教頭・副校長の選考の論文では、学校の働き方改革が出題の候補になりやすいと考えられます(推測)。教職員の勤務の時間は、国の指針や法律の改正でも取り上げられている話題だからです。

一方で、このテーマは書き手の思いが強く出やすく、忙しさの訴えや制度の紹介で字数が埋まってしまうことがあります。教頭の論文として読まれるには、自分の学校で、教頭として何に手を入れるかが見えることが要ります。

この記事では、国の決まりの要点を短く押さえたうえで、自校の「時間の詰まり」を見つけ、教頭の打ち手として組み立てる準備の手順を説明します。過去の出題は扱いません。

※この記事に出てくる学校と例は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。

国の決まりの要点(背景は短く)

背景として押さえておきたいのは、次の点です。いずれも文部科学省の指針の Q&A(令和7年11月時点)で確かめました。

  • 教育職員の時間外の在校等時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とされている
  • 令和7年6月に成立した改正法の附則で、令和11年度までに、1か月の時間外在校等時間の平均を30時間程度に減らすことが目標とされている
  • 教育委員会は、業務量の管理と健康の確保のための計画を定め、計画や実施の状況を公表する形になっている

論文の中では、こうした背景は1〜2文で足ります。自分の自治体が計画や方針を出していれば、それと同じ方向の打ち手であることを一言添える程度にします。

読み手が探している3つのこと(推測)

教頭の論文を読む側は、働き方改革のテーマで、次の3つを探していると考えられます(推測)。

  1. この学校では、どこで時間が詰まっているのか:学校全体の話ではなく、場所と時期が特定されているか
  2. 教頭は、その詰まりのどこに手を入れるのか:校長の決定を待つだけでも、教員任せでもない動き
  3. 手を入れた後、何で変化を見るのか:時間の数字に加えて、子どもの側の変化をどう見るか

この3つがそろうと、論文全体が一本の筋になります。逆に、打ち手をいくつ並べても、1の場所が特定されていないと、どの学校にも当てはまる文章に見えやすくなります。

自校の「時間の詰まり」を見つける

材料集めは、時間外の記録を、1年の暦と1週間の時間割に重ねてみるところから始めます。どこに山があるかが、形で見えてきます。

重ねる軸 見えてくること
1年の暦 山になる月(行事の前、成績の処理、年度の替わり目)
1週間 山になる曜日(会議の日、部活動の大会の前後)
人 山を背負っている人(担任の学年、分掌、経験年数)

学校全体の平均だけを見ていると、詰まりは見えにくくなります。平均がそれほど高くなくても、ある学年の担任や、ある分掌の担当に、時間外が積み上がっていることがあるからです。論文の問題の中心は、多くの場合、この「積み上がっている場所」になります(推測)。

記録がなければ、聞き取りや自分の観察で、おおよその山の形を書き留めます。論文に書く数字は、学校が分からない程度に丸めます。「教員20人のうち6人」のような書き方で、山の大きさは十分に伝わります。

詰まりの種類ごとに打ち手を合わせる

時間の詰まりには、いくつかの種類があります。種類を見分けてから打ち手を選ぶと、課題と打ち手が対応した論文になります。

詰まりの種類 例 合わせる打ち手の方向
一人に集まる 行事の担当が毎年同じ人 担当の組み替え、副担当を置く
時期が重なる 成績の処理と行事の準備が同じ週 暦の組み替え、前倒しできる作業を分ける
同じことを何度も書く 似た内容の報告を別々の様式で作る 様式をそろえる、一度の入力で済ませる
目的が見えなくなった 何のためか説明できない会議 目的を確かめ、続けるかどうかを決め直す

1つの論文で全部を扱う必要はありません。自校の山に当てはまる種類を1つか2つ選び、そこに字数を使います。

種類を見分けるときは、山を背負っている人に「その時期に、いちばん時間を取られている作業は何か」を聞くのが近道です。答えが「同じ内容を別の様式に書き写す作業」なら二度手間、「会議が続く」なら時期の重なりか目的の見直し、というように、打ち手の方向が見えてきます。

