昇格試験の案内に「案件処理」と書かれていて、どんな試験か分からない。そういう人に向けて、形式の全体像を説明します。

この記事では、形式の一般的な説明、昇格試験で使われる理由、評価される観点、準備の進め方を順にまとめます。特定の会社や研修の問題は扱いません。

※この記事に出てくる案件の例は、説明のために作った架空のものです。

案件処理演習とは(一般的な説明)

案件処理演習は、架空の職場の役職者になりきり、たまっている案件を時間内に処理する演習です。いわゆるインバスケット形式の試験も、この種類に入ります。

典型的な設定は、次のようなものです。

  • あなたは、今日付けで営業所長(課長、店長など)に着任した
  • 前任者は急に異動し、引き継ぎはない
  • 机の上(受信箱)に、メール、メモ、報告書が20件ほどたまっている
  • 明日から出張で、数日は連絡が取れない

受験者は、1件ずつ「誰に、何を、いつまでに、どうするか」を書いていきます。返信の文面を書く形式もあれば、判断と指示を箇条書きにする形式もあります。

昇格試験で使われる理由

面接や論文は、本人が準備してきた言葉を聞く試験です。案件処理演習は、初めて見る状況で、実際にどう動くかを見る試験です。ここが大きな違いです。

管理職の仕事は、限られた時間で、たくさんの用件に優先順位を付け、人に任せ、判断することの連続です。案件処理演習は、その日常を小さく再現したものと考えると分かりやすくなります。

また、全員が同じ案件を同じ時間で処理するので、受験者どうしを同じ物差しで比べやすい、という面もあると考えられます(推測)。

試験時間と案件数の目安

公開されている説明では、20件前後を60〜120分で処理する形がよく見られます。ただし、時間と件数は会社によって違います。どの形でも、1件あたりに使える時間は数分ほどです。

項目 よく見られる形 確かめること
時間 60〜120分 自分の試験の時間
案件数 20件前後 全件を処理する前提か
書き方 手書き、またはパソコン入力 本番と同じ方式で練習できるか
答えの形 自由記述、または様式に記入 優先順位の番号を振る欄があるか

全件を丁寧に書き切るのは、多くの場合むずかしい作りです。どの案件に時間を使い、どれを短く済ませるかを決めることも、試験の一部になっています。

記述式と選択式

案件処理演習には、大きく分けて記述式と選択式があります。

  • 記述式:判断と指示を自分の言葉で書く。何を書いたかで、行動と考えの筋道が評価される
  • 選択式:案件ごとに、用意された対応の中から選ぶ。Web で受ける形もある

記述式は、書いた量より、書いた中身(判断の理由、指示の具体さ)で差がつきます。選択式は、選ぶ理由を自分の中で言葉にしておくと、迷ったときの決め手になります。どちらの形式かは、受験の案内で確かめます。

評価される観点

会社によって項目の呼び方はさまざまです。答案のどこを見られるかで整理すると、次の7つに分けられます。

観点 答えの中で見られること
問題を見抜く 件名に惑わされず、中身から重大さをつかんでいるか
判断する 先送りせず、期限までに決めているか。理由が書いてあるか
任せる 部下や関係部署に、方向と期限を示して任せているか
つなげる 同じ原因から出た案件をまとめて手を打っているか
人に配慮する 報告者へのねぎらい、相手への謝罪が入っているか
リスクを外さない 安全、法令、情報管理に関わる案件を軽く扱っていないか
先を見る 応急の手当てだけでなく、再発防止まで書いているか

この形式では、答案が評価の材料のすべてです。「分かっていたが書かなかった」行動は、採点する人には届きません。観点ごとに答案のどこを見られるかは、案件処理演習で評価される観点でさらに細かく取り上げています。

