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部下面談のコツ
着任したばかりの上司として、問題を抱えた部下と10分ほど話す演習です。評価されるのは、部下を説得できたかではなく、話を聴き、事情をつかみ、組織として手を打ち、次の一歩を一緒に決めるまでの進め方です。
この演習で見られること
評価票の6つの観点は、面談の流れに沿っています。
- 場づくり:目的と時間を伝え、部下が話し始めやすい空気をつくれているか。
- 傾聴と質問:さえぎらず、言い換えで受け止め、具体的に聞けているか。
- 事情の把握:表に出ている訴えの裏にある事情まで、聞き出せているか。
- 受け止めと姿勢:責めず、言い負かさず、もっともな点は認めているか。
- 組織としての対応:自分の権限でできることと、上や関係先に相談することを分けているか。
- 合意と次の行動:誰が・何を・いつまでにするかを本人と決め、次に話す日を決めているか。
- 評価は、実際に口にした言葉で付きます。頭の中で考えていても、言葉にしなければ伝わりません。
始める前に:資料の読み方
準備の数分で、面談の目的と、聞きたいことを決めておきます。
- 上司のメモから「面談で何を決めてほしいか」と「できないこと(評価は変えられない、処遇の約束はできない など)」を拾います。
- 人事記録の数字は、前と後の変化を見ます(達成率、残業、遅刻の回数など)。変化が始まった時期が、話を聞くきっかけになります。
- 本人のメールや発言は、表向きの言い分です。そこで話が終わらないつもりで臨みます。
- 自分の立場(係長、課長、店長など)と、着任してどれくらいかを確かめます。着任したばかりなら「まだ知らないことが多い」前提で、聞く側に回れます。
- 最初のひと言、聞きたいこと3つ、最後に決めたいことを、短くメモしておきます。
場づくり(最初の1〜2分)
- 面談の目的と時間を先に伝えます(「今日は〜について、10分ほど話したい」)。
- 時間を取ってくれたことや、日ごろの仕事へのお礼をひと言添えます。
- いきなり問題点から入らず、「まず、いまの状況を聞かせてほしい」と相手に話してもらう形で始めます。
- 部下が身構えていたり、話をそらしたりしても、慌てずに目的へ戻します。
聴く・問いかける
- 前半は聴くことに徹します。さえぎらない、否定しない、すぐに結論を出さない。
- 相手の言葉を言い換えて返します(「〜で困っているんですね」)。気持ちに共感することと、要求に同意することは別です。
- 質問を使い分けます。広げる(ほかには?)、具体にする(たとえばどんな場面?)、本人の考えを聞く(あなた自身はどうしたい?)、核心に触れる(いちばん気になっているのは?)。
- 「なぜ」を重ねると詰問に聞こえます。「何が」「どんなふうに」に言い換えます。
- 自分の考えを言うときは「私はこう考えるけれど、どう思う?」と相手に返します。
事情をつかむ
- 「何が起きたか(事実)」と「どう感じているか(気持ち)」を分けて聞きます。
- 表に出ている訴えの裏に、別の事情があることがよくあります。急いで言い当てようとせず、話しやすい空気をつくって、相手から話してもらいます。
- 資料にある変化(時期、数字)を手がかりに、「その頃、何か変わったことはありましたか」と開いた質問で聞きます。
- 部下が話した事情は、要点を言い換えて確かめます。聞き出した事情は、後半の打ち手に必ずつなげます。
受け止める・責めない
- 過去の行動を責めると、話が止まります。原因探しより、これからどうするかに目を向けます。
- 相手の言い分のうち、もっともな部分ははっきり認めます。全部を否定しません。
- 前任者や会社、ほかの社員への批判には乗らず、強く否定もしません(「自分の目でも確かめたい」と受け流します)。
- 規則や事実として伝えるべきことは、責める口調にせず、落ち着いて伝えます。受け止めることは、言うべきことを言わないこととは違います。
- 助言や説得は終盤に回します。最初に言うと、反論の応酬になりやすいからです。
組織として手を打つ
- 自分の権限でできること(仕事の割り振り、手順の見直し、関係者との話し合い)と、上司・人事・専門の窓口に相談することを分けて伝えます。
- できない約束はしません。異動、評価の変更、処遇は確約せず、「上に相談する」「確かめて答える」と伝えます。
- 個人の頑張りだけで解決させず、仕組み(役割分担、決まり、相談の窓口、制度)で支えます。
- 健康、ハラスメント、法令に関わる話は、一人で抱えず、決められた手続きや窓口につなぎます。
次の一歩を合意する
- 最後に、具体的な次の行動を本人と一緒に決めます。誰が・何を・いつまでに。
- 本人の行動だけでなく、上司として自分がすることも約束します。
- 次に話す日を決めて終えます。続けて見ている姿勢が伝わります。
- 10分で全部を解決する必要はありません。完全に納得させられなくても、次の一歩が決まれば十分です。
考え方の手順(モデル)
面談の10分を、次の順で組み立てると、観点を漏らしにくくなります。
- 目的と時間を伝え、相手に話してもらう(1〜2分)。
- 言い換えで受け止めながら、事実と気持ちを分けて聞く(3〜4分)。
- 変化のきっかけや、いちばん困っていることを、開いた質問で聞く(2〜3分)。
- 聞いた事情を言い換えて確かめ、自分にできること・上に相談することを示す(1〜2分)。
- 次の行動と期限、次に話す日を一緒に決める(1分)。
よくあるつまずき
- 最初から注意や説得を始め、部下が黙ってしまう。
- 「AかBか決めてください」と迫られ、どちらかを即答する(目的を聞き、条件付きの案や、期限を決めて試す案を出します)。
- 事情を聞かないまま「頑張って」「気をつけて」で締める。
- 異動や評価の変更など、自分では決められないことを約束する。
- 聞き出した事情を、最後の打ち手に生かしていない。
- 次の行動が「様子を見よう」だけで、期限も次に話す日もない。
練習のしかた
- まず「ヒントあり」で流れをつかみ、慣れたら「本番の設定」で試します。
- 評価票の「根拠の発言」を見て、どの発言が点につながったかを確かめます。
- 同じ場面を2回目以降に練習するときは、点の低かった観点を1つだけ決めて、そこを意識して話します。
- 声に出して練習すると、話す速さや相づちの癖に気づけます。
- 言い回しを丸暗記せず、要点だけを覚えて、毎回自分の言葉で話します。
このページについて
昇格・昇任試験の対策として一般に通用する考え方を、昇格パスがまとめたものです。会社や自治体によって、試験の形式や評価の観点は違います。当日の指示や様式がいちばん優先です。点数の付き方は評価の基準、評価票の形は見本で確かめられます。