昇格試験の面接では、「なぜ昇格したいのですか」と聞かれることがあります。自分から望んで受けた人なら、答えやすい質問かもしれません。けれども、順番が来た、上司に勧められた、という人には答えにくい質問です。
当サイトでは、知恵袋の質問76件を読みました(2026年10月)。受けるきっかけは、「制度上の順番が来た」が18件、「上司や会社からの指示・推薦」が15件でした。件数は検索語の選び方に左右されるので、よくある状況の一つとして見てください。
この記事では、気持ちを無理に作るのではなく、すでにしていることから理由を組み立てる準備の仕方を説明します。
※この記事に出てくる人物と答えの例は、説明のために作った架空のものです。
答えにくいのは、正直だから
「なりたいわけではない」と感じている人が、熱意のある言葉を並べると、話がふわっとします。深掘りの質問が来たときに、続ける材料がないからです。
知恵袋の質問には、こんな悩みもありました。実質的にはチームをまとめているのに、「なぜ主任になりたいのか」への答えが出てこない、というものです。また、「昇格したら会社は何がうれしいのか」に詰まる、という投稿もありました。
どちらも、気持ちの言葉を探して止まっている状態だと考えられます(推測)。
答えにくさは、うそをつきたくない、という正直さの表れでもあります。だとすれば、うそをつかずに答えられる材料を探せばよいことになります。
評価する側が確かめていること
この質問で評価する側が見ているのは、熱意の大きさより、次の3つだと考えられます(推測)。
- 上の役職の役割をわかっているか:自分が頑張る話ではなく、チームや部署の成果をどう上げるかで話せるか
- 自分の職場を見ているか:一般論ではなく、今の職場の事実から理由が出てくるか
- 引き受ける覚悟があるか:大変さも知ったうえで、それでもやる理由があるか
3つ目は「なりたい」という言葉でなくても示せます。「引き受ける理由」があれば足ります。
つまり、この質問は、気持ちの強さを比べる質問ではないと考えられます(推測)。上の役職で何をする人なのかを、自分の職場の事実で説明できるかどうかを確かめている、と捉えると準備がしやすくなります。
理由を組み立てる4つの問い
次の4つの問いに、自分の仕事の事実で答えてみてください。1つに1〜2行で十分です。
- すでに引き受けている役割は何か:後輩の相談に乗っている、担当の割り振りを任されている、など
- 今の立場では、手が届かないことは何か:仕組みを変える、人を配置する、他部署と決める、など
- 職場で、気になっているのに誰も手を付けていないことは何か:事実と、できれば数字で
- その役職に就いたら、最初の半年で何をするか:2と3をつないだ、具体的な1つ
1から4を順に並べると、「すでにしていること → 今の限界 → 職場の課題 → 上の役職でやること」という流れになります。この流れは、気持ちの強さに頼りません。深掘りされても、事実に戻って話せます。
面接全体の質問の系統と準備の手順は、昇格面接でよく聞かれることにまとめました。この記事では、その中の「なぜ昇格したいのか」に絞っています。
架空の例:市役所の主事が係長の試験を受ける
市役所の税務課で主事をしているNさん(36歳)は、受験資格の年数に届きました。課長に勧められ、係長の試験を受けることにしました。最初に考えた答えは、次のようなものでした。
係長として、市民のためにより大きな仕事がしたいと考えました。
評価する側から見ると、どの職員でも言える答えです。「より大きな仕事とは、具体的には」と深掘りされると、話が続きにくくなります。Nさんは4つの問いに答えを書き出しました。
| 問い | Nさんの答え(架空) |
|---|---|
| 1 すでに引き受けている役割 | 新しく来た職員3人に、申告書の確認の手順を教えている |
| 2 今の立場で手が届かないこと | 確認の手順が人によって違い、係の決まりにする権限がない |
| 3 誰も手を付けていないこと | 繁忙期に、確認のやり直しが毎週10件ほど出ている |
| 4 最初の半年でやること | 確認の手順を係で1つにそろえ、新しい職員が迷わない形にする |
並べ直した答えは、次のとおりです。
新しく来た職員に、確認の手順を教える役を任されてきました。ただ、手順が人によって違い、やり直しが毎週10件ほど出ています。係長として、この手順を係で1つにそろえたいと考えています。
熱意の言葉はありません。それでも、係長として何をする人なのかが見えます。きっかけが「勧められたから」であることも、隠さずに済んでいます。
「数字で言うと」「あなたの役割は」と深掘りされても、表に戻って答えられます。
避けたほうがよい答え
うそはつかなくてよい一方で、そのまま言うと誤解されやすい答えもあります。
- 「順番が来たので」「勧められたので」だけ:事実ですが、そこで止めると、引き受ける理由が伝わりません。きっかけとして一言触れ、すぐに4つの問いの答えに移ります。
- 「給料を上げたい」「同期に遅れたくない」:本音として持っていてかまいません。ただ、面接で確かめられているのは職場への関わり方なので、答えの中心には置きません。
- 今の上司や職場への不満:「今のやり方がおかしいので変えたい」は、批判に聞こえます。「今のやり方の良い所を残し、ここを変えたい」と、両方を言います。
答えの長さと順番
並べ直した答えは、声に出して1分以内に収めます。長く話すほど、面接官が深掘りする時間が減り、伝えたい材料を出す機会も減ります。
話す順番は、4つの問いの順でなくてもかまいません。最初の一文で「係長として何をしたいか」(問い4)を言い、その理由として問い1から3を続ける形もあります。結論を先に言うと、聞く側は話の行き先が分かり、深掘りの質問も絞りやすくなります。
どちらの順番でも、事実と数字が1つは入っているかを確かめます。数字は、件数や期間のおおよその値で十分です。社名や人の名前は伏せます。
深掘りへの備え
この質問には、次のような深掘りが続くことがあります。4つの問いの答えから、それぞれ一言を用意しておきます。
- 「本当は、なりたくないのではありませんか」:受け止めたうえで、問い1と4の答えに戻る
- 「あなたが昇格すると、職場にとって何がよいのですか」:問い3と4の答え
- 「大変な役職ですが、続けられますか」:問い1で、すでに引き受けてきた事実
当サイトで読んだ体験記にも、志望動機が一般論になっていたと振り返る人がいました。その人は、自分の言葉で語るようにしてから合格しています。言い回しを覚えるより、材料をそろえるほうが、本番で崩れにくくなります。
一人で練習するときの限界
自分の答えが「一般論」に聞こえるかどうかは、自分では判断しにくいものです。深掘りの質問も、相手がいないと練習しにくい部分です。
昇格パスの無料体験では、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で練習できます。答えると深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。
匿名で使え、会社に知らせることはありません。4つの問いの答えを書いたら、抱負の質問で一度試してみてください。
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