主幹教諭や指導教諭の選考は、教諭として経験を積んだ人が、学校の中核を担う立場に進むための選考です。管理職の手前の段階として、教頭選考とあわせて実施している自治体もあります。

この記事では、主幹教諭と指導教諭の役割を整理し、公開資料で確かめた形式の例をもとに、論文と面接の準備を説明します。過去の出題は扱いません。

※この記事に出てくる人物と学校は、説明のために作った架空のものです。

主幹教諭・指導教諭の役割

主幹教諭と指導教諭は、学校教育法で役割が定められています(第37条。中学校などにも準用)。どちらも教諭より一段上の職ですが、向いている方向が違います。

職 学校教育法の規定(小学校の例。要約)
主幹教諭 校長(副校長)と教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、児童の教育をつかさどる
指導教諭 児童の教育をつかさどり、教諭その他の職員に、教育指導の改善と充実のために必要な指導と助言を行う

主幹教諭は「学校運営」、指導教諭は「授業と指導の質」に重心がある、と整理すると分かりやすくなります。選考で問われることも、この違いに沿って変わると考えられます(推測)。どちらの職が置かれているか、選考がどう分かれているかは、自治体ごとに違います。

選考の主な形式

主幹教諭の選考の形は、教育委員会の資料で読み取れた範囲でも、自治体によってかなり違います。次の2つは、その違いの幅を知るための例です。

自治体(資料の時期) 主幹教諭の選考の形式
島根県(令和7年6月の会議資料。令和8年度に向けた試験) 一次は面接(15分)、二次は面接(20分)。論文記述は校長・教頭の一次に置かれている
熊本市(令和8年6月の報告。令和9年度の採用に向けた試験) 教頭・主幹教諭選考として、一次は筆記試験(90分)と勤務成績、二次は論文(60分)と個人面接

島根県の資料には、主幹教諭について、市町村の教育長が推薦した人は一次の面接を免除する、という推薦枠も書かれています。

このように、面接だけの例もあれば、論文や筆記を含む例もあります。形式、時間、字数、配点は、受ける年の自分の自治体の実施要項で確かめておきます。論文がないと分かれば、その分の時間を面接の材料づくりに回せます。

論文で問われること

論文がある場合は、学校の課題と、その職としての取り組みを問う形が多いと考えられます(推測)。

島根県の資料は、管理職に求められる資質能力として5つを挙げ、主幹教諭については、そのうち「高い教育理念と広い識見」「学校経営」「人材育成」「外部との連携・折衝」の4つを示しています。論文の材料も、この4つのどれかに結びつけて考えると、方向を外しにくくなります。

  • 主幹教諭として書くなら:校務の進め方、教職員の間の連携、若手の育成。校長・教頭の方針を、教職員の動きにどう置きかえるか
  • 指導教諭として書くなら:授業の改善、校内研修、若手への指導・助言の仕組み

自分の学級をよくした話は、教諭としては立派な実績です。ただ、主幹教諭や指導教諭の論文では、その工夫を学年や教科、学校全体にどう広げるかまで書いて、初めて職に合った話になります。書き始める前の材料の整理は、昇任・昇格論文は「書く前」で決まるの手順が使えます。

面接で問われること

面接では、次のような問いが考えられます(推測)。

  • なぜ主幹教諭(指導教諭)を志望するのか
  • 学校の課題は何か。その職としてどう関わるか
  • 若手の教員をどう育てるか
  • 教職員の間で意見が分かれたとき、どう調整するか
  • 校長・教頭とどう連携するか

答えは、学校の事実から組み立てます。「チーム学校を推進します」のような言葉だけで終わると、何をする人かが見えません。誰と、何を、いつ、どう進めるかまで話します。

管理職の面接の考え方は、教頭試験の面接質問も参考になります。主幹教諭の面接では、教頭ほど学校経営の全体を問われない場合でも、校長・教頭を支える立場の視点は求められると考えられます。

