部下面談では、何を言うかより、何をどう聞くかで流れが決まります。昇格試験の面談演習でも、評価する側は「解決したか」より「どう聞いたか」を見ている、と説明されることが多い形式です。
当サイトで読んだ体験記のうち、面談演習に触れていたのは3件でした(2026年10月)。知恵袋の質問では、面談演習を正面から扱うものはほぼ見つかりませんでした。件数は検索語の選び方に左右されます。情報が少ない形式だと考えてください。
この記事では、部下面談で使える質問を、流れに沿って並べました。言い回しを覚えるためではなく、自分の言葉に直すための下敷きとして使ってください。
※この記事に出てくる人物と会話は、説明のために作った架空のものです。
部下面談で質問が大事な理由
面談で上司が話しすぎると、部下は「聞いてもらえなかった」と感じやすくなります。表に出ている悩みの裏に、別の事情があることも少なくありません。
質問には、次の3つの役目があります。
- 事情を知る:何が起きていて、本人はどう受け止めているか
- 本人に考えてもらう:答えを上司が出すのではなく、本人の考えを引き出す
- 次の一歩を一緒に決める:誰が、何を、いつまでに
面談演習では、部下役が最初から本音を話すとは限りません。聞き方によって、話す内容が変わるように作られていることがあります。
最初の一言の例
最初の一言は、面談の目的と、話してよい場であることを伝えるためのものです。長い前置きは要りません。
| 場面 | 最初の一言の例 |
|---|---|
| 部下から相談があった | 時間を取ってくれてありがとう。まず、今いちばん気になっていることから聞かせてください。 |
| 上司から声をかけた | 最近の様子を聞きたくて、時間をもらいました。責めるための面談ではありません。 |
| 評価を伝える | 今日は今期の評価について話します。最初に、自分ではどう振り返っているか聞かせてもらえますか。 |
いきなり「なぜ〜したの」で始めると、問い詰めているように聞こえます。最初は、相手が答えやすい問いから入ります。
開いた質問と閉じた質問
質問には、答えの幅が広い「開いた質問」と、はい・いいえで答えられる「閉じた質問」があります。
- 開いた質問:「どんなことがありましたか」「どう感じていますか」「何があれば進めやすいですか」
- 閉じた質問:「今週中に終わりそうですか」「この件はBさんにも伝えましたか」
面談の前半は開いた質問で広く聞き、後半は閉じた質問で事実や約束を確かめる、という順が使いやすいと考えられます(推測)。最初から閉じた質問を重ねると、部下は答えるだけになり、本音が出にくくなります。
「なぜ」は、続けて使うと詰問に聞こえます。「何があって、そうなったのですか」「どんなところが難しかったですか」と言いかえます。
気持ちを聞く・事実を聞く
部下の話には、「何が起きたか」という事実と、「どう感じたか」という気持ちが混ざっています。2つを分けて聞くと、話が整理しやすくなります。
- 事実を聞く:「それはいつのことですか」「どのくらいの量ですか」「誰が関わっていますか」
- 気持ちを聞く:「そのとき、どう感じましたか」「いちばん引っかかっているのはどこですか」
気持ちを受け止めることと、相手の要求に同意することは別です。「それはつらかったですね」と受け止めても、異動や昇給をその場で約束する必要はありません。自分の権限でできることと、上に相談することを分けて伝えます。
場面別の質問例(業績・勤怠・キャリア)
業績が落ちている部下
- 「最近の仕事で、手応えがあるところと、苦しいところを教えてください」
- 「数字が下がり始めたのは、いつごろからだと思いますか」
- 「あなたから見て、何がいちばん効いていると思いますか」
- 「次の1か月で、一つだけ変えるとしたら何にしますか」
原因を上司が決めつけず、本人の見立てを先に聞きます。
遅刻や欠勤が増えている部下
- 「出勤の記録を見て、気になったので時間をもらいました。まず、記録が合っているか一緒に見てもらえますか」
- 「始業の時刻や、遅れるときの連絡の決まりは、どう受け止めていますか」
- 「この状態を変えるために、職場の側で手伝えることがあれば教えてください」
