1on1は、上司と部下が1対1で、定期的に話す時間です。会社で1on1を始めることになったものの、何を話せばよいかわからない、毎回雑談で終わってしまう、という新任の管理職も多いはずです。

この記事では、1on1の1回の流れと、使いやすい質問例を説明します。1on1の聞き方は、昇格試験の面談演習で見られる聞き方とも重なります。

※この記事に出てくる職場と会話は、説明のために作った架空のものです。1on1の決まり(頻度、時間、記録の扱い)は会社によって違います。

1on1と評価面談の違い

1on1は、評価面談と混同されやすいものです。違いを押さえておくと、話す中身がはっきりします。

観点 1on1 評価面談
主役 部下(部下が話したいことを話す) 上司(評価を伝え、目標を合わせる)
頻度 週に1回、2週に1回など、定期的に 半年や1年に1〜2回
中身 困りごと、考えていること、これからのこと 評価の結果、理由、次の目標
上司の役目 聞く、問いかける、手助けする 説明する、合意する

1on1で評価の話ばかりすると、部下は本音を話しにくくなります。評価の話は評価面談で行い、1on1は部下の話を聞く時間として分けておきます。

評価を伝えた後に部下が納得しないときの進め方は、評価に納得していない部下との面談で扱っています。

1回の流れ

1回30分の1on1を想定した流れの例です。

時間 やること
最初の3分 近況を聞く。話しやすい空気を作る
次の15分 部下が話したいことを聞く。問いかけで考えを深める
次の7分 上司から伝えたいことがあれば短く伝える。手助けできることを確かめる
最後の5分 次までにすることを決める。次の日程を確かめる

話題は、できるだけ部下に選んでもらいます。「今日は何について話したいですか」と最初に聞くか、前もって話したいことを一言送ってもらう形にすると、上司が話題を決める時間が減ります。

最後に決める「次までにすること」は、部下の行動だけでなく、上司がすることも入れます。上司が約束を守ると、1on1が形だけでないことが伝わります。

使いやすい質問例

質問は、目的によって使い分けます。

目的 質問の例
話を始める 「最近、仕事で手ごたえがあったことはありますか」
困りごとを聞く 「今、一番時間を取られていることは何ですか」
具体にする 「たとえば、どんな場面でそう感じましたか」
広げる 「ほかには、どんなことがありますか」
本人の考えを聞く 「あなた自身は、どうしたいと考えていますか」
先のことを聞く 「半年後、どんな仕事ができるようになっていたいですか」
手助けを確かめる 「私にできることはありますか」

1on1では、うまくいかなかった話ほど、理由を問う言葉を避けます。「どうしてできなかったの」と聞かれると、部下は次から困りごとを持ってこなくなります。「どこで手が止まりましたか」と、場面を聞く形にします。

場面ごとの最初の一言と聞き方は、部下面談の質問例にもまとめました。

話が続かないとき

1on1を始めたばかりのころは、部下から話が出てこないこともあります。「特にありません」と言われたときの対処です。

  • 沈黙を待つ:数秒の沈黙で、部下が考えていることもあります。すぐに次の質問を重ねません
  • 答えやすい問いに変える:「困っていることは」ではなく、「今週、一番時間がかかった作業は何でしたか」のように、事実を聞く問いにします
  • 話題を選べる形にする:「仕事の進め方、チームのこと、これからのこと、今日はどれから話しますか」と、選べる問いにします。何もないところから話題を探すより、答えやすくなります
  • 上司が先に話す:上司自身の最近の困りごとを少し話すと、話しやすくなることがあります
  • 短く終える:話すことがない日は、15分で終えてもかまいません。無理に時間を埋めません

続けているうちに、部下が「この時間は話を聞いてもらえる」と感じると、話は出てきやすくなると考えられます(推測)。

最初の3回の進め方

1on1を始めたばかりのころは、毎回同じ形で進めるより、回ごとに目的を少しずつ変えると続けやすくなります。

  1. 1回目:1on1の目的を伝える。「評価の場ではなく、あなたの話を聞く時間です」。今の仕事で時間を使っていることを、広く聞く
  2. 2回目:前回出た話の続きを聞く。上司が約束したことの報告をする
  3. 3回目:半年後、1年後の話を少し聞く。今の仕事とのつながりを、本人の言葉で話してもらう

