が、役割の名前になっているか | 教頭、主幹教諭、学年主任など |
| 自治体の方針や制度を踏まえているか | 関係する方針を1つ |
出題のテーマを当てようとするより、4つの型のどれが来ても組み直せる材料を手元にそろえておくほうが、時間の限られた本番では頼りになります。点検で「いいえ」が付いた行は、抽象的な言葉を学校の事実へ戻す作業で直せます。その手順は論文で「一般論」と言われたときで扱っています。
選考全体の流れや面接との関係は、校長試験(校長選考)の準備で整理しています。
一人で準備するときの限界
校長の論文を、校内で読んでもらえる相手は多くありません。自分の学校の校長に頼めることもありますが、何度も書き直すたびに見てもらうのは難しいでしょう。自分で読むと、方針と具体策がつながっていないところを、頭の中の知識で補って読んでしまいがちです。
昇格パスの論文の演習には、教員(教頭・校長)の区分があります。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。
本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。
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