係長の昇任試験は、多くの自治体で、職員が最初に受ける本格的な選考です。受ける時期は、主任や主事として仕事を一通り覚え、後輩の面倒も見始めたころが多いと考えられます(推測)。
試験の中身は自治体ごとに違います。それでも、論文と面接で確かめられる「係長像」には共通する部分があります。この記事では、その係長像を手がかりに、準備の順番をまとめます。
※この記事に出てくる人物と職場は、説明のために作った架空のものです。
係長に求められる役割
係長は、係の仕事の結果に責任を持つ立場です。担当者のときとの違いは、次の3つに整理できます。
| 担当者のとき | 係長になってから |
|---|---|
| 自分の担当を正確に片付ける | 係全体の仕事が回るように、割り振りと進み具合を見る |
| 分からないことを上に聞く | 係員の相談を受けて判断し、必要なら課長に上げる |
| 自分のやり方を磨く | 係員が育つように任せ、やり方を係の決まりにする |
論文でも面接でも、評価する側はこの「係を回す人」としての見方を探します。担当者として頑張った話だけでは、係長として何をする人かが見えにくくなります。
試験の主な形式
係長の昇任試験は、筆記(択一・教養)、論文、面接を組み合わせる形が多いと考えられます(推測)。段階を分け、一次で筆記や論文、二次で面接を行う形もあります。
公開されている例を一つ挙げます。横浜市は「横浜市人事行政の運営等の状況」で、係長・消防司令昇任試験の実施状況を公表しています。令和6年度の表では、区分Aは第一次と第二次の2段階、区分Bは1段階の数字として載っています。
| 横浜市 令和6年度(事務) | 申込者 | 第一次受験者 | 最終合格者 | 競争率 |
|---|---|---|---|---|
| 区分A | 968人 | 898人 | 109人 | 8.2倍 |
| 区分B | 69人 | 61人 | 14人 | 4.4倍 |
これは横浜市の一つの年度の数字で、ほかの自治体に当てはまるものではありません。試験の科目や時間は、受ける年の実施要綱や受験案内で確かめておきます。横浜市の試験については、横浜市の係長昇任試験で公開情報をもとに整理しています。
論文で書く係の課題
係長の論文では、「職場の課題と、係長としての取り組み」を問う形がよく見られます(推測)。ここで求められるのは、市全体の大きな政策論ではありません。係の中で、係長が実際に動かせる範囲の話です。
材料は、自分の係で起きた出来事から集めます。
- 事実:何が起きたか(件数、期間、影響を受けた人)
- 原因:なぜ起きたか(人のせいにせず、手順・役割・情報の流れで考える)
- 係長としての手:誰に、何を、いつまでに
- 確かめ方:どうなれば、うまくいったと言えるか
「職員の意識を高める」「連携を強化する」のような言葉だけで終わると、どの職場にも当てはまる一般論に見えます。言葉を、誰が何をすることかに置きかえます。置きかえ方は論文で「一般論」と言われたときで詳しく説明しました。
面接で問われる係員への対応
面接では、係員との関わり方を問う質問がよく出ると考えられます。たとえば次のような問いです。
- 仕事の遅れている係員がいたら、どうしますか
- 係員から異動したいと相談されたら、どうしますか
- 年上の係員に指示を出すとき、何に気をつけますか
答えの骨組みは、どの問いでも大きくは変わりません。事実を確かめ、本人の話を聞き、判断の基準を示して動く。課長への報告・相談を挟み、最後に係の手順や役割分担を見直す。この順に話すと、係長として考えた筋道が伝わります。どの段階を省いても答えは短くなりますが、とくに最後の見直しが抜けると、その場しのぎの対応に聞こえやすくなります。
係長の面接で出やすい問いと、係長の役割に引き寄せた答え方は、係長の昇格面接・昇任面接の質問で問いごとに見ています。
「なぜ係長になりたいのか」は、聞かれるものとして準備しておきます。答えにくい人は、「なぜ管理職(主任・係長)になりたいのか」に答えにくい人の準備が参考になります。
択一・教養の準備
筆記がある自治体では、地方自治制度、地方公務員制度、行政法などの知識を問う択一が出ることがあります。範囲は自治体ごとに違うので、受験案内の出題分野を先に確かめます。
択一は、範囲が分かれば、毎日少しずつ問題を解く形で進められます。論文と面接は、材料をそろえるのに時間がかかります。どちらかに偏らないよう、週の中で時間を分けておきます。
架空の例:文書を管理する係
本庁の文書の管理を担当する係で主任をしているAさん(34歳)は、論文の材料が「書庫が狭い」しか浮かびませんでした。そこで、係で起きた事実を書き出し直しました。
- 保存の期間を過ぎた文書の箱が、書庫の棚の半分近くを占めている
- どの箱をいつ廃棄してよいかの判断が、担当者の記憶に頼っている
- 整理の作業が年度末の2週間に集中し、ほかの仕事が止まる
こう並べると、「狭い」の中身が見えてきます。原因の一つは、廃棄してよいかを判断する手がかりが、箱の側に書かれていないことです。係長としての手は、箱の一覧に保存の期限の欄を足し、毎月1回、30分の整理の時間を係で決める、という形にできます。判断に迷う文書の扱いは、基準を課長と相談して決めます。
よくある書き方:「文書管理の重要性を周知し、適正な管理に努める」
評価する側からの見え方(推測):心構えとしては正しくても、係長が何を変えるのかが見えません。
直し方:書庫の状態と作業の偏りという事実を先に置き、一覧の作り方と作業の時期という「係の仕組み」を変える話にします。
面接で「係員が年度末の作業に追われていたら」と聞かれたときも、同じ材料が使えます。作業を月ごとに分けて係の決まりにした経験は、論文と面接の両方の土台になります。
準備の順番
- 受験案内で形式を確かめる:科目、時間、字数、日程、受験資格
- 係の事実を集める:3〜5件。事実、原因、自分がしたこと、残った課題に分ける
- 論文の骨組みを作る:課題と取り組みを対応させ、時間を計って書く
- 面接の材料カードを作る:志望の理由、実績、係員への対応、失敗の経験
- 択一は毎日少しずつ:出題分野の表を作り、苦手な分野から
2の「係の事実」は、論文と面接の両方で使い回せます。集めた材料をどう骨組みにするかは、昇任・昇格論文は「書く前」で決まるの手順が使えます。
係長試験でつまずきやすい点
係長試験の準備で、つまずきやすい点を3つ挙げます。どれも、準備の段階で気づけば直せるものです。
- 課の話を書いてしまう:係長の論文で、課や局の方針を大きく論じると、係長として動ける範囲を超えて見えます。課長に提案する部分と、係長として自分で進める部分を分けて書きます。
- 係員を「指導する対象」としてだけ書く:係員は、指導する相手であると同時に、仕事を任せて力を借りる相手です。任せる話が入ると、係長としての答えらしくなります。
- 択一に時間を使いすぎる:択一は点数が見えやすく、手を付けやすい科目です。その分、論文と面接の準備が後回しになりがちです。週の中で、論文と面接の時間を先に確保します。
一人で準備するときの限界
係長の論文が「係を回す人」の文章になっているかは、書いた本人には判断しにくいものです。担当者の目で読むと、頑張った話がそのまま良い話に見えてしまうからです。同じ係の先輩に何度も読んでもらうのも、忙しい時期には頼みにくいでしょう。
昇格パスの論文の演習では、自治体の区分(主任・係長)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。
本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。
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