架空の例:1件の答えの差

スポーツクラブの支配人として受ける設定で、次の案件があったとします。

件名:ご報告 本文:昨日の閉館後の見回りで、更衣室の床の滑り止めが一部はがれていました。とりあえずその場所に張り紙をしています。

よくある答えは「修理の手配をお願いします」です。評価する側から見ると、方向は合っていますが、けがを防ぐ手当ての判断も、期限も、ほかの場所への目配りもありません。

直すなら、次の要素を足します。今日の開館までに、その場所を通れないように囲うと決める。ほかの更衣室や浴室の床も今日中に点検するよう、施設の担当に指示する。修理の見積もりは明日の夕方までに受ける。見つけて知らせてくれた担当者に一言ねぎらう。床や設備に関わる別の案件があれば、まとめて扱う。

1件ごとの書き方の型と、全件を回す時間の使い方は、案件処理演習の進め方にまとめています。

準備の進め方

  1. 形式を確かめる:時間、件数、手書きかパソコンか、選択式か記述式か
  2. 1件の型を覚える:誰が、何を、いつまでに、どう確かめるか。理由を1文
  3. 優先順位の付け方を決める:緊急度と重要度で大きく分ける。細かな順番より、大きなずれを防ぐ
  4. 時間を計って解く:最初の1〜2割で全件に目を通し、残りで書く
  5. 観点で見直す:上の表の観点ごとに、自分の答えに足りないものを書き出す

練習の1回は、次のように回すと、解いた後に何を直すかがはっきりします。

  • 解く前に、今回意識する観点を1つ決めて答案の上に書く
  • 時間を計って解き、時間切れでも途中で止める
  • 終わったら、観点の表を見ながら、足りない行動を赤で書き足す
  • 書き足した行動のうち、次の回でも抜けそうなものを1つ選ぶ

優先順位の考え方は「グループ分け」で考える優先順位、短く済ませてよい案件の見分け方は「処理しなくてよい案件」と「急がない至急」を見分けるにまとめました。

よくある思い込み

初めて受ける人が持ちやすい思い込みを、3つ挙げます。

  • 「正しい答えが一つある」:案件処理演習は、正解を当てる試験ではありません。同じ案件でも、判断の理由と手順が筋の通ったものであれば、違う答えが評価されることがあると考えられます(推測)。
  • 「全件を処理しないと点にならない」:全件を丁寧に書き切ることより、重要な案件に判断を残すことが大事です。重要でない案件は、1行で済ませてかまいません。
  • 「業界の知識がないと解けない」:架空の設定には、知らない業界の用語が出ることがあります。判断に必要なのは用語の意味より、誰に何をさせるか、何を確かめるかです。
  • 「長く書くほど評価が上がる」:同じことを丁寧に言い換えても、行動は増えません。重い案件は詳しく、軽い案件は短く、と書く量に差を付けること自体が、判断を示すことになります。

役職によって変わる書き方

同じ形式でも、設定された役職によって、答えに求められる中身は変わります。目安を示します。

設定の役職 書き方の中心 気をつけたい点
主任・リーダー 自分で動くことと、上司に上げることの線引き 何でも上に上げると、判断していないように見える
係長 係員に任せ、期限と報告の受け方を決める 自分で片付ける答えが続くと、係を動かす役割が伝わらない
課長・所長 方針を示し、係長や関係部署を動かす。再発を防ぐ仕組みを作る 目の前の処理だけで、課全体の手当てがない

今の自分の職位の感覚で書くと、設定とずれることがあります。設定資料の役職を、書き始める前にもう一度確かめます。

当日の進み方の一例

案件処理演習の当日は、おおむね次のように進むことが多いと考えられます(推測)。

  1. 説明と注意事項(時間、回答の様式、使ってよいもの)
  2. 設定資料と案件の束が配られる、または画面に表示される
  3. 時間内に処理する。途中で別の演習に呼ばれる形もある
  4. 回収。その後に、答えの理由を聞く面接が続くこともある

途中で呼ばれる形や、後で面接がある形は、会社によって違います。案内に書かれていなければ、人事に確かめておくと当日に慌てずに済みます。

一人で確かめるときの限界

案件処理演習は、読んで理解するより、時間を計って一度解いてみるほうが、形式がつかみやすくなります。最初の1回は、思ったより書けないものです。ただ、書いた答えのどこが評価に届き、どこが届いていないかは、自分で読み返すだけでは判断しにくい点が残ります。

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