公務員の昇任試験は、民間の昇格試験と比べて、形式や結果が公開されていることが多い試験です。調べれば分かることが多いので、準備は資料を読むところから始めると無駄が減ります。

この記事では、地方公務員の一般の行政職を対象に、昇任試験の仕組みを法律と公開資料で確かめて整理します。警察や消防の階級の昇任試験、教員の管理職選考は、仕組みが違うため、ここでは主な対象にしていません。

※この記事に出てくる人物は、説明のために作った架空のものです。資料の数字は、それぞれの出典の時点のものです。

昇任試験と昇任選考

地方公務員法では、職員の昇任は、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行う、とされています(第21条の3)。

さらに、人事委員会規則で定める職(人事委員会を置かない団体では、任命権者が定める職)に昇任させる場合には、昇任のための競争試験(昇任試験)または選考を行わなければならない、と定められています(第21条の4)。

つまり、どの職に試験や選考を行うか、試験にするか選考にするかは、自治体ごとに決まっています。呼び方も、「昇任試験」「昇任選考」「主任級職選考」「管理職選考」などさまざまです。

横浜市のように、係長への昇任で、試験と選考の2つの道を用意している例もあります。横浜市は、昭和30年から係長昇任試験を行い、平成21年度から係長昇任選考を導入して、試験と選考の複線化を図っている、と公表しています。

係長級の試験の形式

係長級(自治体によっては主任級)の試験は、次の組み合わせが多く見られます。

  • 択一や記述の筆記(法令、行政の基礎知識、時事など)
  • 論文(職場の課題と、自分の取組)
  • 勤務の評定(人事評価)
  • 面接(ない自治体もある)

東京都の主任級職選考(種別AのⅠ類)を例にとると、合否は論文と勤務評定の成績を合わせて決まります。論文の時間は2時間30分です。2題のうち1題を選び、前半を300〜500字程度、後半を1,200〜1,500字程度で書きます。技術系の一部の区分には、教養記述も加わります(令和8年度の実施要綱)。

係長級で求められる役割と、論文・面接での見せ方は、公務員の係長昇任試験:論文と面接で求められる係長像で掘り下げています。

管理職の試験の形式

管理職の試験は、係長級より段階が多く、政策を考える力を問う形が増えます。

東京都の管理職選考(令和8年度の実施要綱)を例にします。

種別A 種別B
主な対象 主任級の職員 課長代理級の職員
筆記考査 択一、記述(技術系のみ)、論文 記述、論文
そのほか 勤務評定、口頭試問(個別面接2回)、適性評定 同じ

種別Aの事務系の択一は、1時間40分で40題、論文は2時間50分で、資料から問題点と課題を整理し、解決策を論じる形です。口頭試問は、択一などの成績が基準に達し、論文と勤務評定の成績を総合して一定以上の人が対象で、表現力、判断力、積極性等について評定するとされています。

要綱による合格は「一次選考の合格」で、その後の判定を経て最終の合格者が決まる仕組みです。

合格率と倍率の調べ方

自治体は、毎年「人事行政の運営等の状況」を公表しています。昇任試験や昇任選考の受験者数と合格者数が載っていることがあります。

令和7年度に公表された東京都の資料から、令和6年度の受験者と合格者を抜き出すと、次のようになります。

選考 受験者 合格者 合格率
主任級職選考 種別A 1,916人 975人 50.9%
管理職選考 種別A 683人 60人 8.8%
管理職選考 種別B 617人 113人 18.3%

横浜市の令和6年度の係長・消防司令昇任試験は、申込者1,721人、第一次の受験者1,569人、最終合格者214人で、競争率は7.3倍でした(令和6年度の公表資料)。

調べるときは、次の点に注意します。

  • 合格の段階:一次の合格か、最終の合格か
  • 区分:事務と技術、種別A・Bなど、区分ごとに数字が違う
  • 母数:申込者か、受験者か

自分の自治体の名前と「人事行政の運営等の状況」で検索すると、資料が見つかることが多いはずです。ほかの自治体の数字とは、選考の作りが違うので、そのまま比べないでください。

