昇格試験で「ケーススタディ」「事例研究」と呼ばれる形式が出ることがあります。架空の職場の事例を読み、問題点や対策を書く形式です。
当サイトで読んだ体験記のうち、ケーススタディに触れていたのは3件でした(2026年10月)。数は少ないものの、時間が足りなかったという振り返りが、案件処理の演習や択一と並んで見られました。件数は検索語の選び方に左右されるので、傾向の一つとして見てください。
この記事では、設問の読み方と、解答の組み立て方を、架空の事例で説明します。
※この記事に出てくる事例、会社、人物は、説明のために作った架空のものです。
ケーススタディ形式とは
ケーススタディは、1つの事例を深く読んで答える形式です。似た形式との違いを整理します。
| 形式 | 読むもの | 答えるもの |
|---|---|---|
| ケーススタディ | 1つのまとまった事例(数ページのことも) | 問題点、原因、対策を文章で |
| 案件処理演習 | 20件前後のメールやメモ | 1件ごとの処理と指示 |
| 論文 | テーマの一文 | 自分の職場の課題と解決策 |
ケーススタディは、事例の中の事実を根拠に書く点で、論文と違います。自分の職場の話ではなく、与えられた事例の中で考えます。
形式は会社によって違い、設問が1つのこともあれば、「問題点を挙げよ」「原因を述べよ」「対策を述べよ」と分かれていることもあります。書いて出すのではなく、資料を読んで分析し、その場で発表する形をとる会社もあります。発表の形の準備は、分析発表演習の進め方で取り上げています。
設問が求めていることの読み取り
ケーススタディで点を落としやすいのは、設問に正面から答えていないときだと考えられます(推測)。事例を読む前に、設問を先に読みます。
設問を読むときは、次の3つに線を引きます。
- 立場:「あなたが課長なら」「新任の係長として」など、誰として答えるか
- 問われていること:問題点か、原因か、対策か。いくつ挙げるか
- 条件:字数、「優先順位をつけて」「理由とともに」など
たとえば「あなたが課長として、真っ先に手を付ける問題を1つ挙げ、その理由と対策を述べよ」なら、答えるのは「問題1つ」「理由」「対策」の3つです。問題を5つ並べても、設問には答えていません。
立場にも注意します。「係長として」と書かれていれば、予算や人事の決定は上に相談する形で書きます。「課長として」なら、課の方針や人の配置まで自分で決めてよい範囲が広がります。
事例から問題を拾う手順
設問を読んだら、事例を読みます。読みながら、次の手順で問題を拾います。
- 数字に印を付ける:売上、件数、期限、人数、前年との比較
- 人の発言に印を付ける:不満、困りごと、食い違い
- 表に出ている現象と、その裏の原因を分ける:たとえば「苦情が増えた」は現象で、その原因は事例の別の場所に書かれていることが多い
- つながりを線で結ぶ:同じ人、同じ時期、同じ取引先が出てくる記述を結ぶ
事例には、判断に関係の薄い情報も混ざっています。全部を使おうとせず、設問に関係する事実を選びます。
二人の発言が食い違っているときは、どちらが正しいかを決める前に、両方の言い分が同じ原因を別の側から見ていないかを考えます。食い違いの裏に、仕組みの問題が隠れていることがよくあります。
問題・原因・対策のつなぎ方
解答は、問題、原因、対策が1本の線でつながるように組みます。原因と対策がずれていると、筋道の面で弱く見えやすくなります。
次のような表を、余白に作ってから書きます。
| 問題(現象) | 原因(なぜ) | 対策(誰が・何を・いつまでに) |
|---|---|---|
| 事例の事実から | 事例の事実から、一段深く | 設問の立場で実行できること |
対策を書くときは、次の3つを入れます。
- 応急の手当て:今起きていることへの対応
- 原因への手当て:同じことを起こさない仕組み
- 人を動かす段取り:誰に任せ、いつ報告を受けるか
「意識を高める」「連携を強化する」で終わる対策は、何をするかが見えません。具体的な行動に言いかえます。
架空の事例での練習
