横浜市の係長昇任試験について、市が一般に公開している資料から分かることを整理しました。そのうえで、論文と面接の準備の進め方を説明します。

試験科目の細かな内容(論文の時間や字数など)は、受験者向けの案内で示されるもので、今回確かめた公開の資料には載っていませんでした。この記事では、確かめられたことと、確かめられなかったことを分けて書きます。過去の出題は扱いません。

※この記事に出てくる人物と職場は、説明のために作った架空のものです。

公開資料で確かめること

今回、次の3つの公開資料を確かめました(2026年10月7日)。

資料 分かること
令和6年度 横浜市人事行政の運営等の状況(令和7年11月) 係長・消防司令昇任試験の区分ごとの申込者、受験者、合格者、競争率。係長昇任の制度の成り立ち
横浜市人事委員会会議の概要 第48回定例会(令和8年3月16日) 令和8年度の係長・消防司令昇任試験の試験区分、受験資格、試験方法を決定したこと
令和8年度人事委員会事務局運営方針 係長昇任試験・選考を、どんな人材を登用するために行うか

運営方針には、「市民目線」「スピード感」「全体最適」を重視した行政運営を実践する運営責任職を登用するため、係長昇任試験・選考を実施する、と書かれています。この3つの言葉は、論文や面接で自分の考えを組み立てるときの手がかりになると考えられます(推測)。

同じ方針には、受験者数を増やし、受験率を上げるための周知に取り組むことも書かれています。

試験の形式

公開資料から分かる形式は、次のとおりです。

  • 試験と選考の二本立て:横浜市は、昭和30年から係長昇任試験を実施し、平成21年度から係長昇任選考を導入して、試験と選考による係長昇任の道を複線化している、と説明しています。
  • 区分AとB:令和6年度の実施状況の表では、試験は区分AとBに分かれています。区分Aは第一次と第二次の2段階、区分Bは第一次の後に最終合格の数字が載る形です。
  • 試験の区分:事務のほか、社会福祉、土木、建築、機械、電気、造園、環境、衛生監視、保健師、消防司令、保育士などの区分があります。

各区分の受験資格や、第一次・第二次でそれぞれ何を課すかは、その年度の受験案内で確かめてください。令和8年度の試験方法は、令和8年3月16日の人事委員会で決定されています。

倍率の見方

令和6年度の実施状況のうち、事務の区分と全体の数字は次のとおりです。

令和6年度 申込者 第一次受験者 第一次合格者 最終合格者 競争率
事務 区分A 968人 898人 264人 109人 8.2倍
事務 区分B 69人 61人 — 14人 4.4倍
全区分の総計 1,721人 1,569人 411人 214人 7.3倍

表の競争率は、第一次受験者数を最終合格者数で割った値と一致します。数字を読むときは、次の点に気をつけます。

  • 区分によって大きく違う:同じ年度でも、区分ごとの競争率には幅があります。自分の区分の数字を見ます。
  • 年度によって変わる:1つの年度の数字だけで、翌年を見積もることはできません。
  • 倍率は準備の量を決めない:倍率が高くても低くても、論文と面接の準備の中身は変わりません。

競争率は、受ける前の気持ちを左右しやすい数字です。けれども、準備でできることは、倍率が何倍でも同じです。数字を確かめたら、その先は自分の論文と受け答えを磨くことに時間を回します。

論文の準備

論文の時間や字数は、受験案内で確かめます。そのうえで、どの形式でも使える準備を進めます。

  1. 係の事実を集める:自分の職場で起きた出来事を、事実、原因、自分がしたこと、残った課題に分ける
  2. 運営方針の言葉と結びつける:「市民目線」「スピード感」「全体最適」のどれに関わる課題かを考える
  3. 係長として動ける範囲で打ち手を考える:誰に、何を、いつまでに
  4. 時間を計って書く:書く速さを、本番の形式で確かめる

