面談演習は、本や記事を読んでも、実際にどんな設定が渡されるのかが想像しにくい形式です。この記事では、形式をつかむための例題を3つ載せ、それぞれで評価される進め方を説明します。
この記事の例題について(自作・架空)
ここに載せる例題は、すべて昇格パス編集部が説明のために作った架空のものです。特定の会社や試験の問題を再現したものではありません。
実際の面談演習では、上司としての立場、部下の簡単なプロフィール、面談に至った経緯が、資料として渡されることが多いと考えられます(推測)。部下役は、資料に書かれていない事情を持っていることがあり、聞き方によって話す内容が変わります。
この記事に出てくる人物や会社も、すべて架空です。
例題ごとに、「資料に書かれていること」と、「進め方のポイント」を分けて書きます。部下役が隠している事情の答えは、あえて書いていません。自分で聞き出す練習に使ってください。
例題1:目標が高すぎると訴える部下
資料に書かれていること
- あなたは、地方銀行の支店の融資課の課長(今月着任)
- 部下:入行6年目の行員。前任の課長のときは、成績は課の中ほど
- 経緯:今期の目標を伝えたところ、「この数字は無理です。前期より2割も高い」とメールで返してきた。面談は15分
進め方のポイント
- 最初に、目標の数字の話をする前に、「どこが無理だと感じているか」を聞く
- 「無理」の中身を分ける:数字そのものか、時間か、担当する顧客の状況か、ほかの業務の量か
- 目標の根拠は、聞き切った後で説明する。説明を先にすると、反論の応酬になりやすい
- 目標を下げる約束はしない。自分の権限でできること(担当の顧客の振り分け、ほかの業務の調整)と、上に相談することを分ける
- 最後に、次の一歩(たとえば、月ごとの進み具合を一緒に確かめる日)を決める
例題2:在宅勤務の日を増やしたいと申し出た部下
資料に書かれていること
- あなたは、商社の経理課の係長
- 部下:入社7年目。月末の締めの作業の中心で、正確さに定評がある
- 経緯:「来月から、在宅勤務を週1日から週3日に増やしたい」と申し出があった。会社の制度では、在宅勤務の日数は所属長が業務を見て決める。月末の数日は、紙の書類の確認で出社が要る。面談は15分
進め方のポイント
- 申し出をすぐに認めたり断ったりせず、まず、増やしたいと考えた理由を聞く
- 本人の希望と、仕事の側の条件を分けて整理する:在宅でできる作業、出社が要る作業、ほかの人との受け渡し
- 制度で決まっていることと、係長として判断できることを分けて伝える。分からない点は、人事に確かめると約束する
- 「全部だめ」「全部よい」の二択にしない。期間を区切って試す、月末だけ出社する、などの案を本人と一緒に考える
- 試す場合は、見直す日と、何を見て判断するかを決める
例題3:昇格を辞退したい部下
資料に書かれていること
- あなたは、食品メーカーの工場の製造課の課長
- 部下:入社12年目の班長。技能が高く、後輩からの信頼も厚い
- 経緯:係長への昇格を打診したところ、「自分には向いていないので、辞退したい」と言われた。面談は15分
進め方のポイント
- 辞退を思いとどまらせることを目的にしない。打診を受けてどう感じたかを、まず本人の言葉で聞く
- 「向いていない」の中身は、上司が選択肢を並べて当てにいかず、本人に描いてもらう:「係長になった自分の一日を、どう想像していますか」
- 本人の強み(技能、後輩からの信頼)を、事実で伝える。ただし、説得の材料として押しつけない
- 本人が想像している係長の仕事と、実際の仕事に違いがあれば、事実を伝える
- 結論を急がせず、判断に要る情報を誰がそろえるかを決める
3つに共通する進め方
3つの例題は、場面は違っても、評価される進め方は共通しています。
| 段階 | 見られること |
|---|---|
| 始め | 面談の目的を伝え、話しやすい空気を作ったか |
| 聞く | さえぎらず、事実と気持ちを分けて聞いたか。本当の悩みに近づいたか |
| 返す | 相手の言葉を受け止めて返したか。共感と同意を分けたか |
