昇格・昇任試験の論文で多い失敗の一つが、時間切れです。最後の段落が書けないまま終わる、結論が1行だけになる、見直しの時間がなく誤字が残る、といったことが起きます。

この記事では、時間切れが起きる理由と、60分・90分の試験での時間の配分の目安、配分どおりに進めるための練習を説明します。

※この記事に出てくる例は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。

時間切れが起きる理由

時間切れの原因は、書く速さより、時間の使い方にあることが多いと考えられます(推測)。よくある原因は次の3つです。

  1. 構成を決めずに書き始める:書きながら次の段落を考えるので、途中で手が止まります
  2. 前半に書きすぎる:現状の説明が長くなり、解決策の段落の時間がなくなります
  3. 書き直しが多い:手書きで段落ごと消して書き直すと、大きく時間を失います

どれも、書き始める前の数分で防げます。時間の配分は、書く時間を減らすためではなく、迷う時間を減らすために決めます。

時間配分の考え方

配分の目安は、次の3つに分けて考えます。

段階 やること 全体に対する目安
構成メモ 設問を読み、材料を選び、段落ごとの中身を決める 15〜20%
執筆 メモに沿って書く 70%前後
見直し 誤字、文体、設問とのずれを確かめる 10%前後

これは対策で広く使われている目安で、公式の基準ではありません。自分の書く速さに合わせて調整します。手書きか、パソコンで打つかでも変わるので、本番と同じ方法で練習して決めます。

60分の配分

60分で800〜1,200字ほどを書く形を想定した、配分の例です。

時間 やること
0〜10分 設問を2回読む。材料を選び、段落ごとに中身を1行ずつメモする
10〜52分 書く。目安として、15分ごとに全体の3分の1ずつ進める
52〜60分 見直す。設問の言葉が入っているか、文体がそろっているか

60分の試験では、構成メモに15分以上使うと、書く時間が足りなくなりやすいところです。そのぶん、試験の前に材料を整理しておき、当日は選ぶだけにしておくと、10分のメモに収まります。

800字前後の短い小論文では、段落の数を4つほどに絞ると、配分どおりに進めやすくなります。短い字数での段落の分け方は、昇格試験の小論文(800〜1,200字)で説明しています。

90分の配分

90分で1,200〜2,000字ほどを書く形を想定した、配分の例です。

時間 やること
0〜15分 設問を読む。材料を選び、段落ごとの中身と字数の目安をメモする
15〜78分 書く。解決策の段落に入る時刻の目安を決めておく
78〜90分 見直す

90分の試験では、解決策の段落に入る時刻を決めておくと効果があります。たとえば「45分までに解決策の段落に入る」と決め、遅れていたら現状の説明を短く切り上げます。論文の中心は解決策なので、ここに時間を残すことを優先します。

試験によって、時間も字数も違います。たとえば東京都の主任級職選考の論文は、令和8年度の実施要綱では、種別Aが2時間30分で、300字以上500字程度と1,200字以上1,500字程度の2つの設問に答える形です。種別Bは2時間で、1,000字以上1,500字程度です。設問が2段に分かれる形では、それぞれに時間を割り振ります。詳しくは東京都の主任級職選考の論文で説明しています。

自分の試験の時間と字数は、会社や自治体の最新の案内で確かめてください。

設問が2つに分かれるときの割り振り

設問が(1)と(2)のように分かれる形では、それぞれの字数の比で書く時間を割り振ると、どちらかが足りなくなるのを防げます。

たとえば、(1)が400字ほど、(2)が1,400字ほどなら、比はおよそ2対7です。書く時間が90分あるなら、(1)に20分ほど、(2)に70分ほどが目安になります。構成メモは、(1)と(2)をまとめて最初に作ります。(1)で挙げた問題と、(2)の取組が対応しているかを、書き始める前に確かめられるからです。

(1)を書き終えたら、その時刻を余白に書いておきます。予定より遅れていたら、(2)の現状の説明を短くして取り戻します。

構成メモの作り方

構成メモは、文章ではなく、段落ごとの中身を短く書くものです。

段落 メモの例(架空) 字数の目安
序論 窓口の待ち時間が課題。手順の統一で減らす 1割
現状と課題 待ち時間平均25分。手順が人により違う。確認の重複 3割
解決策1 手順を1枚にまとめる。若手と作る 2割
解決策2 混む時間に人を寄せる。週の予定表 2割
結論 半年で15分へ。係長としての決意 1割

