論文の準備で手が止まると、まず例文を探したくなります。当サイトで読んだ知恵袋の質問でも、論文の悩みの中に「例文がほしい」という声がありました(2026年10月)。

例文は、使い方しだいで役に立ちます。けれども、言い回しをそのまま借りると、評価が下がりやすくなります。

この記事では、例文が役に立つところと、写すと評価が下がりやすい理由、例文から取り入れてよい「型」、自分の材料への置きかえ方を説明します。昇格パスは論文を代わりに書くことはしません。この記事にも、例文そのものは載せていません。

※この記事に出てくる職場と数字は、説明のために作った架空のものです。

例文が役に立つところ

例文は、次のことを知るのに役立ちます。

  • 全体の長さの感覚:指定の字数が、どのくらいの量か
  • 段落の分け方:序論、本論、結論に、どのくらいずつ字数を使っているか
  • 文体:「だ・である」調で書くと、どんな印象になるか
  • 見出しの付け方:見出しを付けてよい形式で、どう付けているか

つまり、例文から学べるのは、主に「形」です。中身(職場の課題と解決策)は、例文からは借りられません。

写すと評価が下がる理由

例文の言い回しを写すと、次のような理由で評価が下がりやすいと考えられます(推測を含む)。

  1. 一般論になる:例文は、誰が読んでも分かるように書かれています。そのぶん、どの職場にも当てはまる一般論になりがちです。採点する人が知りたい「この人の職場の事実」が入りません。
  2. ほかの受験者と似る:よく見られる例文は、ほかの受験者も見ている可能性があります。似た文章が並ぶと、どれも印象に残りにくくなります。
  3. 面接で崩れる:事前に出す論文では、面接で中身を深掘りされることがあります。自分の経験でない話は、「具体的には」と聞かれると答えに詰まります。
  4. 会場では写せない:当日に会場で書く試験では、覚えた例文をテーマに合わせて書き直す必要があります。覚えた文章が、テーマとずれたまま出てきやすくなります。
  5. 会社の決まりに触れるおそれ:他人の文章をそのまま使うことを、不正として扱う会社や自治体もあると考えられます。自分の試験の決まりを確かめてください。

例文から取り入れてよい「型」

例文を読むときは、文章ではなく、次の「型」だけを取り出します。

取り出す型 見るところ
構成 段落の数と、それぞれの役割
字数の配分 解決策に、全体の何割を使っているか
問題・原因・解決策のつながり 原因と解決策が1対1で対応しているか
解決策の書き方 誰が、何を、いつまでに、が入っているか
結びの書き方 効果と、自分の役職としての姿勢を、短く書いているか

取り出した型は、メモに書き写します。例文の言い回しは、メモに入れません。メモには、「序論:結論を一文で」「解決策:2つ、それぞれ誰が・何を・いつまでに」のような、形だけを書きます。

自分の材料への置きかえ方

型を取り出したら、中身を自分の職場の材料で埋めます。

  1. 職場の事実を集める:テーマに合う出来事を、事実・原因・自分がしたこと・残った課題の4つに分けて書く
  2. 対応表を作る:問題点、課題、解決策を1対1でつなぐ
  3. 型に流し込む:取り出した構成と字数の配分に、対応表の中身を入れる
  4. 例文を閉じて書く:書くときは、例文を見ない

比べるために、1文ずつ例を示します。

  • 例文によくある文:業務の効率化を図り、生産性の向上に努めることが求められる。
  • 自分の材料の文:私の課では、同じ顧客の情報を3つの表に入力しており、1件の登録に約15分かかっている。

前の文は例文集のどこにでもある言い方で、読んでも課題の大きさが分かりません。後の文には「3つの表」「約15分」という数があり、入力を1回にまとめるという打ち手がすぐ見えてきます。

材料のカードと対応表の作り方は昇任・昇格論文は「書く前」で決まるで順を追って説明しています。例文の言い回しが残ってしまった文を探して直すときは、論文で「一般論」と言われたときが役に立ちます。

