案件処理演習(いわゆるインバスケット形式)には、自分で答えを書く記述式のほかに、用意された選択肢から選ぶ選択式があります。マークシートや、Web の画面で選ぶ形です。
選択式は「書かなくてよいから楽」と思われがちです。ただ、似た選択肢が並ぶので、迷い始めると時間が足りなくなります。この記事では、選択式の特徴と、選択肢を読むときの考え方を説明します。
※この記事に出てくる設問と選択肢は、説明のために作った架空のものです。特定の試験や教材の問題ではありません。
選択式と記述式の違い
どちらも、管理職として案件をどう扱うかを問う点は同じです。違うのは、何を自分で作り、何を見分けるかです。
| 観点 | 記述式 | 選択式 |
|---|---|---|
| 自分でやること | 判断と指示を文章で書く | 並んだ対応の中から選ぶ |
| 差がつくところ | 指示の具体さ、理由、関連づけ | 選択肢の細かな違いに気づけるか |
| 時間のかかるところ | 書くこと | 迷うこと |
| よくある失敗 | 時間切れで重要案件が空欄 | 1問に迷いすぎて後半が雑になる |
選択式では、書く力の差は出ません。その代わり、「どの対応がより管理職らしいか」を見分ける目が問われると考えられます(推測)。
形式の全体像は、案件処理演習の進め方で、演習そのものの考え方は案件処理演習とはで説明しています。
選択肢に共通する評価の考え方
選択肢は、たいてい「一見よさそうな対応」が複数並びます。迷ったときは、記述式で評価されやすい考え方に照らすと、絞りやすくなります。
- 事実を確かめてから判断しているか:報告を受けてすぐに処分や結論を出す選択肢は、外れやすいと考えられます(推測)
- 自分で抱え込んでいないか:管理職がすべて自分で処理する選択肢より、方向を示して任せる選択肢のほうが、評価されやすい傾向があります
- 丸投げしていないか:「担当者に任せる」だけで、方向も報告の期限もない選択肢は弱いと考えられます
- 相手への配慮があるか:苦情を受けた相手や、報告してくれた部下への一言があるか
- 再発の防止まで見ているか:目の前の手当てだけで終わっていないか
- 安全・法令・お金・評判に触れる案件を軽く扱っていないか
この6つは、選択肢の正誤を決める公式の基準ではありません。迷ったときの物差しとして使います。評価の観点の全体は、案件処理演習で評価される観点にまとめました。
「最も適切」と「最も不適切」の読み分け
選択式では、「最も適切なもの」を選ぶ問いと、「最も不適切なもの」を選ぶ問いが混ざることがあります。問いの向きを読み違えると、考えが合っていても点になりません。
- 問いを読んだら、「適切」「不適切」に印を付けてから選択肢を読む
- 「最も不適切」の問いでは、明らかにまずい対応(事実を確かめずに処分する、安全の問題を後回しにするなど)を探す
- 「最も適切」の問いでは、悪くない選択肢が複数あるので、上の6つの物差しで一番多く満たすものを選ぶ
順位を付ける形の問いもあります。この場合は、一番上と一番下を先に決めると、真ん中の順番に迷う時間を減らせます。
よく迷う選択肢の組み合わせ
選択式で迷いやすいのは、どちらも悪くない2つの選択肢が残ったときです。よくある組み合わせと、見分けるときの問いをまとめます。
| 残った2つ | 見分けるときの問い |
|---|---|
| 自分で対応する/部下に任せる | 自分にしかできないこと(謝罪の場への同席、上への説明、人事の判断)か |
| すぐ動く/確かめてから動く | すぐに止めないと広がる危険(安全、情報の漏れ)があるか |
| 相手に返事をする/周りに指示を出す | 両方を含む選択肢はないか。片方だけなら、案件の中心はどちらか |
| 応急の手当て/再発の防止 | 手当てをしないと被害が続くか。続くなら手当てが先 |
すぐ動くか、確かめてから動くかで迷ったときは、危険の大きさで決めます。けがや情報の漏れのように、待つ間に被害が広がるものは、確かめる前に止める手を打つ選択肢が強くなります。そうでなければ、確かめてから判断する選択肢を選びます。
選択肢の言葉に出やすい手がかり
選択肢の文には、評価の考え方に照らして弱く見えやすい言葉が混ざることがあります。次のような言葉を見たら、その選択肢を一度疑ってみます。
