昇格試験で、メールやメモの束を時間内に処理する演習があると知らされた人に向けた記事です。いわゆるインバスケット形式のもので、昇格パスでは「案件処理演習」と呼んでいます。
当サイトで読んだ知恵袋の質問76件のうち、この形式に触れたものは8件でした(2026年10月)。直前に知らされて時間がない、何を練習すればよいか分からない、という声が中心です。件数は検索語の選び方に左右されるので、よくある悩みの種類として見てください。
この記事では、形式をつかむための小さな例題を1つ用意しました。本番は20件前後のことが多いのですが、ここでは5件に絞っています。
この記事の例題について(自作・架空)
例題の会社、人物、案件は、すべて説明のために作った架空のものです。特定の会社の試験や、市販の問題集を再現したものではありません。
解き方の手順は次のとおりです。
- 下の「設定資料」を読む(2分)
- 5つの案件にすべて目を通し、優先度を付ける(3分)
- 優先度の高いものから、1件ずつ答えを書く(15分)
時間を計って、紙かメモ帳に書いてから、後半の解説を読んでください。読むだけより、一度書いてから比べるほうが、自分の抜けに気づきやすくなります。
設定資料(架空の会社と立場)
- あなた:商業印刷の会社で、制作課の課長を務めて半年になる
- 今日:10月9日(金)の17時30分。机の上に、未処理の案件が5件ある
- 予定:10月12日(月)は終日、顧客の新製品発表会の会場で、印刷物の設営に立ち会う。会場では電話に出にくく、メールは昼と夜に確かめられる
- 部下:主任のCさん(入社12年、課の取りまとめ役)、Dさん(入社4年、顧客の窓口担当)、Eさん(入社2年、組版担当)
- 上司:制作部長のFさん。月曜は終日社内にいる
5つの案件
案件1(差出人:Dさん、件名:ご報告) 先週納めた会社案内のパンフレット3,000部で、裏表紙の電話番号が1桁違っていると、お客さまの広報の方から電話がありました。お客さまは配布を止めています。校了の記録は、まだ見返していません。
案件2(差出人:総務課、件名:【至急】懇親会の出欠) 来月の部の懇親会の出欠を、本日中にご返信ください。
案件3(差出人:製本の協力会社、件名:打合せ日のご相談) 来月の大口のご注文の加工方法を決めたく、12日(月)の10時に、御社で打合せをお願いできないでしょうか。
案件4(差出人:Eさん、件名:ご相談) 先月から土曜の出勤が続いていて、家のことと両立するのが難しくなってきました。今の分担のことで、一度話を聞いていただけますか。
案件5(差出人:F部長、件名:月曜の部会) 12日(月)の夕方の部会で、制作課の今期の見通しを報告してほしい。資料は月曜の正午までに送ってください。
解答の書き方の例と、評価する側の見え方
まず優先度を付ける
5件をざっと読むと、次のように分けられます。ここでの分け方は一例で、唯一の正解ではありません。
| 優先度 | 案件 | 理由 |
|---|---|---|
| 今日中に自分が動く | 1、4 | 1はお客さまの損失と会社の信用に関わる。4は部下の働き方に関わる |
| 今日中に人に任せる・返す | 3、5 | 月曜は会場に出るため、段取りを今日のうちに決めておきたい |
| 短く済ませる | 2 | 件名に「至急」とあるが、中身は出欠の返事だけ |
件名の「至急」は、本当の急ぎとは限りません。中身で判断します。
案件1:よくある答えと直し方
よくある答えは、次のようなものです。
Dさんへ:原因を調べて、結果を教えてください。
評価する側から見ると、方向は合っていますが、判断と期限がありません。お客さまへの最初の連絡を誰がするのか、同じ誤りがほかの印刷物にないか、という先の段取りも見えません。直すと、次のようになります。
判断:刷り直しと費用の扱いは、誤りがどの段階で入ったかを確かめてから決める。お客さまへの最初のお詫びは、今日のうちに自分がする。 指示:Dさんは本日18時30分までに、校了の記録とデータの履歴を見返す。Cさんは、同じデータを使った名刺や封筒などの印刷物がないかを、本日中に洗い出す。 報告:二人の結果は、本日19時に電話で受ける。お客さまには、刷り直しの案を月曜の昼までにお伝えすると話す。 上司へ:F部長に今日のうちに一報を入れる(案件5の資料にも入れる)。 一言:Dさん、すぐに知らせてくれてありがとう。
判断、指示、期限、報告の受け方、上司への報告、関連する案件、報告者への一言が入っています。原因が分からない段階で、責任の所在を決めつけていない点も大事です。
案件2:一行で済ませる
総務課へ:出席します(出欠のみ回答)。
処理の要らない案件に長く書くと、ほかの案件の時間が減ります。書くのは一行で十分です。