方針の言葉をそのまま並べるだけでは、どの職場にも当てはまる文章になります。言葉を、自分の職場の事実に置きかえます。置きかえ方は、論文で「一般論」と言われたときで説明しました。

方針の言葉の使い方を直す例

よくある書き方:「市民目線とスピード感を持ち、全体最適の視点で業務を改善していく」

評価する側からの見え方(推測):方針の言葉を知っていることは伝わります。ただ、言葉が3つ並んでいるだけで、どの事実を、どう変えるのかが見えません。方針をなぞった文は、ほかの受験者の答案とも似てきます。

直し方:言葉は1つに絞り、自分の係の事実と結びつけます。たとえば「スピード感」なら、何の手続きに、今は何日かかっていて、どこで止まっているのかを先に書きます。そのうえで、係長としてどこを縮めるかを書くと、言葉が中身を持ちます。

3つの言葉を全部入れようとすると、どの段落も方針の言葉の繰り返しになりがちです。論文の中で使うのは1つか2つにとどめ、残りは確かめの物差しとして手元に置いておきます。

3つの言葉は、論文の結論を確かめる物差しとして使うこともできます。書き終えたら、自分の打ち手が、市民の側から見て何が良くなるのか、早くなるのか、ほかの部署にとっても良いのかを、1つずつ確かめます。

面接の準備

面接があるかどうか、何段階目に行うかも、受験案内で確かめます。面接がある場合、係長の面接で問われやすいことは共通しています。

  • なぜ係長を目指すのか
  • これまでの仕事で、自分が係の中で果たした役割
  • 係員への対応(仕事の遅れ、相談、年上の係員への指示)
  • 市民対応や、関係する課との調整の経験

答えは、事実と数字を入れた材料カードから組み立てます。係長に求められる役割と答えの骨組みは、公務員の係長昇任試験にまとめました。

試験と選考のどちらを考えるか

横浜市には、係長への道として、試験のほかに係長昇任選考もあります。どちらの道があり、自分がどちらの対象になるかは、その年度の案内と、所属の人事の担当で確かめます。

選考の対象や方法は、この記事では確かめられていません。試験を受けるかどうかを決める前に、選考の道も含めて、制度の全体を一度確かめておくと、自分に合った準備を選びやすくなります。

架空の例:区役所の主任

区役所の総務の係で主任をしているPさん(35歳)は、論文の材料として「防災の備蓄品の管理」を考えていました。最初のメモは「備蓄品の管理が大変」の一行だけでした。

事実を書き出すと、中身が見えてきました。備蓄品の使用期限を管理する表の形が区ごとに違い、本庁が全区の数字を集めるたびに、問い合わせと修正のやり取りが何往復も続いていました。入れ替えの手配が遅れると、いざというときに期限の切れた物が残るおそれもあります。

運営方針の言葉と結びつけると、期限切れの心配は「市民目線」、やり取りの往復は「スピード感」、区と本庁で表がそろっていないことは「全体最適」に関わる課題として書けます。係長としての打ち手は、まず自分の区の表を見直し、本庁の担当と相談して、区と本庁で同じ形の表を使う案をまとめる、という形にできます。

準備の順番

  1. 受験案内で、区分、受験資格、試験方法、日程を確かめる
  2. 試験と選考のどちらの道が自分に合うかを確かめる
  3. 係の事実を3〜5件集める
  4. 論文の骨組みを作り、時間を計って書く
  5. 面接の材料カードを作り、声に出して練習する

一人で準備するときの限界

論文の時間や字数が公開資料で分からない以上、受験案内が届いてから本番の形で書く練習を重ねることになります。書いた論文が、方針の言葉をなぞっただけになっていないかは、自分では見分けにくいところです。区役所の中で、受験を知られずに読んでもらえる相手を探すのも簡単ではありません。

昇格パスの論文の演習では、自治体の区分(主任・係長)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

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