メールやメモの束を、役職者として時間内に処理する演習があります。いわゆるインバスケット形式の演習です。練習を重ねても、自分の答案のどこがよくて、どこが弱いのかがわからない、という人は多いはずです。
対策本への購入者のレビュー206件を当サイトで読んだところ(2026年10月)、46件が、この演習の解き方・優先順位・時間配分についてもっと知りたいという内容でした。件数は検索語の選び方に左右されるので、悩みの種類を知る手がかりとして見てください。
この記事では、案件処理演習で見られやすい観点を整理し、自分の答案を観点で見直す方法を説明します。評価の観点の名前や数は、会社や試験の作り手によって違います。ここで挙げるのは、多くの演習に共通すると考えられる系統です(公式の基準ではありません)。
※この記事に出てくる会社、人物、案件は、説明のために作った架空のものです。
評価の観点の全体像
案件処理演習の採点では、正解に当たったかどうかより、どう考えてどう動こうとしたかが見られると考えられます。その手がかりは答案の文字だけです。気づいていても書いていない行動は、採点する人には存在しないのと同じになります。
観点は、大きく次の5つの系統に分けられます。
| 系統 | 見られること | 答案での表れ方 |
|---|---|---|
| 問題を見つける | 状況を広く見て、本当の問題をつかむ | 案件の関連づけ、根本の原因への言及 |
| 判断する | 期限内に、理由を持って決める | 結論と理由、優先順位 |
| 計画する | 先を見て段取りを組む | 期限、順番、再発の防止 |
| 人を動かす | 任せる、頼む、巻き込む | 指示の具体さ、任せ方 |
| 人に配慮する | 相手の立場をくむ | ねぎらい、お詫び、言葉の選び方 |
このほかに、決まりや安全を外さないこと(法令、安全、情報の扱い)を、独立した観点にしている演習もあります。
問題を見つける力
問題を見つける力は、案件の表面ではなく、その奥にあるものに気づけるかで見られます。
答案で表れやすいのは、次のような書き方です。
- 「案件3と案件8は、同じ原因から出ていると考える」
- 「件名は至急だが、中身は来週でも間に合う」
- 「この報告は小さく見えるが、お客様の安全にかかわるので先に扱う」
件名の「重要」「至急」に引っぱられて、中身を読まずに優先順位を決めると、この観点が弱く見えやすくなります。人、安全、お金、決まり、信用に触れる案件は、二度読むくらいの気持ちで読みます。
人・日付・数字に印を付けて案件どうしを結ぶ手順は、案件処理演習の「関連する案件」の見つけ方で順を追って紹介しています。
判断と意思決定
判断の観点では、期限内に決めているか、決めた理由が書かれているかが見られやすいと考えられます。
弱く見えやすいのは、次のような答案です。
- 結論だけで、理由がない(「承認する」だけ)
- 「検討する」「様子を見る」で、決めていない
- 資料にない前提で決めつけている
事実が足りなくて決められない案件は、決めないことも判断です。その場合は、「誰に、何を確かめさせ、いつまでに判断する」と書きます。確かめる指示を出すことで、判断を先送りしているのではなく、判断の手順を踏んでいることが伝わります。
計画と段取り
計画の観点では、目の前の処理だけでなく、先を見て手を打っているかが見られやすいと考えられます(推測)。
答案で表れやすいのは、次の3つです。
- 期限:「本日中」「水曜の午前まで」と、日時で書いている
- 順番:急ぐ案件から処理し、順番の理由が見える
- 再発の防止:その場の手当てだけでなく、同じことが起きない仕組みに触れている
苦情や事故の案件では、その場の対応だけで終わる答案が多くなりがちです。「その場の手当て → 当面の対策 → 再発を防ぐ仕組み」の3段で書くと、計画の観点が伝わりやすくなります。
人を動かす・組織を使う
管理職の演習では、全部を自分で処理する答案は、評価されにくいと考えられています。部下、関係部署、上司の力を借りて、組織として動いているかが見られます。
この観点で見られやすいのは、次の点です。
- 任せる相手が、役割に合っているか
- 指示に、何を、いつまでに、どう報告するかが書かれているか
- 任せきりにせず、方向や判断の基準を示しているか
- 自分にしかできないこと(お詫びの場、上への説明、人事の判断)は、自分でやっているか
丸投げと任せることの違いは、指示の中身で見られます。指示の書き方は、案件処理演習で伝わる指示文で説明しています。
対人の配慮
対人の配慮は、見落とされやすい観点です。案件の処理に集中すると、相手への言葉が抜けがちです。
答案で表れやすいのは、次のような一言です。
- 報告をくれた部下へのねぎらい(「早く知らせてくれてありがとう」)