| 伝える | 上司としての考えを、聞き切った後に伝えたか |
| 約束 | できない約束をせず、自分がすることと上に相談することを分けたか |
| 締め | 次の一歩(誰が、何を、いつまでに)と次の面談の日を決めたか |
3つの例題は、どれも15分で結論まで行き着く話ではありません。目標の数字、在宅の日数、昇格の返事は、その場で決まらなくてもかまいません。例題で練習したいのは、結論より、聞く順番と約束の仕方です。
この表の観点は、部下面談の練習で詳しく説明しました。観点ごとに0〜2点で自分の面談を採点する方法は、面談演習の評価の観点を一覧にするで紹介しています。苦情を受けた部下、成績不振、年上の部下の3場面は、部下面談の場面別の進め方で扱っています。
例題ごとに、つまずきやすい点
- 例題1:目標の根拠を早く説明したくなります。説明が先に立つと、部下は数字の粗探しを始めます。「無理」の中身を2つ以上聞き出すまで、説明を待ちます。
- 例題2:制度を知っているほど、「規則では」から話し始めがちです。規則は後半で伝えれば足ります。前半は、本人の仕事の一週間の流れを聞くことに使います。
- 例題3:本人の強みをほめ続けると、説得に聞こえます。強みを伝えるのは一度だけにして、残りは本人の考えを聞く時間にします。
一人で練習する方法
- 資料を読んで、面談の計画を書く:最初の一言、聞きたいこと3つ、自分ができること・できないこと
- 部下役の答えを想像して書く:「大丈夫です」「無理です」など、手ごわい答えも入れる
- 声に出して、最初の5分を話す:最初の5分は、質問と言い直しだけにする
- 録音して聞き直す:自分が話している時間が長すぎないか、説得を急いでいないか
- 表の観点で振り返る:どの段階が弱かったかを1つ選び、次の練習で直す
一人で練習するときの一番の限界は、部下役の答えを自分で決めてしまうことです。自分が想像した答えには、自分が用意した質問がうまく当てはまります。本番の部下役は、思ったとおりには答えてくれません。
本番の資料で最初に確かめること
本番で資料を受け取ったら、面談を始める前に、次の4つを確かめます。
- 自分の立場:役職、着任してからの期間、上司は誰か
- 部下のプロフィール:経験年数、これまでの評価、最近の変化
- 面談に至った経緯:誰が面談を求めたのか。部下からか、上司からか
- 時間と、面談の後の指示:面談の後に、記録や報告を書く様式があるか
経緯によって、最初の一言が変わります。部下から相談してきた場合は、「話してくれてありがとう」から。上司から声をかけた場合は、面談の目的を責めない形で伝えるところから始めます。
架空の例:例題2を練習した人
ある受験者は、例題2の練習で、最初の一言を「規則では、在宅は所属長が決めることになっています」にしていました。部下役の答えを「わかりました」と想像し、月末は出社してほしい、という話に進めていました。
録音を聞き直すと、本人の理由を一度も聞いていないことに気づきました。評価する側から見ると、制度の説明が先に立ち、部下の事情に近づこうとしていない面談です。
次の練習では、「申し出てくれてありがとう。週3日を希望する理由を、まず聞かせてもらえますか」と聞くところから始めました。制度の話は、本人の理由と仕事の条件を並べた後に回しました。
一人で確かめるときの限界
録音と点検表で、自分の聞き方の癖は見つけられます。ただ、聞き方を変えたときに相手の話がどう変わるかは、自分の外に部下役がいないと確かめられません。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。この記事の例題とは違う場面ですが、資料を読んでから最初の一言を決め、聞く順番を組み立てる流れは共通です。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。例題で組み立てた手順を、答えの読めない相手で試してみてください。
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