架空の例:小学校の行事の担当

小学校で教務の仕事を担っているJさん(40歳)は、主幹教諭の面接の練習で「学校の課題は」と聞かれ、「行事の準備で先生方が毎年苦労しています」と答えました。

この答えは、苦労している事実は伝わりますが、原因も主幹教諭としての手も見えません。Jさんは材料を並べ直しました。

  • 事実:運動会や学習発表会の担当が毎年替わり、そのたびに前の年の資料を探すところから始まる
  • 原因:手順や反省が、担当した人の手元のメモにしか残っていない
  • 主幹教諭として:行事ごとに、手順と反省を1枚にまとめる様式を作る。行事の翌週に15分の振り返りを教頭と相談して日程に入れ、その場で1枚を更新する

課題を「先生方の苦労」から「学校の仕組み」に置きかえると、主幹教諭として動ける話になります。面接で「それで先生方の負担は増えませんか」と深掘りされても、振り返りを短く区切る工夫を話せます。

主幹教諭と教頭の答えの違い

主幹教諭の選考は、教頭選考と同じ時期に行われることもあり、答えの高さを迷う人もいるはずです。同じ問いへの答えの重心を、1文ずつ比べます。

問い 主幹教諭の答えの重心 教頭の答えの重心
学校の課題は 校務の進め方で、自分が整えられる部分 学校全体の運営と、外への説明
意見が分かれたら 教職員の間に入って論点をそろえる 判断の材料を校長に示し、決まったことを伝える
若手をどう育てるか 日々の校務で一緒に動き、手本を示す 育てる仕組みと、担う人の配置を決める

主幹教諭の答えが教頭の高さまで上がりすぎると、「自分の職の範囲を分かっているか」という疑問を残すことがあります。校長・教頭の方針を受けて、教職員の動きに置きかえる立場だ、という線を意識します。

逆に、答えが教諭の高さにとどまると、「学年や教科の外にどう広げるのか」と深掘りされやすくなります。準備の段階で、自分の答えの主語が「私の学級」になっていないか、「学校として」「学年として」に置きかえられるかを確かめておくと、高さの調整がしやすくなります。

指導教諭の選考を受ける人へ

指導教諭は、ほかの教員に指導と助言を行う立場です。選考では、自分の授業の力に加えて、それをほかの教員に広げる力が問われると考えられます。

材料は、次の3つをそろえます。

  • 自分の授業の工夫:何を変え、子どもの学びがどう変わったか(事実と数字)
  • ほかの教員に広げた経験:校内研修、授業公開、若手への助言など
  • 広げるときの工夫:相手の経験や教科の違いに、どう合わせたか

「授業がうまい人」として語るだけでは、指導教諭としての答えになりにくくなります。ほかの教員がどう変わったかを1つは言えるようにしておきます。

準備の順番

  1. 実施要項で形式を確かめる:面接だけか、論文や筆記もあるか。推薦枠や免除の条件
  2. 求められる資質を確かめる:管理職の育成の指針などに書かれていないか
  3. 学校の事実を集める:校務、連携、育成について、事実と数字を3〜5件
  4. 論文があれば骨組みから:課題、原因、取り組み、効果を対応させる
  5. 面接は声に出して:1分で話し、深掘りを想定する

3の「学校の事実」は、ふだんの校務の中で少しずつ書き留めておくと、選考の直前に慌てずに済みます。会議で決まったこと、行事の後に出た反省、若手から受けた相談など、自分が関わった場面を日付と一緒に残します。

面接だけの選考でも、論文の骨組みを一度作っておくと、答えの筋が通りやすくなります。課題、原因、自分の取り組み、確かめ方の4つを1枚にまとめ、面接ではそこから必要な部分を取り出して話します。

一人で準備するときの限界

主幹教諭の論文や答えが、教諭の目線のままか、職に合った高さになっているかは、自分では測りにくいものです。同じ学校の管理職に見てもらうと、選考を受けることが校内に広まるのを気にする人もいるでしょう。

昇格パスの論文の演習には、教員(教頭・校長)の区分があります。主幹教諭の選考に向けた練習にも、学校全体を見る視点を鍛える場として使えます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

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