メールやメモの束を、役職者として時間内に処理する演習があります。いわゆるインバスケット形式の演習です。この演習では、案件を1件ずつ片付けていくと、案件どうしのつながりを見落としやすくなります。

当サイトが2026年10月に分類した、対策本の購入者のレビュー206件では、この演習の解き方・優先順位・時間配分の説明を求める声が46件ありました。件数は検索語の選び方に左右されるため、要望の傾向をつかむ目安として扱ってください。

この記事では、関連する案件を見つける読み方と、まとめて処理する書き方を説明します。

※この記事に出てくる会社、人物、案件は、説明のために作った架空のものです。

関連する案件が仕込まれる理由

案件処理演習の案件は、ばらばらに見えて、同じ原因から出ていることがあります。たとえば、人が足りない、残業が増える、ミスが増える、苦情が来る、という流れです。

評価する側が見たいのは、1件ごとの処理の上手さだけではありません。目の前の症状の奥にある原因に気づけるか、という点も見られると考えられます(推測)。管理職の仕事は、同じ問題が繰り返されないように手を打つことだからです。

1件ずつ別々に処理した答案は、どれも正しく見えても、原因に手が届いていないことがあります。逆に、関連に気づいて「案件3と合わせて対応する」と書ければ、問題を広く見ていることが伝わります。

人・日付・数字で線を引く

関連を見つけるには、案件の中身を理解する前に、目印になる言葉を拾います。目印は次の3つです。

目印 拾う言葉の例 見つかりやすい関連
人・部署 同じ部下、同じ取引先、同じ係 同じ人に仕事や不満が集まっている
日付・時間 同じ日、同じ週、締切の前後 予定の重なり、締切の連鎖
数字・物 同じ商品、同じ設備、同じ件数 1つの出来事が複数の案件に出ている

手順1:最初の読み通しで、目印に印を付ける

最初に全件に目を通すとき、各案件の横に、目印の言葉を短く書き出します。人の名前より、役割や出来事で書くと照合しやすくなります。「販売担当」「15日」「定期便」のような形です。

手順2:同じ目印が出てきた案件を線で結ぶ

書き出した目印を見比べ、同じ言葉が2回以上出てきた案件を線で結びます。紙なら番号を丸で囲んで線を引き、画面なら「3=7=12」のようにメモします。

手順3:線で結んだ組ごとに「元はどれか」を決める

結んだ組の中で、どの案件が原因で、どれが結果かを考えます。原因に当たる案件を「元」、結果に当たる案件を「症状」と呼んで分けておくと、書き方が決めやすくなります。

似た言葉にも注意します。「会議」「打合せ」「ミーティング」のように、別の言葉で同じ予定を指していることがあります。日付、参加者、目的の3つで照合します。

矛盾する情報の扱い

関連する案件の中には、互いに食い違う情報が入っていることがあります。ある部下は「先方の了解は取れている」と書き、別の部下は「先方はまだ迷っている」と書いている、といった形です。

食い違いを見つけたときは、どちらかを信じて決めつけないようにします。答案には、次の3つを書きます。

  1. どの案件と、どの案件で、何が食い違っているか
  2. 誰に、何を確かめさせるか
  3. 確かめるまでの間、どう動くか(保留する、両方に備える、など)

資料にない前提で決めつけると、判断の根拠が弱くなります。わからない点は、確かめる指示として書けば、考えたことが評価する側に伝わります。

関連案件をまとめて処理する書き方

関連に気づいたら、それを答案に書きます。頭の中で気づいていても、書かなければ評価する側には見えません。

書き方は、組の中の「元」の案件にまとめて書く形が使いやすいです。

  • 元の案件:原因への手当てを書く。「案件5・9と同じ原因と考える」と明記し、誰に、何を、いつまでにさせるかを書く
  • 症状の案件:目の前の手当てを短く書き、「根本の対応は案件2で指示した」と元の案件を指す

元の案件には中長期の打ち手を、症状の案件には応急の打ち手を書く、と分けると、答案の中で役割がぶつかりません。同じ指示を何度も書く必要もなくなるので、時間の節約にもなります。