- 「直ちに処分する」「厳しく叱る」:事実を確かめる前に結論を出していないか
- 「すべて自分で」「自ら対応する」:任せられることまで抱えていないか
- 「様子を見る」「次の会議で」:急ぐべき危険を後回しにしていないか
- 「担当者に任せる」で終わる:期限や報告の受け方が抜けていないか
逆に、「経緯を確かめ」「〇日までに報告させ」「あわせて」のような言葉は、事実の確認、期限、広がりへの手当てがそろっている手がかりになります。ただし、言葉だけで決めつけず、案件の中身と照らして選びます。
時間配分
選択式の時間配分では、迷う時間を区切ることが中心になります。
- 最初に、問いの数と持ち時間から、1問あたりの目安を出しておく
- 目安を過ぎたら、いったん一番近いと思う選択肢に印を付けて先に進む
- 最後に残った時間で、印を付けた問いだけを見直す
記述式と同じく、資料や案件の全体を先に見ておく形の試験もあります。後の案件で前提が変わることがあるので、案件の束が先に配られる形なら、最初にざっと全体を見ます。
Web の画面で受ける場合は、前の問いに戻れない作りのこともあります。戻れるかどうかは、最初の説明で確かめます。
架空の設問での練習
次は、説明のための架空の設問です。
場面:あなたは路線バスの営業所の運行課長です。夜の運行の主任から「昨夜、運転士の1人が、出庫の前に決められている車両の点検の一部を飛ばして出ていた。運行に支障はなかった」とメールが届きました。最も適切な対応はどれですか。
- A:運転士を呼び、規則の違反として厳しく注意する
- B:主任に、経緯と、点検を飛ばした理由を今日中に確かめて報告するよう指示する。あわせて、今朝の出庫分から点検の記録が全員そろっているかを、始業前に確かめさせる
- C:支障がなかったので、次の安全会議の議題に入れる
- D:自分が今夜の出庫に立ち会い、様子を見て判断する
物差しに照らすと、次のように読めます。
- A:事実を確かめる前に注意している。理由によっては、出庫の時間の組み方に無理があるのかもしれない
- B:事実の確認を任せ、期限を付け、ほかの運転士への広がりも止めている
- C:安全に関わる案件を後回しにしている
- D:自分で抱え込んでいる。現場を見ること自体は悪くないが、すぐに止めるべき危険への手当てがない
この設問では、Bが最も多くの物差しを満たします。ただ、実際の試験では、選択肢の違いがもっと細かいこともあります。大切なのは、なぜその選択肢を選んだかを、自分の言葉で一言言えるようにしておくことです。
選択式でも記述の練習が役に立つ理由
選択式の試験を受ける人でも、記述の練習は無駄になりません。自分で指示を書いたことがあると、選択肢の中の「期限がない」「理由がない」といった抜けに気づきやすくなります。
案件の優先順位の付け方は、案件処理演習の優先順位で、指示の書き方は案件処理演習で伝わる指示文で説明しています。
記述の答えから、選択肢を作る練習
選択式の練習問題は手に入りにくいものです。代わりに、自分が記述式で書いた答えを材料にして、選択肢を作る練習ができます。
- 記述式で1件を書く
- その答えから、期限を消したもの、理由を消したもの、自分で抱えるものを作る
- 4つを並べ、どれが一番弱いかを、物差しのどれに当たるかで説明する
作った本人は答えを知っているので、選ぶ練習にはなりません。ただ、選択肢がどう作られているかが見えてくるので、本番で選択肢の違いに気づく速さが上がります。
一人で確かめるときの限界
自分で選択肢を作ると、正解を知ったうえで選ぶことになり、選ぶ練習にはなりにくいものです。自分の判断にどんな抜けがあるかを、外の目で確かめる機会があると、選択肢を見分ける目にもつながります。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、案件処理演習の1案件を5分で1回練習できます。書き終えると評価票が出て、観点ごとの評価と、根拠になった自分の記述を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。演習は記述式ですが、選ぶ前に自分ならどう書くかを考える練習として使えます。
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