案件4:部下の相談は、会う日を決める
Eさんへ:知らせてくれてありがとう。今日このあと15分、話を聞かせてください。難しければ、13日(火)の朝に時間を取ります。 自分の動き:課の土曜の出勤の状況を、Cさんと一緒に来週中に洗い出す。
ここで「もう少し頑張ってほしい」と励ますだけの答えや、事情を聞く前に分担を変えると決める答えは、部下への配慮や問題の捉え方が弱く見えやすくなります。家庭の事情や体調が絡みそうなときは、人事の窓口や会社の制度につなぐことも書き添えます。
案件3と案件5は、このあとの「関連する案件」で扱います。
関連する案件の見つけ方
5件の中には、つながっている案件が2組あります。
- 案件3と月曜の予定:打合せの希望は12日(月)の10時で、自分が会場にいる時間と重なります。Cさんに出てもらうか、別の日を提案するかを決めます。
- 案件1と案件5:月曜の部会の報告に、パンフレットの件を入れる必要があります。F部長が部会の場で初めて知る、という形は避けたいところです。
案件3と案件5の答えには、たとえば次のように書きます。
案件3:12日は終日外に出るため、Cさんに出席を頼む。加工方法の候補と予算の上限は、今日中にCさんへ渡す。決定は13日(火)に自分が行うと先方に伝えてもらう。 案件5:資料はCさんと分担し、日曜までに下書きを作る。パンフレットの件の経過も1枚入れる。部会に出られるかどうかを、F部長に今日確かめる。
この例題では、人と日付が重なる案件を結ぶと、つながりが見えてきます。答えの中では「案件1と関連」と一言添えれば、評価する側にも伝わります。束で読む考え方は、案件処理演習の「関連する案件」の見つけ方で掘り下げています。進め方の全体は、案件処理演習の進め方にまとめました。
時間が足りなくなったときの書き方
本番では、全件を丁寧に書き切れないこともあります。そのときに避けたいのは、重い案件が空欄のまま終わることです。
残り時間が少ないときは、重い案件から順に、次の3点だけを書きます。
- どうするか(判断の一文)
- 誰に任せるか、いつまでか
- 結果をいつ受けるか
この例題なら、案件1に「お客さまへのお詫びは今日自分がする。原因はDさんが今日中に確かめ、19時に報告を受ける」と書くだけでも、空欄とは大きく違います。軽い案件の言い回しを整えるより、重い案件に一行でも判断を残すほうを先にします。
自分の答えを見直す5つの問い
書いた答えを、次の5つの問いで見直します。
- 1件ごとに、どうするかを決めているか
- 誰に、何を、いつまでに、が入っているか
- 結果の報告を、いつ、どう受けるかが入っているか
- 関連する案件を、答えの中でつないでいるか
- 処理の要らない案件に、時間をかけすぎていないか
5つとも入っていれば、形はできています。抜けているものが多い問いが、次の練習で意識する点です。
この5つの問いは、評価の観点を答案の点検用に言い換えたものです。観点そのもの(問題発見、判断、計画、組織の活用)は、案件処理演習で評価される観点で一つずつ取り上げています。処理しなくてよい案件の見分け方は、「処理しなくてよい案件」と「急がない至急」を見分けるが参考になります。
続けて練習する方法
例題は、一度解くと答えを覚えてしまいます。2回目以降は、設定を変えて自分で考え直すと練習になります。
- 月曜の会場の立会いがなかったら、案件3の答えはどう変わるか
- 相談してきたのが取りまとめ役のCさんだったら、案件4の答えはどう変わるか
- F部長も月曜に不在だったら、案件1の報告はどうするか
- 自分が課長ではなく係長だったら、案件1で自分がすることと任せることはどう変わるか
設定を1つ変えるだけで、任せる相手や報告の流れが変わります。どこが変わり、どこが変わらないかを書き出すと、型が自分のものになっていきます。
一人で確かめるときの限界
自分の答えを5つの問いで見直すことはできますが、判断の理由が相手に伝わる書き方になっているかは、自分では分かりにくいものです。評価する側の目で読んでもらうと、書いたつもりで抜けている行動が見えやすくなります。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、案件処理演習の1案件を5分で1回練習できます。書き終えると評価票が出て、観点ごとの評価と、根拠になった自分の記述を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。例題で型をつかんだら、時間を計った1件で試してみてください。
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