東京23区(特別区)の職員が主任(主任主事など)に上がるには、主任職昇任選考を受けます。筆記の中心になるのが論文です。

ただ、特別区の主任職昇任選考は、東京都の主任級職選考と違い、論文の時間や字数をまとめた要綱がインターネットではほとんど見つかりません。この記事では、公開されている資料で確かめられることと、確かめられないことを分け、そのうえで準備の進め方を説明します。

過去の出題は扱いません。

※この記事に出てくる人物と職場は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。

公開資料で確かめること

特別区の人事委員会のページでは、人事委員会が実施する昇任選考は「主任職昇任選考」と「管理職選考」だと説明されています。係長職、課長補佐職、部長職への昇任は、平成30年度以降、選考ではなく能力実証によるものになった、とも書かれています。

一方、区が公表している人事行政の資料を見ると、選考の実務は区ごとに行われています。たとえば板橋区の令和6年度の公表資料には、管理職選考のⅠ類は特別区人事委員会が実施し、それ以外の選考は区が実施すると書かれています。

その板橋区の資料(令和5年度実施分)では、主任職昇任選考の方法が次のように示されています。

種別 選考の方法(板橋区、令和5年度実施分)
種別A 自己申告、筆記考査、人事評価、面接
種別B 自己申告、筆記考査、人事評価、面接
種別C 自己申告、人事評価、面接

種別は、1級職での在職年数と年齢で分かれています。江戸川区の令和3年度の公表資料でも、種別A・Bは筆記、勤務評定、人事評価、種別Cは勤務評定、自己申告、人事評価と、似た形が示されています。区や年度によって書き方や中身が違うので、自分の区の最新の案内で確かめます。

論文の形式(時間・字数・出題)

論文の時間、字数、出題の形(課題式か、資料つきの事例式か)は、今回調べた範囲では、公開のページで確かめられませんでした(2026-10-07時点)。こうした細かい形式は、区から職員に配られる実施要綱や案内に書かれているはずです。

確かめる手順は次のとおりです。

  1. 区の人事の担当から出る、その年度の選考の案内や実施要綱を読む
  2. 時間、字数、出題数、選んで答える形か、資料が付くかを書き出す
  3. 手書きかパソコンか、下書きの用紙があるかも確かめる
  4. 去年と変わった点がないかを、前の年の案内と見比べる

職場の先輩から話を聞くのも一つの方法です。ただし、年度によって形式が変わることもあるので、最後はその年の案内と照らし合わせます。

評定の観点

評定の観点も、区の案内で確かめる必要があります。公開資料では確かめられませんでした。

参考までに、東京都の主任級職選考の実施要綱では、論文を「問題意識、問題解決力、論理性、表現力等」について評定すると書かれています。特別区で同じ言葉が使われているかはわかりませんが、自治体の論文で見られる点として、多くの選考に共通していると考えられます(推測)。

  • 問題意識:区の行政や職場の問題に、自分で気づいているか
  • 問題解決力:原因を考え、主任として何をするかを書けているか
  • 論理性:問題、原因、取組がつながっているか
  • 表現力:読みやすく、文体がそろっているか

職場の材料の集め方

形式がわからない段階でも、材料の準備は進められます。どんな形式で出ても、自分の職場の事実がなければ書けないからです。

主任の論文で使いやすいのは、自分の係の中で、主任として手を打てる材料です。

手がかり 職場で探すこと
区民との接点 区民から同じ指摘を何度も受けている手続きや案内はないか
係の仕事の流れ 止まりやすい工程や、確認のやり直しが多い工程はどこか
人の入れ替わり 4月や10月の異動の後に、誤りや問い合わせが増えていないか
職員どうしの連携 正規の職員と会計年度任用職員の間で、知らされていることに差がないか

材料は、数字か具体的な場面で書き留めます。「異動の後は仕事が回らない」ではなく、「4月の最初の2週間に、引き継ぎの漏れによる処理の誤りが3件続いた」のような形です。

区の基本計画や、所属する部の目標とのつながりも、1行メモしておきます。課題式の出題で区の行政課題を問われた場合でも、自分の職場の材料と結びつけて書けます。行政課題の出題の型と、それに合わせた材料の集め方は、昇任試験の論文テーマで型ごとに整理しています。

架空の例:材料を主任の論文に変える

区の福祉の係で働く主事のCさん(30歳)は、論文の練習で「職場の課題」として「業務量が多く、職員が疲弊している」と書いていました。

評価する側からの見え方(推測):忙しさは伝わっても、何が問題で、主任として何をするのかが読み取れません。問題意識より、気持ちの表明に近い文になっています。

直し方:Cさんは、忙しさの中身を書き出し直しました。家庭への訪問の日程を電話で一件ずつ調整していること。日程が変わった連絡が担当者に届かず、訪問がすれ違う日が月に数回あること。そこで、主任として、訪問の予定を係の共有の表で管理し、変更は表に書き込む決まりを係長に提案する、という取組にまとめました。

ここまでできると、問題、原因、取組がつながり、評定の観点のうち論理性も意識した骨組みになります。

時間配分

時間がわかったら、組み立てのメモ、書く時間、見直しの3つに分けて、練習のときから同じ割り振りで書きます。最初の組み立てを急ぐと、後半で論点がずれて書き直しになりやすいので、メモの時間は削らないようにします。

資料つきの事例式で出る場合は、資料を読む時間も必要です。資料の読み取りに時間をかけすぎないよう、最初に設問を読み、何を答えるために資料を読むのかを決めてから資料に入ります。

60分や90分の場合の具体的な割り振りの目安は、試験時間内に論文を書き切るにあります。

面接への備え

公表資料を見ると、板橋区の主任職昇任選考には面接も含まれています。論文と面接の両方がある場合は、論文で使った職場の材料を、面接でも話せるようにしておくと準備が一度で済みます。

面接では、主任として係の中でどんな役割を果たしたいか、若手や会計年度任用職員とどう関わるか、といった問いが考えられます(推測)。論文の材料表の「自分の役割」の行を、1分で話せるようにしておきます。

面接では、論文に書いた取組について「係長はどう考えると思いますか」「周りの職員が協力してくれなかったら」と重ねて聞かれることもあると考えられます。主任は係長を補佐し、係員と一緒に動く立場です。係長に相談する場面と、自分で進める場面を分けて話せるようにしておくと、答えの筋がぶれません。

東京都の主任級との違い

東京都の職員が受ける主任級職選考と、特別区の主任職昇任選考は、別の選考です。名前が似ているので、対策の情報を探すときに混ざりやすいところです。

項目 東京都の主任級職選考 特別区の主任職昇任選考
実施要綱の公開 人事委員会の議案として公開されている 今回の調べでは、公開のページで見つからなかった
論文の形式 要綱で確かめられる(例:令和8年度の種別Aは2時間30分、2つの設問) 区の案内で確かめる
選考の方法 要綱で確かめられる 区の公表資料で、方法の項目までは確かめられる

東京都の形式を前提に練習すると、時間や字数が合わないおそれがあります。東京都の選考の形式は東京都の主任級職選考の論文にまとめましたが、特別区の方はそのまま当てはめず、自分の区の案内を優先してください。

一人で準備するときの限界

特別区の主任の論文は、形式の情報が少ないぶん、何本書いても「これで足りているのか」が分かりにくい試験です。自分で読み返すと、職場の事情を知っているぶん、書かれていない前提まで補って読んでしまいます。

昇格パスの論文の演習では、自治体の区分(主任・係長)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

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