受験資格と年数

受験資格は、職級と在職年数、年齢で決まることが多く見られます。東京都の管理職選考の種別Aでは、主任級職選考などの合格者で、2級職の在職期間が一定の範囲にあり、年齢が53歳未満の人、などと定められています(令和8年度の実施要綱)。

何年目から受けられるか、何歳まで受けられるかは、その年の要綱で確かめておきます。受けられる回数に限りがある場合は、受ける年を計画的に選ぶ必要があります。

東京都の管理職選考のように、択一の成績が一定の基準に達した人について、翌年度以降の択一を一定期間免除する仕組みを持つ例もあります。こうした仕組みがあれば、筆記だけ先に受ける、といった計画も立てられます。

要綱を読むときの点検表

要綱は、読み流すと大事な条件を見落とします。次の項目に、自分の答えを書き込みながら読むと、準備の計画に使える形になります。

確かめること 書き込む内容
自分は受けられるか 職級、在職年数、年齢の条件と、自分の該当
何で決まるか 筆記、論文、勤務評定、面接のどれを、どの段階で見るか
論文の形 時間、字数、題の選び方、資料が付くかどうか
免除や持ち越し 一部の科目が翌年以降に免除される仕組みがあるか
結果の公表 合格者数が、一次か最終か、区分ごとか

書き込んで空欄が残った項目は、人事の担当や、前の年に受けた先輩に聞く候補になります。要綱の書き方は自治体ごとに違うので、言葉の意味が分からないところは、推測で埋めずに印を付けておきます。

準備の順番

  1. 要綱を読む:形式、時間、字数、評定の観点、受験資格、免除の仕組み
  2. 結果の資料を見る:合格率と、合格の段階を確かめる
  3. 筆記の範囲を決める:出題分野ごとに、入門の本や問題集を1冊ずつ
  4. 論文の材料を集める:職場の事実と、自治体の計画の要点
  5. 面接の材料を作る:志望、実績、職場の課題、住民対応、部下への対応

筆記と論文は、並べて進めるほうが続きやすくなります。筆記は平日の短い時間に、論文は週末にまとまった時間をとって書く、のように時間の使い方で分けるのも一つの方法です。

論文のテーマの型は昇任試験の論文テーマで、面接で聞かれやすいことは昇任試験の面接で扱っています。東京都の主任級職選考に向けた論文の準備は、東京都の主任級職選考の論文を参考にしてください。

架空の例:資料を読んでから計画する

県庁の主事のPさん(32歳)は、係長級の昇任試験を「来年あたり受けようか」と考えていました。要綱を読むと、受験できる年齢と在職年数の条件があり、受けられる年が思ったより少ないことが分かりました。

Pさんは、結果の資料で、合格者が一次の筆記でかなり絞られていることも確かめました。そこで、最初の年は筆記の準備を中心にし、論文の材料集めは並行して少しずつ進める、という計画にしました。

よくある進め方:問題集を買って、最初のページから順に解き始める。論文は「直前に何本か書けばよい」と後回しにする。

評価する側からの見え方(推測):筆記で一定の点を取っても、論文が職場の事実に乏しいと、係長として何をする人なのかが伝わりません。論文は書く量より、材料の厚みで差が出やすい部分です。

直し方:Pさんは、毎月1回、自分の係で起きたことを3行ずつメモに残すことにしました。半年たつと、論文に使える事実が十数個たまり、どのテーマが出ても1つは具体的に書ける状態になりました。

論文の練習の場について

公務員の昇任試験では、論文の練習に一番時間がかかります。けれども、自分の書いた論文が、要綱の観点から見てどこが弱いかは、書いた本人には見えにくいものです。職場の上司に毎回頼むのも、気が引けるかもしれません。

昇格パスの論文の演習では、自治体の区分を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。

プランの説明を見る 無料体験を見る

関連する記事