生成AIで作った文章について

生成AIを使えば、整った文章はすぐに作れます。ただ、例文を写す場合と同じく、自分の職場の事実が入りにくく、面接で深掘りされると崩れやすくなります。会場で書く試験では、その場で自分で組み立てるしかありません。

AIの文章は、例文と同じく「形を見る資料」にとどめ、提出する文章は自分の材料から自分で組み立てるほうが、面接での受け答えまで含めて崩れにくくなります。どこまで道具に頼ってよいかの線引きは、昇格論文にAIを使ってよいかで整理しています。

添削を受けるときの注意

書いた論文を、上司や先輩、外の添削に見てもらう人も多いはずです。当サイトで読んだ体験記でも、社内の人の添削や模擬面接を使ったという記録がよく見られました(2026年10月)。添削を受けるときは、次の点に注意します。

  • 直されたのが「中身」か「言い回し」かを分ける:言い回しの直しは参考にとどめ、中身の指摘(事実が足りない、解決策が課題と対応していない)を優先して直す
  • 書き直しを丸ごと受け取らない:添削する人が書いた文章を、そのまま使うと、自分の論文ではなくなる
  • 直した理由を聞く:「なぜここを直したのか」が分かれば、次の論文にも生かせる
  • 社外の人に見せるときは、社名と人名を伏せる:社外秘の数字も伏せるか、割合に直す

よくある例文の使い方と、その直し方

例文を「少しだけ借りる」つもりでも、採点する側には借りた部分が目立つことがあります。よくある使い方を3つ挙げます。

よくある使い方 採点する側の見え方 直し方
例文の序論を言いかえて使う 前置きが整いすぎていて、本論の職場の話と調子が合わない 序論は最後に、自分の本論の結論を短くまとめて書く
例文の解決策を自分の職場に当てはめる 解決策が原因と対応しておらず、なぜその策なのかが見えない 先に自分の職場の原因を書き、その原因に合う策を自分で考える
複数の例文をつなぎ合わせる 段落ごとに言葉づかいと視点が変わり、筋が一本に見えない 例文から取るのは構成のメモだけにし、文章は一から書く

どの直し方も、例文の文章を手元から離すことが出発点です。

例文を読むときの点検表

例文を読む前と読んだ後に、次の問いで自分の使い方を確かめます。

  • 読む前に、自分の職場の材料を3つ以上書き出したか
  • 例文から取り出したのは、構成や字数の配分などの「形」だけか
  • 取り出したメモに、例文の言い回しが残っていないか
  • 例文を閉じた状態で、自分の論文を最後まで書いたか
  • 書いた論文の中に、例文と同じ言い回しの文がないか、読み返して確かめたか

材料を書き出す前に例文を読むと、例文の課題に引っ張られ、自分の職場の課題が見えにくくなります。読む順番を、材料が先、例文が後にするだけでも、写してしまう危険は小さくなります。

例文を何本も集める必要はありません。形を見るためなら、字数の違う2〜3本で十分です。集めることに時間を使うより、その時間で自分の材料を1枚でも多く書き出すほうが、本番の論文の中身が厚くなります。

架空の例:例文を写した論文を直す

物流会社の主任のAさんは、ネットで見つけた例文を手本に、論文を書いていました。上司に見てもらうと、「どこの会社の話か分からない」と言われました。

Aさんは、例文から構成(4段落、解決策は2つ)だけを取り出し、文章は捨てました。そのうえで、自分の倉庫の事実(出荷の誤りが月に約10件、半分は新人の作業)を材料に、書き直しました。上司の指摘は、「何を直すのか分かるようになった」に変わりました。

書いたものを見てもらうには

例文に頼らず自分で書いた論文は、言い回しが素朴な分、自分では物足りなく見えるものです。けれども、足りないのが言い回しなのか中身なのかは、評価する側の目で読まないと分けにくいところです。昇格パスは例文を渡すこともしません。

昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。

プランの説明を見る 無料体験を見る

関連する記事