昇格試験やアセスメントの面談演習では、部下役との10〜20分ほどの面談で、上司としての対応を見られます。ただ、何がどう評価されるのかは、あまり知られていません。
評価の観点を知りたくても、手がかりは多くありません。当サイトの調べ(2026年10月)では、体験記48件のうち、試験の構成に面談演習を含むものは3件でした。知恵袋の質問76件の中にも、面談演習を正面から扱うものは見当たりませんでした。件数は検索語の選び方に左右されます。
この記事では、面談演習で見られやすい観点を6つに整理し、自分で採点できる点検表にまとめます。観点の名前や数は、試験の作り手によって違います。ここで挙げるのは、多くの面談演習に共通すると考えられる系統です(公式の基準ではありません)。
※この記事に出てくる会社、人物、会話は、説明のために作った架空のものです。昇格パスの練習の場面の中身(部下の事情や話の展開)には触れていません。
観点の全体像
面談演習の評価では、問題を解決できたかどうかより、どう聞き、どう話を進めたかが見られやすいと考えられます(推測)。10〜20分で、部下の悩みがすべて解決することは、まずありません。
観点は、大きく次の6つに分けられます。
| 観点 | ひとことで言うと |
|---|---|
| 傾聴 | 相手の話を、さえぎらずに受け止めているか |
| 事実の確認 | 何が起きたかを、決めつけずに確かめているか |
| 問題の分析 | 表の訴えの奥にある本当の問題に近づいているか |
| 動機づけ | 相手が前を向けるように働きかけているか |
| 合意と次の行動 | 具体的な次の一歩を、一緒に決めているか |
| 決まりと配慮 | 職場の決まりや安全を外さず、相手の立場をくんでいるか |
面談の基本の流れは、部下面談の練習で説明しています。ここでは、観点ごとに、評価する側から見えやすい行動を整理します。
傾聴
傾聴は、面談演習の土台になる観点です。見られやすいのは、次のような行動です。
- 相手の話を、途中でさえぎらない
- 相手の言葉を短く言い直して返す(「〜ということで困っているんですね」)
- 話の途中で、助言や反論を始めない
共感と同意は別のものです。相手の気持ちには寄りそっても、要求にすぐ同意する必要はありません。「そう感じるのは無理もないと思います」と気持ちを受け止めたうえで、事実の確認に進みます。
上司役が話す時間が長すぎる面談は、この観点で弱く見えやすいと考えられます(推測)。練習の録音を聞き返し、自分が話している時間と、相手が話している時間を比べてみます。
事実の確認
事実の確認では、何が起きたかを、決めつけずに確かめているかが見られます。
- 「いつ」「どの仕事で」「どんなふうに」と、具体的に聞いている
- 事実と、相手の感じ方を分けて聞いている
- 資料や記録と、相手の話が違うときに、言い争わずに確かめている
この観点では、質問の言葉の選び方も記録に残ります。理由を問う形の質問が続くと、確かめているつもりでも、相手を責めている面談に見えやすくなります。出来事の順番や場面を聞く形にすると、同じ事実が集まります。
問題の分析
面談演習の部下役は、最初に話す訴えの奥に、別の悩みを持っていることがあります。問題の分析の観点では、その奥に近づこうとしているかが見られやすいと考えられます(推測)。
- 「ほかに気になっていることはありますか」と、話を広げる問いをしている
- 「いちばん困っているのは、どこですか」と、焦点を絞る問いをしている
- 急いで本音を暴こうとせず、話しやすい空気を作っている
奥の悩みに届かなくても、近づこうとした問いかけは、評価する側に見えています。最初の訴えだけで結論を出さないことが大切です。
動機づけ
動機づけの観点では、相手が前向きに動けるように働きかけているかが見られます。
- 相手の強みや、これまでの貢献を、具体的に認めている
- 相手自身に「どうしたいか」を考えてもらう問いをしている
- 上司が答えを押しつけず、相手の案を引き出している
「がんばって」と励ますだけでは、相手は何を続ければよいのかが分かりません。何を認め、何を期待しているかを、言葉にします。
合意と次の行動
面談の終わりに、具体的な次の一歩を決めているかが見られます。