学校の中だけで動かせない詰まりもあります。外の機関や保護者に関わる部分は、打ち手の中で「誰に、いつ相談するか」を一言添えておくと、計画として読みやすくなります。

教頭自身の役割を書く

働き方改革の論文では、打ち手の主語がいつの間にか「学校は」「教職員は」になりがちです。教頭の選考の論文なら、教頭としての自分が何をするかを、どの打ち手にも一言入れます。

教頭の役割として書きやすいのは、次のような点です。

  • 勤務の時間の記録を見て、時間外が集まっている人や時期に早く気づく
  • 見直しの案を、校長と相談して学校の方針にする
  • 分掌や学年の間で、仕事の分け方を調整する
  • 保護者や地域、教育委員会への説明と相談の窓口になる

教職員に関わってもらう場面も、打ち手の中に1か所は入れておきます。たとえば、担当の組み替えの案を、分掌の代表と一緒に作る、といった形です。教頭が決めて知らせるだけの打ち手より、学校の中で根付く見込みが伝わります。

教頭自身の働き方にも、一言触れておくと説得力が増します。管理職が遅くまで残っていると、教職員は帰りにくくなります。自分の仕事の進め方を見直すことも、教職員が帰りやすい空気につながる、という書き方ができます。

ただし、教頭が一人で仕事を引き受けることを打ち手にするのは避けます。教頭の負担が増えるだけで、学校の仕組みは変わらないからです。

変化の見方を、時間だけにしない

時間外の数字が減っても、それが授業や子どもへの関わりを削った結果なら、読み手は手放しでは評価しにくいはずです(推測)。時間の数字と並べて、子どもの側の変化を見る方法を1つ書いておきます。

たとえば、授業の準備に使える時間を学期ごとに聞き取る、行事の後に子どもの感想を集めて前の年と比べる、といった方法です。どれを選ぶかは、自分が選んだ打ち手に合わせます。

架空の例:材料の整理表

市立中学校の主幹教諭のBさんは、教頭の選考に向けて次の表を作りました。

項目 Bさんの学校の材料
山の大きさ 教員22人のうち、月45時間を超える人が繁忙期に7人ほど
山の時期 秋の行事の前の3週間と、学期末
山を背負う人 3年の担任と、行事を受け持つ分掌
詰まりの種類 時期が重なる(行事の準備と進路の書類が同じ週)、同じことを何度も書く(行事の計画を学年ごとに別の様式で作成)
教頭の手 行事の準備の日程を進路の書類の締め切りと重ならないよう校長と組み直す。計画の様式を一つにそろえる
変化の見方 月45時間を超える人の数、3年の担任が授業の準備に使える時間の聞き取り

元の文と比べると、違いは1文でも見えます。

  • 前:教職員の意識改革を図り、働き方改革を推進する。
  • 後:行事の準備と進路の書類が重なる3週間を組み直し、3年の担任に集まる時間外を減らす。

この後に何を書くかは、表の行から自分で組み立てます。

書き終えた後の点検

  • 時間が詰まっている場所と時期が、1つは特定されているか
  • 打ち手が、詰まりの種類と対応しているか
  • どの打ち手にも、教頭としての自分の動きが出てくるか
  • 時間の数字のほかに、変化を見る方法が1つあるか

選考の形式(論文の時間、字数、面接との組み合わせ)は自治体ごとに違います。形式の調べ方は、教頭・副校長選考の論文と面接で扱っています。民間や行政の職場向けの書き方は、昇格論文のテーマ「働き方改革・長時間労働」が参考になります。

校長の選考の論文では、学校経営の方針として書く視点がさらに強く求められると考えられます。準備の考え方は、校長試験の論文で説明しています。

一人で準備するときの限界

働き方改革のテーマは、同じ学校の人に論文を見てもらうと、書かれた行事や分掌の当事者が読むことになり、頼みにくいこともあります。自分で読み返すだけでは、打ち手と詰まりの対応がずれていても、気づきにくいものです。

昇格パスの論文の演習には、教員(教頭・校長)の区分があります。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

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