架空の例での確認

場面:自動車教習所の教務課長として2年目の春です。今日は月曜で、机に次の6件が届いていました。

案件 中身(要約)
1 教習生の保護者から、技能教習の予約が3週間先まで取れないという苦情
2 整備の担当から、教習車1台が不調で修理に出ており、戻りは来月の半ばになりそうだという報告
3 受付の主任から、夕方の時間帯の空き待ちの電話が増え、受付の残業が続いているという相談
4 営業の若手から、近くの会社と結ぶ社員向け講習の、初回の打合せを水曜にしたいという相談
5 近くの高校から、春休みに卒業予定の生徒をまとめて受け入れてほしいという依頼
6 本社から、今期の入所者数の目標の確認

目印を拾う

  • 案件1・3・5に「予約」や「受け入れの枠」が出てくる
  • 案件2は「教習車」の話だが、車の台数は予約の枠に直結する
  • 案件4と5は、どちらも外の団体から新しく頼まれた話

線を引いた結果

案件2(車が1台足りない)が元で、案件1(予約が取れない)と案件3(空き待ちの電話と残業)は、そこから出た症状と考えられます。案件5(まとまった受け入れ)は、受ければ枠がさらに足りなくなるので、同じ組に入れて判断します。

案件4は、予約の組とは別です。ただし、社員向け講習も車と指導員の時間を使うので、案件2の手当てが見えるまでは、日程を約束しないように一言添えます。

答案の形

  • 案件2(元):整備の担当に、代わりの車を借りられるか、修理を早められるかを水曜までに確かめさせる。車1台が欠ける間の時間割の組み直しは、教務の係長に頼む。「案件1・3・5と同じ原因と考える」と書く
  • 案件1(症状):保護者にお詫びし、予約が取りにくい理由と、空きが出たときの連絡の方法を伝える。「根本の対応は案件2で指示」と書く
  • 案件3(症状):受付の負担を知ったと返し、「案件2の時間割の組み直しで、空き待ちを減らす」と書く。当面の電話の受け方は主任と決める
  • 案件5:車の手当てが見えるまで、受け入れの人数と時期の返事を待ってもらう。いつまでに返事をするかは伝える

1件ずつ処理すると、案件1にはお詫びだけ、案件5には「お引き受けします」と返してしまいがちです。束で読むと、案件5を受けると案件1の苦情がさらに増える、という関係が見えてきます。

時間が足りないときの割り切り方

関連を探すことに時間をかけすぎると、書く時間が減ります。読み通しの段階で線を引くのは、目印が2回以上出てきた組だけで十分です。

全部の関連を見つける必要はない、と考えてかまいません。見落としが痛いのは、急ぐ案件どうしの関連です。急がない案件どうしの関連は、気づいたら一言書く程度で足ります。

書く途中で新しい関連に気づいたら、すでに書いた答案を消して書き直す必要はありません。後の案件に「案件4とも関係する。案件4の指示に、この点を加える」と書き足せば、気づいたことは伝わります。

最後の数件に、それまでの前提をくつがえす案件が置かれていることもあります。全件に目を通してから書き始める理由の一つです。

一人で練習するときの手順

関連を見つける力は、件名と差出人だけでも練習できます。

  1. 案件の束の件名と差出人だけを見て、関連しそうな組を予想する
  2. 本文を読み、人・日付・数字の目印で組を確かめる
  3. 予想と違った組に印を付け、何を読み落としていたかを一言書く

印の付いた組が、自分の読み落としの癖です。業種が違う設定でも、目印の拾い方は同じです。

案件の束が実際にどんな形で届くかを先に見ておきたい人は、案件処理演習の例題で、架空の5案件を使って形式と答え方を確かめられます。関連を見つける練習の素材にもなります。

一人で確かめるときの限界

自分で作った案件では、どれとどれがつながっているかを知ったうえで読むことになります。初めて読む案件の束で関連に気づけるかを確かめるには、他人が作った案件が要ります。

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