- 誰が、何を、いつまでにするかを決めている
- 部下の行動だけでなく、上司がすることも約束している
- 次にいつ話すかを決めている
完全に説得しきれなくてもかまいません。次の一歩と、次に話す日が決まっていれば、面談は前に進んだと言えます。時間が足りないときも、次に話す日だけは決めてから終えます。
決まりと配慮(コンプライアンス)
職場の決まりや安全を外していないか、相手の立場に配慮しているかも、見られやすい観点です。
- できない約束をしない(異動や評価の変更をその場で確約しない)
- 職場の決まりは、ぼかさずに伝える
- 心身の不調やハラスメントがうかがえるときは、専門の窓口につなぐ
- ほかの社員や前任者への批判に乗らない
- 相手の私生活に、必要以上に踏み込まない
部下の要求に共感するあまり、自分の権限を超える約束をしてしまうことがあります。「私の権限でできること」と「上に相談すること」を分けて伝えると、この観点で安定します。
点検表の使い方
練習の面談を録音するか、文字の記録を残し、次の点検表で採点します。各項目を「できた(2)」「一部できた(1)」「できなかった(0)」の3段で付けます。
| 観点 | 点検の問い | 点 |
|---|---|---|
| 傾聴 | 相手の言葉を言い直して返したか。さえぎらなかったか | 0〜2 |
| 事実の確認 | 具体的な事実を、決めつけずに確かめたか | 0〜2 |
| 問題の分析 | 最初の訴えの奥に近づく問いをしたか | 0〜2 |
| 動機づけ | 相手の強みを認め、相手の考えを引き出したか | 0〜2 |
| 合意と次の行動 | 次の一歩と、次に話す日を決めたか | 0〜2 |
| 決まりと配慮 | できない約束をせず、決まりを伝えたか | 0〜2 |
点数の合計より、0や1が付いた観点を見ます。それが、次の練習で意識する点です。一度に全部を直そうとせず、1回の練習で1つか2つの観点に絞ります。
この点の付け方は、当サイトが自分で振り返るために作った目安です。実際の試験の採点の方法とは違います。
点検表で採点する練習の素材には、面談演習の例題の架空の部下の設定3つが使えます。場面ごとの進め方は、元気がない部下との面談、ハラスメントの相談を受けた面談、部下同士が対立しているときの面談でも説明しています。
採点した結果は、日付と一緒に残しておきます。練習を重ねるごとに、どの観点の点が上がったかを見比べられます。
架空の例:点検表で採点してみる
場面:信用組合の融資の係で係長を目指すMさんは、架空の設定で練習しました。部下が「担当の取引先を減らしてほしい」と申し出てきた、という設定です。
最初の練習の記録を点検表で読み直すと、Mさんの最初の発言は次のようなものでした。
取引先を減らすのは難しいよ。みんな同じくらい持っているから。
評価する側から見ると、申し出の中身を聞く前に結論を言っています。傾聴は0、事実の確認も0です。後半で「何か案はある?」と聞いていたので、動機づけは1でした。次に話す日を決めていなかったので、合意と次の行動も1です。
Mさんは、次の練習で直す観点を傾聴と事実の確認の2つに絞りました。最初の発言を「申し出てくれてありがとう。どの取引先で、どんなことに時間がかかっているか、聞かせてもらえますか」に変えました。
2回目の記録では、この2つが2になりました。一方で、聞くことに時間を使いすぎて、終わりの約束が短くなっていました。3回目は、残り3分で合意に入ることを決めて練習しました。
このように、1回ごとに観点を1つか2つに絞ると、どこが直ったかが記録から読み取れます。
一人で確かめるときの限界
点検表は、自分の記録を読み直す道具です。ただ、採点するのも自分なので、甘く付けた点や、気づかなかった発言は残ります。自分以外の目で、発言のどこが評価の根拠になったかを見てもらうと、点検表の付け方そのものを直せます。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。点検表で付けた自分の点と、評価票を見比べてみてください。
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