事例(要約):あなたは、賃貸住宅の管理会社で、入居者からの連絡を受ける窓口の課長に今月着任しました。水回りや鍵などの不具合の連絡を受けてから、業者が直し終えるまでの日数は、前年の平均5日から8日に延びました。入居者からの苦情も月20件から45件に増えています。窓口のリーダーは「聞く項目が多く、聞き漏れがあると工事の担当から差し戻される」と話します。工事の担当は「連絡の内容が足りず、入居者にかけ直す手間が多い」と言います。窓口の担当者は、この1年で半分が入れ替わりました。
設問:課長として、真っ先に手を付ける問題を1つ挙げ、原因と対策を述べよ(800字)。
よくある答えは、次のような書き出しです。
苦情が増えていることが問題である。担当者の対応力を高めるため、研修を強化する。
評価する側から見ると、苦情の増加という現象は拾えていますが、事例の中の原因(窓口の聞き漏れと差し戻し)とつながっていません。対策の「研修の強化」も、何をするかが見えません。
直すと、筋は次のようになります。
- 問題:直し終えるまでの日数が延び、苦情が増えている
- 原因:窓口での聞き漏れによる差し戻しと、かけ直しの手間。入れ替わった担当者に、聞くべき項目が身についていない
- 対策:最初の電話で聞く項目を絞った確認表を、窓口のリーダーと工事の担当で2週間以内に作る。新しい担当者には、確認表を使った受け答えの練習を、リーダーが1か月かけて行う。差し戻しの件数を週ごとに数え、課長が報告を受ける
対策が原因に対応し、誰が、何を、いつまでに、が入っています。リーダーと工事の担当の両方を作る側に入れているので、二人の食い違いを解く形にもなっています。
設問が分かれているときの書き分け
設問が「問題点」「原因」「対策」に分かれているときは、それぞれの欄に、問われたことだけを書きます。問題点の欄に対策まで書くと、対策の欄で同じことを繰り返すことになり、字数も時間も足りなくなります。
| 欄 | 書くこと | 書かないこと |
|---|---|---|
| 問題点 | 事例の事実と、何が困っているか | 原因の推し量り、対策 |
| 原因 | 事例のどの記述から、なぜそう言えるか | 事例にない思い込み |
| 対策 | 原因ごとの手当て、担当、期限、確かめ方 | 事例の要約の繰り返し |
問題点をいくつも挙げる設問では、重い順に並べ、なぜそれが一番重いのかを一文添えます。並べ方そのものが、判断の材料として読まれます。
字数と時間の配分
60分で800字を書く場合の目安です。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜5分 | 設問を読み、立場・問い・条件に線を引く |
| 5〜20分 | 事例を読み、印を付け、問題・原因・対策の表を作る |
| 20〜52分 | 書く |
| 52〜60分 | 設問に答えているか、対策が原因に対応しているかを見直す |
字数の配分は、問題と原因で3〜4割、対策で5〜6割が目安です。事例の要約を長く書くと、対策の字数が足りなくなります。事例は採点する人も読んでいるので、要約は最小限にします。
一般論に流れたときの直し方は、論文で「一般論」と言われたときが参考になります。ケーススタディでも、「事例の中の事実」に戻ることが直し方の基本です。
書き終えた後の点検
見直しの時間には、次の5つを順に確かめます。
- 設問の数(問題は1つか、3つか)と、答えた数が合っているか
- 原因の根拠として、事例の記述を少なくとも1つ引いているか
- 対策の一つ一つが、どの原因に当たるかを言えるか
- 誰が、何を、いつまでに、が入っているか
- 設問の立場で決められないことを、決めたことにしていないか
5つのうち、3は特に抜けやすい点です。対策を書いているうちに、原因と関係のない良い取り組みを足してしまうことがあります。見つけたら、その取り組みは削るか、どの原因に効くのかを一文で書き足します。
一人で確かめるときの限界
ケーススタディの練習材料は手に入りにくく、自分で書いた答えの筋が通っているかも、一人では判断しにくいものです。事例から問題を拾い、誰に何をいつまでに任せるかを書く、という点では、案件処理演習と共通する部分が多くあります。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、案件処理演習の1案件を5分で1回練習できます。書き終えると評価票が出て、観点ごとの評価と、根拠になった自分の記述を確かめられます。
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