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案件処理演習のコツ
役職者として、たまった案件(メール、メモ、報告書など)を制限時間の中で処理する演習です。いわゆるインバスケット形式の試験の練習にあたります。見られるのは、正解を当てたかではなく、何を問題と見て、どう判断し、誰を動かしたかと、その理由です。
この演習で見られること
評価票の8つの観点は、次のとおりです。
- 問題の発見:小さな報告に隠れた重い問題(安全、不正、法令、情報、評判)に気づけているか。
- 問題の分析:案件どうしのつながりや、根っこにある原因を見ているか。
- 意思決定:期限の中で結論を出し、理由を書いているか。
- 計画と段取り:いつまでに何をするか、自分が不在のあいだどう回すかを決めているか。
- 優先順位:緊急度と重要度で、扱いに差をつけているか。
- 任せる(委任):方向と期限を示して、部下や関係部署に任せているか。
- 報告と調整:上司や関係部署への報告・相談・依頼が抜けていないか。
- 部下や関係者への配慮:報告へのねぎらい、お詫び、負担への気づかいがあるか。
- 評価する側は、書かれたことからしか判断できません。考えたことは、短くても必ず書きます。
最初に全体を読む
- いきなり1件目から書き始めません。まず背景資料(自分の立場、不在の予定、連絡できる時間、規程、人物の一覧、予定表)を読みます。
- 次に全件にざっと目を通し、1件ごとに「自分が決めること」を一言メモします。
- 後ろのほうに、それまでの前提を変える案件が置かれていることがあります。全件を見てから優先度を決めます。
- 件名の「重要」「至急」は、そのまま信じません。中身で判断します。
- 人の名前より、役割・出来事・期限・数字をメモしておくと、後の案件とのつながりに気づきやすくなります。
- 知らない業界の言葉が出ても、判断に要るのは言葉の意味でないことが多いです。立ち止まりません。
緊急度と重要度で分ける
- 緊急かつ重要:今日、自分が判断します(お客様の苦情、事故やけが、設備の停止、法令違反の疑い、情報の漏れ、急な欠員など)。
- 重要だが緊急でない:管理職の本業です(人材育成、業務改善、予防、計画)。今日は着手の指示と方向だけでも書きます。
- 緊急だが重要でない:短く処理するか、任せます。
- どちらでもない:一言で処理するか、処理しないと決め、その理由を一言書きます。
- 「期限が今日」でも、影響が小さければ重要度は低いことがあります。緊急度と重要度を混ぜません。
- 迷う案件は、ひとまず重要寄りに扱います。後で下げるほうが安全です。
小さな報告に隠れた問題に気づく
- 人・安全・お金・法令・評判に触れる案件は、二度読みします。
- 部署の中の話に見えても、会社全体の信用や法令に響くものは、優先度を上げます。
- 違和感(数字の食い違い、いつもと違う時間、同じ人への負担の集中)に気づいたら、そのこと自体を答えに書きます。
原因を見立て、案件どうしを関連づける
- 根っこの問題(原因)と、そこから出た症状を分けます。症状には応急の手当て、根っこには中長期の打ち手を書きます。
- 原因がまだわからないときは、何が足りない情報かを見極め、誰に・何を確かめるかを書きます。
- 同じ人・部署・取引先・設備・期限が出てくる案件を結びます。
- 関連に気づいたら「案件〇〇と合わせて対応する」と、答えの中に書きます。気づいても書かなければ伝わりません。
- 日程が重なる案件(会議、来客、行事)は、どちらに出るか、誰に代わってもらうかを決めます。
- 上司から方針が届いていたら、ほかの案件の判断をその方針に結びつけます。
判断と理由を書く
- 「OK」「NG」だけでは弱いです。何を問題と見たか、なぜその判断かを一文添えます。
- 資料にない前提(「たぶん〜だろう」)で決めつけません。わからない点は「誰に・何を確かめるか」を書き、確かめた結果ごとの動き方を決めておきます。
- 事実を確かめないまま、処分や結論を出しません(部下の不正や対立の案件では、特に気をつけます)。
- 処理は「応急の手当て → 当面の対策 → 再発防止」の順で考えます。
指示の型と段取り
- 指示には、誰が(役割)・何を(具体的な動詞)・いつまでに(日時)・どうやって(方針や基準、使ってよい権限)・どう報告するか、を入れます。