- 迷惑をかけた相手へのお詫び
- 対立している人どうしの、両方の言い分をくむ言葉
この一言は、長く書く必要はありません。返信の最初に一文添えるだけで、相手の立場を考えていることが伝わります。毎回同じあいさつを繰り返すより、案件に合わせて言葉を変えるほうが、配慮として読まれやすくなります。
試験の型によって、重く見られる観点が変わる
同じ案件処理演習でも、作り方によって、重く見られる観点が違うことがあります。大きく分けると、次の2つの型です。
| 優先順位でさばく型 | 方針を軸に判断する型 | |
|---|---|---|
| 中心 | 重い案件から、時間内に多く処理する | 着任した役職者として方針を決め、各案件をそれに沿って判断する |
| 重く見られやすい観点 | 問題を見つける、判断する(優先順位の妥当さ) | 計画する、判断の一貫性、人を動かす |
| つまずきやすい点 | 方針を考えすぎて件数が足りない | 機械的に仕分けて、方針との結び付きが見えない |
全件に順位を振る欄や「優先する案件を選べ」という指示があれば前者、方針や課題をまとめる欄があれば後者に近いと考えられます。どちらの型でも、重い問題を放置しない、理由を書く、任せて報告を受ける、という基本は同じです。
自分の答案を観点で見直す
練習で書いた答案は、次の点検表で見直します。1案件ずつ、当てはまる所に印を付けます。
| 観点 | 点検の問い |
|---|---|
| 問題を見つける | ほかの案件との関連や、根本の原因に触れているか |
| 判断する | 結論と、その理由が書いてあるか |
| 計画する | 期限が日時で書いてあるか。再発の防止に触れているか |
| 人を動かす | 誰に、何を、いつまでに、が書いてあるか |
| 人に配慮する | ねぎらいやお詫びの一言があるか |
| 決まりと安全 | 法令、安全、情報の扱いにかかわる案件を軽く扱っていないか |
印の付かない観点が、あなたの答案の弱い所です。全部の案件で全部の観点を満たす必要はありませんが、急ぐ案件や重い案件では、多くの観点に印が付くのが望ましいと考えられます(推測)。
弱い観点がわかったら、次の練習では、その観点だけを意識して書きます。一度に全部を直そうとすると、時間が足りなくなりがちです。
観点ごとに、よくある抜けと、次の答案での直し方を並べておきます。
- 問題を見つける:関連に気づいても書いていない → 「案件○と関連」と一言書き添える
- 判断する:「確認します」で終わる → 確かめた後に何を決めるかまで書く
- 計画する:期限が「早めに」 → 設定の日付で「〇日の何時まで」と書く
- 人を動かす:任せる相手だけ書く → 報告をいつ受けるかを足す
- 人に配慮する:お詫びが抜ける → 迷惑をかけた相手への一文を最初に置く
架空の例:1案件の見直し
場面:企業の研修を受け入れる研修施設で、施設長を務めて1年になります。部下から「来週の3日間の企業研修で、借りる予定だった机と椅子が半分しか用意できないと、レンタルの業者から連絡がありました」と報告がありました。
最初の答案は、「業者に確認して、至急対応してください」でした。点検表で見直すと、判断の理由、期限、誰に、ねぎらい、再発の防止に印が付きませんでした。
見直した答案の骨組みは、次のとおりです。
- ねぎらい:早く知らせてくれたことへの一言
- 判断:研修の初日に響くので、今日中に手当てする
- 指示:手配の担当に、別の業者で残りの半分を借りられるか、本日15時までに確かめさせる
- 計画:借りられない場合の案(部屋の使い方を変える、施設の備品を集める)を、16時までに一緒に考える
- 再発の防止:借りる数を、業者と書面で確かめ合う手順を作るよう、来週までに担当に案を出させる
点検表を当てはめる練習の素材がほしい人は、案件処理演習の例題の架空の5案件を使えます。情報が足りない案件で判断の観点をどう示すかは、案件処理演習で「仮の判断」を書くで説明しています。
一人で確かめるときの限界
点検表を使えば、一人でも答案を見直せます。ただ、自分では「書いたつもり」になりやすく、評価する側からどう見えるかは確かめにくいものです。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、案件処理演習の1案件を5分で1回練習できます。書き終えると評価票が出て、観点ごとの評価と、根拠になった自分の記述を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。点検表で見た自分の弱い観点と、評価票の結果を見比べてみてください。
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