2回目の「上司が約束したことの報告」は、1on1が形だけでないことを伝える一番の材料です。小さな約束でも、守った報告を最初に持ってきます。

記録の付け方

1on1の記録は、次の3つだけを短く書きます。

  • 部下が話したこと(本人の言葉に近い形で)
  • 上司と部下が、それぞれ次までにすること
  • 次に話す日

記録は、上司の手元に置くものと、部下と共有するものを分けておくと安心です。部下が個人的な事情を話したときは、共有の記録には書きません。どこまで書いてよいかを、本人に確かめます。

前回の記録を読み返してから1on1に入ると、「前に話していた件、その後どうですか」と聞けます。前の話を覚えてくれている、という感覚が、話しやすさにつながります。

1on1でやってはいけないこと

1on1で避けたいことをまとめます。

  • 上司が話しすぎる:助言や自分の経験談が長くなると、部下の話す時間がなくなります。助言は、部下の話を聞いた後、最後に短く伝えます
  • 仕事の進み具合の確認だけで終わる:進み具合の確認は、ふだんの打ち合わせで行います
  • 聞いた話を、本人の許可なく広める:部下が話してくれたことは、必要な範囲で扱います
  • できない約束をする:異動や昇給など、上司一人で決められないことは約束しません
  • 予定をよく取り消す:上司の都合で何度も取り消すと、部下は大事にされていないと感じます

体調や心の不調がうかがえる話が出たときは、上司が判断せず、会社の産業医や相談窓口につなぎます。

面談演習とのつながり

昇格試験やアセスメントの面談演習は、問題を抱えた部下と10〜20分ほど話す形が多いと考えられます。1on1と違って一度きりで、時間も短い場です。それでも、聞き方の土台は同じだと考えられます(推測)。

1on1で身につく聞き方は、面談演習でもそのまま使えます。

1on1で身につくこと 面談演習で見られること
最初は聞くことに徹する さえぎらず、否定せずに聞いているか
問いかけで考えを深める 部下が自分で考えるよう問いかけているか
助言は最後に短く 最初から説得や指示をしていないか
次までにすることを決める 次の一歩を合意して終えているか

面談演習の評価の観点は、面談演習の評価の観点を一覧にするで、点検表の形にまとめています。

架空の例:最初の1on1

場面:システム開発の会社で、新しくチームリーダーになったDさんは、メンバーの一人と最初の1on1をします。

最初の練習では、Dさんは次のように始めました。

今のプロジェクトの進み具合はどう? 遅れているところがあれば教えて。

メンバーは進み具合を報告し、それで時間が終わりました。評価する側から見ると、進み具合の確認だけで、メンバーの考えや困りごとを聞けていません。

Dさんは、次の形に直しました。

この時間は、あなたが話したいことを聞く時間にしたいと思っています。今日は、仕事のことでも、それ以外のことでも、話したいことはありますか。特になければ、最近一番時間を取られていることから聞かせてください。

目的を伝え、話題を選んでもらい、答えやすい問いも用意しています。

メンバーは少し考えてから、「レビューの待ちで手が止まる時間が長い」と話しました。Dさんは、すぐに解決策を出さず、「どのくらい待つことが多いですか」と事実を聞きました。最後に、Dさんがレビューの順番の決め方を確かめることと、2週間後の次の1on1の日を決めて終えました。

一人で確かめるときの限界

1on1は、職場の部下と回数を重ねるうちに上達します。ただ、自分の聞き方が相手にどう受け取られているかを、部下に直接たずねるのは難しいものです。問いの選び方を、評価の観点に照らして見直せる場があると、職場の1on1にも持ち帰れます。

昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。この記事の1on1とは場面が違いますが、相手に話してもらい、問いで考えを深める聞き方は共通です。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。

個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。次の1on1の前に、問いの順番を試してみてください。

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