質問したのに、部下が黙ったままになる。沈黙を埋めようとして説明を足すほど、上司ばかりが話してしまうことがあります。まずは、沈黙の理由を決めつけず、今の問いに答えやすいかを確かめます。
この記事は、面談演習を振り返るための当サイトの提案です。沈黙から性格や健康状態を判断するものではありません。職場と会話の例は、説明のために作った架空のものです。
黙っていることと、拒否していることを分ける
返事がないと、話す気がないのだと感じるかもしれません。しかし、考えているのか、質問が分からないのか、今は話しにくいのかは、沈黙だけでは分かりません。観察できることと、上司の解釈を分けます。
「質問の後、返答がなかった」は観察したことです。「反省していない」「上司を信用していない」は、その場では確認できていない解釈です。後者を前提に注意を始めると、最初に確かめたかった仕事の話から離れてしまいます。
最初から理由を当てにいく必要はありません。相手が考える余地を残し、答え方を選べるようにします。話してもらうことだけを、面談の成功とみなさないようにしましょう。
待つ間に、新しい質問を重ねない
問いを出した直後に、答えの候補を並べることがあります。「仕事が多いのか、それとも人間関係か」と足すと、最初の問いに考えていたことを中断させるかもしれません。
待つ時間に一律の正解はありません。長さを秒数で管理するより、自分が何をしているかを確認します。資料を見つめ続けたり、返事を急かしたりせず、相手が話し始めたら聞ける状態で待ちます。
待っても話が始まらない場合は、問いの負担を下げます。大きな問いを小さくする、問いの意味を説明する、今日は扱う範囲を限るなど、次の手を選びます。
| 今の問い | 答えにくい可能性 | 小さくする方向 |
|---|---|---|
| 最近どうですか | 範囲が広すぎる | 直近の一つの仕事を選ぶ |
| なぜできなかったのですか | 責められていると感じる | 作業が止まった場面を確かめる |
| これからどうするつもりですか | 対策まで求められている | まず困っている点だけを聞く |
| 全部話してください | 話す範囲を決めにくい | 業務上必要な範囲を説明する |
この表は相手の気持ちを断定するものではありません。上司側の問いを見直すために使います。言い換えた後も、相手が答えを選ぶ時間を残します。
架空の例:提出が遅れた理由を聞く面談
上司が、資料の提出が遅れた部下と話す場面を考えます。「なぜ遅れたのですか」と聞いた後、部下は黙りました。上司は不満を感じましたが、理由はまだ分かっていません。
ここで「準備不足でしょう」と結論を出すと、確認ではなく決めつけになります。問いを戻すなら、どの作業までは進んでいたか、止まったのはどこかを聞けます。原因の説明より先に、出来事の順序を確かめる方法です。
それでも返事がない場合には、今ここで整理しにくいかを確かめます。仕事の経過をメモにして、後で話す方法も考えられます。ただし、提出の遅れが他の仕事に影響しているなら、当面の対応まで放置しません。
この場面では、詳しい事情を聞く時間と、今日必要な作業の確認を分けます。何が未完了か、誰の支援が要るかを先に確かめ、事情の整理は改めて話す形です。聞き出せなかったことと、確認できたことを混ぜずに残します。
話し方の選択肢を出す
「今話すか、話さないか」の二択だけにしない方法があります。扱う範囲を狭める、資料を一緒に見る、後から整理するなど、内容に合う選択肢を考えます。
- 今は一つの出来事だけを確認する
- 資料の該当箇所を見ながら順番を整理する
- 業務の経過を本人が短くメモしてから話す
- 改めて話す時間を決め、今日の対応だけ確認する
どの方法でも、本人に必要以上の私生活の説明を求めません。仕事への影響を確認することと、個人的な事情を詳しく聞くことは分けます。共有が必要な場合も、何のために誰へ伝えるかを曖昧にしないようにします。
区切るときは、何も決まらなかったで終えない
面談の時間には限りがあります。話が進まないまま終了する場合でも、次の確認を決められることがあります。今日分かったことと、まだ分からないことを短くまとめます。
次に話す予定を決めるなら、何について話すのかもそろえます。「また今度」だけでは、本人も準備しにくくなります。上司が調べることがあるなら、その内容と返答の予定も伝えます。
ただし、相手が話さなかった内容を、同意したものとして記録してはいけません。黙っていたことを了承とみなさず、合意できた事項だけを残します。保留の事項には、確認が必要だと分かる印を付けます。
話す準備ができたときに、上司が先回りしない
沈黙の後、相手が短い言葉を出したら、その続きをすぐに補わないようにします。上司が推測した言葉で完成させると、本人の説明と違う内容になることがあります。短くても、まず相手の表現を受け取ります。
話し始めたことを理由に、問いを一度に増やす必要もありません。その言葉が指す出来事を、一つずつ確かめます。本人が説明を変えた場合は、矛盾を責める前に、どこを言い直したいのかを聞きます。
面談演習では、相手が話さない時間に、自分の次の説明を準備しがちです。振り返りでは、話し始めた内容を実際に拾えていたかを見ます。用意した質問へ戻るだけになっていないかを確かめましょう。
待つことは、何もしないこととは限りません。問いの大きさや、本人が答える余地を見直す時間にもできます。沈黙をなくすことより、必要な話を本人の言葉で聞けるかに目を向けます。
録音せずにできる、沈黙後の自己点検
面談の練習後、自分が問いを出した直後の言葉を書き出します。すぐに説明を足したか、別の質問を重ねたか、相手の返事を待ったかを見ます。沈黙の長さを正確に測る必要はありません。
次に、問いを一つだけ小さくします。「仕事の悩み全体」から「直近の作業で止まった箇所」へ、という変え方です。同じ問いを強い口調で繰り返すのではなく、答える範囲を変えて練習します。
質問の種類は部下面談の質問例、面談全体の順序は部下面談のコツで確認できます。相手に答えを合わせてもらうためでなく、自分の聞き方を点検するために使いましょう。