評価を伝える面談で、部下から「納得できません」と言われる場面は、管理職なら一度は経験するものです。昇格試験の面談演習でも、題材になりうる場面です。
この場面で難しいのは、評価を変えずに、部下に次の期へ向かってもらうことです。説明だけでは反発を招き、聞くだけでは評価の意味が伝わりません。
この記事では、説明と傾聴の順番を中心に、評価に納得していない部下との面談の進め方を説明します。最後に、面談演習でこの場面が出たときの注意もまとめます。
※この記事に出てくる人物と会話は、説明のために作った架空のものです。
評価面談で起きやすいすれ違い
評価に納得しない理由は、おおむね次のどれかです。
- 実感と合わない:自分の手応えと、評価の説明が食い違っている
- 基準が分からない:何ができれば上の評価になるのかが見えない
- 比べている:同僚の評価と比べて、自分のほうが低いと感じる
- 期待と違う:昇格や昇給を見込んでいた
上司の側は「基準どおりに評価した」と考え、部下の側は「自分のことを分かってもらえていない」と考えます。同じ評価について、違う話をしているのがすれ違いの正体です。
最初に聞くか、最初に説明するか
結論から言うと、最初に部下の受け止めを聞き、そのあとで評価の根拠を説明する順番が、話が進みやすいと考えられます(推測)。
| 順番 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 先に説明する | 部下は反論の準備をしながら聞く。説明が言い訳に聞こえやすい |
| 先に聞く | 部下が何に引っかかっているかが分かり、説明をそこに合わせられる |
ただし、聞くだけで終わってはいけません。評価の結果と根拠は、面談の中で省かずに伝えます。順番は「聞く → 説明する → もう一度聞く → 次の期の話をする」です。
最初の一言の例です。
今期の評価を伝える前に、自分ではこの半年をどう振り返っているか、聞かせてもらえますか。
すでに評価の結果を伝えた後に「納得できない」と言われた場合は、次のように返します。
納得できないと感じているんですね。どのあたりが一番引っかかっているか、まず聞かせてください。
評価の根拠の示し方
部下の受け止めを聞いたら、評価の根拠を説明します。説明では、次の3つを意識します。
- 基準を示す:評価の項目と、その評価になる目安
- 事実で示す:いつ、どの仕事で、何があったか(印象ではなく事実)
- よかった点も示す:低い評価の項目だけでなく、評価している点も伝える
「全体的に物足りない」「もう少し頑張ってほしかった」のような説明は、根拠になりません。部下は何を直せばよいか分からず、不満が残ります。
日頃から、部下の仕事の事実をメモしておくと、根拠を示しやすくなります。面談の場で思い出そうとすると、印象の話になりがちです。
面談の前に準備すること
評価の面談は、準備の量で落ち着きが変わります。前日までに、次のものを手元にそろえます。
- 評価の項目と目安:会社の評価の基準の資料。言葉の定義を自分でも読み直す
- 項目ごとの事実:高く付けた項目と低く付けた項目、それぞれ事実を2つずつ
- 本人の自己評価:自己評価の書類があれば、上司の評価と差が大きい項目に印を付ける
- 自分の権限の範囲:評価を見直す手続きがあるか、誰が最終的に決めるか
- 次の期に期待すること:一つに絞って、一文で言えるようにする
3の「差が大きい項目」が、面談で話がこじれやすいところです。そこだけは、説明の順番を前もって考えておきます。4を確かめておくと、その場でできない約束をせずにすみます。
部下の言い分の受け止め方
部下の言い分には、もっともな点が含まれていることがあります。受け止め方の要点は次のとおりです。
- さえぎらずに最後まで聞く:途中で反論すると、部下は話すのをやめてしまいます。
- 気持ちと事実を分ける:「悔しい」という気持ちは受け止め、「〜をしたのに評価されていない」という事実は確かめます。
- もっともな点は認める:言い分の中に筋の通る部分があれば、「そこは、あなたの言うとおりです」と、はっきり言います。
- その場で評価を変えると約束しない:評価の仕組みや手続きがある場合、上司一人の判断で変えられないことが多いものです。見落としがあると分かったら、「確かめて、〇日までに返事をする」と伝えます。
共感することと、要求に同意することは別です。悔しさには寄り添っても、評価の基準そのものは動かしません。
同僚の評価が話題に出たときは、比べる話に乗らないようにします。個人の評価を本人以外に話さないのは、評価の仕組みの基本です。話を本人の仕事の事実に戻します。
次の期の目標につなぐ
面談の後半は、次の期に向けた話にします。評価に納得しきれなくても、次に何をすればよいかが見えれば、部下は前を向きやすくなります。
- 上の評価になるための行動を、一緒に決める:「次の期で〜ができれば、この項目は上がる」
- 上司がすることも約束する:途中で様子を聞く面談の日を決める、必要な仕事の機会を用意する
- 次に話す日を決める:たとえば1か月後に、進み具合を一緒に確かめる
部下面談で使える質問の例は、部下面談の質問例にまとめました。
架空の例:説明から入った面談を直す
場面:電子部品の商社の課長Vさんが、入社6年目のWさんに、今期の評価がB(中程度)だったことを伝えます。Wさんは、大口の取引先の担当を引き継いで売上を伸ばしたので、Aを期待していました。
Vさんの最初の進め方は、次のようなものでした。
今期はBです。売上は伸びましたが、報告の遅れが何度かあったので、総合でBにしました。
Wさんは「売上はチームで一番です。報告が少し遅れたくらいで」と反論し、話は平行線になりました。
直すと、流れは次のようになります。
- 先に聞く:「今期の自分の仕事を、どう振り返っていますか」。Wさんは、引き継いだ取引先の売上を伸ばしたことを話します。
- 認める:「その取引先の売上は、前の期から大きく伸びました。そこは高く評価しています」
- 根拠を示す:「一方で、評価の項目には報告と共有があります。今期は、取引先の要望の報告が3回、期限を過ぎました。その分、課として対応が遅れた場面がありました」
- もう一度聞く:「この点は、Wさんから見るとどうですか」
- 次の期につなぐ:「次の期は、要望を受けたら当日中に共有する形にしましょう。来月、一度様子を聞かせてください」
評価は変えていませんが、Wさんが評価されている点と、次に何をすればよいかが見える面談になっています。
面談演習で出たときの注意
昇格試験の面談演習で、この場面が出ることがあります。演習では、次の点に注意します。
- 面談の目的を最初に伝える:何のための面談かを、一言で伝えてから始めます。
- 部下役は、最初から本音を話すとは限らない:評価への不満の裏に、別の事情(仕事の量、家庭の事情、異動の希望など)が隠れていることがあります。聞き方で引き出します。
- 言い負かそうとしない:評価の正しさを証明する場ではありません。当サイトで読んだ体験記にも、対人の演習で論理に走りすぎた、押し付けた、という振り返りがありました。
- 評価を守る話と、次の期の話を分ける:評価の説明が長引くと、次の期の話に入る前に時間が切れます。説明は短く区切り、後半に次の期の約束を置きます。
評価する側が面談演習で見ている点は、部下面談の練習で詳しく説明しています。観点ごとに自分の面談を採点したいときは、面談演習の評価の観点を一覧にするの点検表が使えます。
一人で確かめるときの限界
説明の順番は、紙の上で組み立てられます。ただ、部下役が反論してきたときに、言い負かさずに聞き続けられるかは、相手と話してみないと分かりません。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。この記事と同じ類型の場面です。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。
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