メモには、使う数字や場面も書いておきます。書く途中で数字を思い出そうとすると、手が止まります。

字数の目安を段落ごとに書いておくと、前半に書きすぎるのを防げます。序論が予定の字数を超えそうになったら、そこで切り上げます。

構成の考え方そのものは、昇任・昇格論文は「書く前」で決まるで詳しく説明しています。

書きながらの修正を減らす

手書きの試験では、書き直しが大きな時間の損になります。修正を減らすための工夫です。

  • 1文を短くする(目安60字以内)。長い文ほど、途中で筋が崩れやすくなります
  • 段落の最初の1文に、その段落で言いたいことを書く。迷ったときに戻る場所になります
  • 言い回しに迷ったら、先に進む。直すのは見直しの時間にまとめて行います
  • 段落ごと消して書き直すのは、設問からずれているときだけにします

パソコンで打つ試験でも、書きながら何度も直すと時間がかかります。最初は粗くてもよいので最後まで書き、残った時間で直すほうが、時間切れを防ぎやすくなります。

時間切れになりそうなときの最後の10分

配分どおりに進まず、残り10分で解決策の途中にいることもあります。そのときは、次の順で手を打ちます。

  1. 書きかけの解決策を、1〜2文で言い切って閉じる
  2. 結論の段落を、3文ほどで書く(何をするか、いつまでに、どうなるか)
  3. 残った時間で、設問の言葉が序論と結論に入っているかだけを確かめる

結論のない論文は、筋の通らない論文に見えやすいところです。解決策を1つ減らしてでも、結論まで書き切ることを優先します。

当日の時計の使い方

会場では、試験の開始の時刻と、段階を切りかえる時刻を、問題用紙の余白に最初に書いておきます。たとえば90分の試験が10時に始まるなら、「10:15 書き始め」「10:45 解決策へ」「11:18 見直し」の3つです。

経過した分数ではなく時刻で書いておくと、時計を見たときに、すぐに遅れているかどうかが分かります。計算する手間が省け、焦りも小さくなります。会場で使える時計の決まりは、試験の案内で確かめておきます。

時間を計った練習

配分は、時間を計って書く練習で身につきます。

  1. 構成メモだけを作る練習:設問を1つ選び、10分でメモを作る。何本も作れるので、材料の選び方が速くなります
  2. 本番と同じ時間で書く練習:本番と同じ時間、同じ方法(手書きかパソコンか)で1本書く
  3. 時刻の記録:各段落を書き終えた時刻をメモしておき、どこで遅れたかを見る

3の記録を2〜3回取ると、自分がどの段階で時間を使いすぎるかが見えます。遅れる段落がわかれば、そこの材料を事前に厚くしておくなど、手が打てます。

手書きの試験では、自分の書く速さを一度測っておきます。原稿用紙に10分間、手元の文章を写し、何字書けたかを数えます。たとえば10分で200字なら、1,200字を書くのに60分はかかる計算です。この数字があると、構成メモと見直しに使える時間が、本番の前に分かります。

遅れる場所と手当て

遅れる場所 よくある原因 手当て
書き始めまで 材料を当日に考えている 試験の前に材料を3〜5個そろえ、当日は選ぶだけにする
現状の段落 背景の説明が長い 現状の段落の字数をメモに書き、超えたら次へ進む
解決策の段落 書きながら策を考えている メモの段階で、策ごとに「誰が・何を・いつまでに」を書いておく
見直し 書き終わりが遅い 解決策の段落に入る時刻を決め、守る

見直しの時間に何を確かめるかは、論文の見直しチェックリストにまとめました。

書いたものを見てもらうには

時間を計る練習は一人でもできます。ただ、時間内に書けるようになっても、中身が設問に合っているかは別の問題で、急いで書いた論文ほど、書いた本人にはずれが見えにくくなります。

昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。

プランの説明を見る 無料体験を見る

関連する記事