- 「早めに」「検討する」「対応する」は弱い言葉です。「〇日の17時までに」「〇〇を決めて報告する」と書きます。
- 自分が不在になる設定なら、不在のあいだの代わりの人と、連絡の手段・時間を決めて伝えます。
任せる
- 全部を自分で処理するのは、管理職としては減点の方向です。
- 評価されやすいのは「方向や判断の基準を示して任せ、報告の期限を付ける」形です。方向も期限もない丸投げは、管理を手放したように見えます。
- 任せる相手は、その仕事に関係する役割の人か、育てたい部下です。「育てる機会として任せる」と一言添えると、育成の見方も伝わります。
- お詫びの場への同席、上への説明、人事上の判断、方針の決定は、自分で行います。
報告と調整
- お客様への影響、事故、法令、情報の漏れなどは、規程に沿って上司や担当部署へ報告します。戻ってからではなく、今日のうちに。
- 組織図と、実際の報告や決裁の流れが違う設定があります。背景資料の規程で確かめます。
- 他部署には「依頼」の形で、何をいつまでにお願いしたいかを書きます。
配慮を一言添える
- 報告してくれた人へのお礼、苦労へのねぎらい、迷惑をかけた相手へのお詫びを一言入れます。
- 負担が一人に集中していないか、休みの予定や体調に目を向けます。
- 決まったあいさつを毎回くり返すより、案件ごとに言葉を変えます。
時間の使い方
- 全体の把握は持ち時間の2割ほど(90分なら15〜20分)。残りを書くことに使います。
- 重要な案件ほど詳しく、重要でない案件は一行で済ませます。
- 全件を処理しきれなくてもかまいませんが、重要な案件を空欄で残すのがいちばん痛い失点です。時間が足りなければ、重要な案件に一行でも判断を書きます。
- 最後に、優先度の付け忘れがないかを見直します。
2つの出題の型
- 優先度順に素早くさばく型:重要な案件から順に、できるだけ多く処理します。点になるのは、優先順位の妥当さと見落としのなさです。
- 方針を軸に判断する型:最初に「この組織をどうしたいか」を決め、各案件をその方針に結びつけて判断します。点になるのは、方針と判断の一貫性と、問題解決の深さです。
- 優先する案件を選ばせる欄や、順位を振る欄があれば前の型寄り、方針や組織の課題をまとめる欄があれば後の型寄りです。この練習では「全体のメモ」に方針や関連の気づきを書けます。
- どちらの型でも、重い問題を放置しない、再発防止まで書く、一人で抱えず任せる、判断に理由を付ける、は共通です。
考え方の手順(モデル)
- 背景資料で、立場・不在の予定・連絡できる時間・規程・代わりの人を確かめる。
- 全件にざっと目を通し、1件ごとに「決めること」を一言メモする。
- 緊急度と重要度で仕分け、関連しそうな案件を線で結ぶ。
- 全体のメモに、方針と、気づいた関連・根っこの問題を書く。
- 重要な案件から、返信(結論・理由・今後)と指示(誰が・何を・いつまでに)を書く。
- 軽い案件は一行で処理するか、処理しない理由を書く。
- 最後に、優先度の付け忘れと、不在のあいだの段取りの漏れを見直す。
よくある減点
- 全件を読まずに書き始め、後ろの重要な案件を落とす。
- 件名の「重要」に引っぱられる。
- 判断の理由がなく、結論だけ。
- 自分で全部やろうとする。または、方向も期限も示さずに丸投げする。
- 期限と行動があいまい(「至急」「早めに」「検討」)。
- 応急の手当てだけで、再発防止がない。
- 案件をばらばらに処理し、つながりに気づかない。
- 報告者へのねぎらいや、相手へのお詫びがない。
- 「私なら〜と思います」と評論の調子で書く。役職者として「〜する」「〜を指示する」と書きます。
練習のしかた
- 段階1(1案件)で書き方の型をつかみ、段階2・3で関連と優先順位、段階4で時間の配分を練習します。
- 時間を計って解く → 評価票と解説を見比べる → 抜けた観点を書き出す、をくり返します。
- 本番が手書きかパソコン入力かで、書く速さが変わります。本番と同じ方式でも練習しておきます。
このページについて
昇格・昇任試験の対策として一般に通用する考え方を、昇格パスがまとめたものです。会社や自治体によって、試験の形式や評価の観点は違います。当日の指示や様式がいちばん優先です。点数の付き方は評価の基準、評価票の形は見本で確かめられます。