決まりを守ることは伝えつつ、先に事情を聞きます。仕事以外の事情は、本人が言いたくなければ聞き出しません。体調や家庭の事情が出てきたら、会社の相談窓口や産業保健の担当につなぐことを伝えます。診断のようなことは言いません。勤怠の面談の進め方は、遅刻が続く部下との面談でくわしく扱っています。
今後のキャリアに迷っている部下
- 「3年後、どんな仕事をしていたいですか」
- 「今の仕事の中で、続けたいことと、手放したいことは何ですか」
- 「そのために、今の課でできそうなことはありますか」
異動や昇進は、上司一人では決められないことが多いものです。約束はせず、「上にも伝えてみる」と、自分がすることを具体的に言います。
面談の終わらせ方
面談の最後には、話したことを短くまとめ、次の一歩を一緒に決めます。
- まとめる:「今日の話では、〜が気になっていて、〜を変えたい、ということですね」
- 本人の行動を決める:「では、〜を〜までにやってみましょう」
- 自分の行動を言う:「私は〜を確かめて、〜までに伝えます」
- 次に話す日を決める:「2週間後の金曜に、もう一度話しましょう」
面談演習の時間は、10〜20分ほどのことが多いと言われます(一般的な説明。会社によって違います)。短い時間なので、終わらせ方の4つは、残り3分を目安に始めると収まります。話の途中でも、まとめに入ってかまいません。
評価する側の観点と、練習の手順は部下面談の練習に、苦情を受けた部下・成績不振・年上の部下の場面は部下面談の場面別の進め方にまとめました。
質問を準備する手順
本番や演習の前に、質問を次の順で準備します。全部で10分ほどあればできます。
- 面談の目的を一文で書く:「〜について事情を聞き、次の一歩を決める」
- 最初の一言を決める:上の表から、場面に合うものを自分の言葉に直す
- 開いた質問を3つ書く:事実を聞くもの、気持ちを聞くもの、本人の考えを聞くもの
- 閉じた質問を2つ書く:期限や約束を確かめるもの
- 自分がすることを1つ決めておく:権限の範囲で約束できること
書いた質問は、そのまま読み上げるためのものではありません。相手の答えに合わせて順番を入れ替えるための、手持ちの札として使います。
つまずきやすい聞き方と直し方
- 質問を重ねる:「何があったの? 忙しいの? 誰かと揉めた?」と続けると、相手はどれに答えればよいか迷います。1回に1つだけ聞き、答えを待ちます。
- 答えを先に言う:「忙しかったんだよね?」は、答えを決めた問いです。「どんな1週間でしたか」と、答えの幅を残します。
- 沈黙を埋める:相手が考えている数秒を待てず、次の質問を出してしまいます。5秒は待つと決めておきます。
- 受け止めずに次へ進む:答えを聞いたら、短く言い直してから次の質問に移ります。「仕事が重なっていた、ということですね」の一言で、聞いていることが伝わります。
架空の部下の設定を使って、質問の流れを通しで試すなら、面談演習の例題の3つの例題が使えます。定期的な対話の中で質問を使い分けたい人は、1on1の進め方と質問例も参考になります。
架空の例:最初の5分を比べる
場面:保険会社の事務センターで、係長のHさんが、入社4年目のIさんと面談します。Iさんは最近、締め切りに遅れることが増えています。
Hさんの最初の言い方は、次のようなものでした。
最近、締め切りに遅れているよね。なぜ間に合わないの?
評価する側から見ると、最初から原因を問い詰めていて、Iさんが事情を話しにくい入り方です。言い直すと、次のようになります。
時間を取ってくれてありがとう。最近、仕事の量が増えているように見えて気になっていました。今の仕事で、いちばん大変なところはどこですか。
この入り方なら、Iさんは「担当先ごとに書式が違い、確かめるのに手間取っている」といった事情を話しやすくなります。事情が出てきてから、締め切りの話に移ります。
締め切りの話に移るときも、閉じた質問で確かめます。「今週の分は、何日までなら出せそうですか」。最後に、Hさん自身がすること(書式の違いを課でそろえられるか確かめる、など)を一つ言い、次に話す日を決めて終えます。
一人で練習するときの限界
質問の言い回しは、紙に書くと整います。けれども、相手の答えを聞いてから次の一問を選ぶ力は、答えが毎回変わる相手と話さないと身につきにくいものです。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。準備した質問の札が、相手の答えに合わせて使えるか試してみてください。
関連する記事