生成AIに頼めば、数秒で論文らしい文章ができあがります。昇格・昇任論文の準備に使ってよいのか、使うならどう使えばよいのか、迷う人も多いはずです。
この記事では、AIに任せると起きやすいことと、準備に使ってよい場面、自分で書くべき部分を分けて説明します。
なお、昇格パスの論文の演習でも、AIは本文を書きません。材料の整理では質問をするだけで、骨組みの段階では見出しとのずれを指摘するだけです。この記事の線引きも、同じ考え方に立っています。
※この記事に出てくる職場と例は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。
会社の決まりを先に確かめる
最初に確かめるのは、会社や自治体の決まりです。
- 事前に提出する論文やレポートで、AIの使用について決まりがあるか
- 会社として、業務の情報をAIに入力してよいかの決まりがあるか
- 提出の際に、自分で書いたことを確かめる書面や欄があるか
事前提出の論文で、AIで作った文章をそのまま出すことは、決まりに反するおそれがあります。決まりが明記されていなくても、本人が書いたものとして提出する以上、自分で書くことが前提だと考えるのが自然です。
職場の情報の扱いにも気をつけます。論文の材料には、職場の数字や出来事が入ります。社外のAIに、社名や顧客の情報、社外秘の数字を入力すると、情報の扱いの決まりに反することがあります。入力する前に、会社の決まりを確かめます。
AIに任せると起きること(均質な文章)
AIに論文の本文を書かせると、次のようなことが起きやすいと考えられます(推測)。
- どの職場にも当てはまる文章になる:AIはあなたの職場の事実を知らないので、一般論で埋めた文章になりやすい
- 言い回しがそろいすぎる:同じような言葉や構成の論文が、受験者の間で並ぶことがある
- 自分の言葉で説明できない:面接で論文の中身を聞かれたときに、答えに詰まる
昇格論文は、文章の整い方より、書いた人がその職場で何を見て、何をしようとしているかを読むためのものです。AIの文章は整っている分、その「何を見たか」の部分が空いたまま提出されやすくなります。AIの下書きに似た文が自分の論文に混じっていないかを探すときは、論文で「一般論」と言われたときの見分け方が使えます。
使ってよい場面:材料の整理・論点の確認
一方で、AIを準備の道具として使うことには、役に立つ場面もあります。本文を書かせるのではなく、自分の考えを整理する相手として使います。
| 使い方 | 例 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 論点の洗い出し | 「人材育成のテーマで、考えるべき観点を挙げて」 | 出てきた観点を、自分の職場に当てはめるのは自分 |
| 問いを立ててもらう | 「私の材料に、面接官ならどんな質問をするか」 | 答えは自分で考える |
| 用語の確認 | 言葉の意味や、似た言葉の違いを確かめる | 間違いが混じることがあるので、元の資料でも確かめる |
| 構成の点検 | 自分で書いた骨組みのメモを見せ、抜けている要素を聞く | 本文を書き直させない |
どの使い方でも、AIの答えをそのまま使わず、自分の職場の事実で確かめ直すことが前提です。AIの答えには、事実と違うことや、もっともらしいが根拠のないことが混じることがあります。
職場の情報を入力しなくても、多くの使い方はできます。「ある製造業の職場で」のように、ぼかした形で聞けば十分です。
自分で書く部分
論文のうち、自分で書く部分ははっきりしています。
- 職場の事実:どの仕事で、何が、どれくらい起きているか
- 原因の掘り下げ:なぜそうなっているのか、自分の見立て
- 打ち手:自分が、誰に、何を、いつまでにするか
- 効果の見込み:何で確かめるか
- 管理職としての考え:なぜそれに取り組むのか
この5つは、あなたの職場とあなた自身からしか出てきません。AIが代わりに書けるのは、この5つを抜いた、どの職場にも当てはまる文章です。
5つの部分のもとになる材料は、AIに聞く前に、自分の手で書き出しておきます。カードと対応表を使った手順は、昇任・昇格論文は「書く前」で決まるが順を追って扱っています。
AIに聞く前の、情報の伏せ方
AIに相談するときは、職場の情報をそのまま入力しないことが基本です。伏せ方の目安を挙げます。
| 元の情報 | 伏せた形の例 |
|---|---|
| 会社名・部署名 | 「ある製造業の品質管理の係」 |
| 取引先や住民の名前 | 「主な取引先」「窓口に来る住民」 |
| 部下や同僚の名前 | 「異動して半年の係員」など、役割で書く |
| 社外秘の数字 | 割合や増減の向き(「前の年より2割ほど多い」) |
伏せた形でも、論点の洗い出しや骨組みの点検には十分です。伏せ方に迷う情報は、入力しないほうを選びます。
本番は手書き・時間制限であることが多い
当日にテーマが出る論文では、手書きか、パソコンでも外の道具が使えない形で、時間を区切って書くことが多いと考えられます(推測)。その場合、本番でAIは使えません。
準備の段階でAIに書かせた文章に頼っていると、本番で自分の力で書く練習が足りなくなります。とくに、次の力は、時間を計って自分で書く回数を重ねるほど身に付きます。
- 時間内に、構成のメモを作る力
- 職場の事実を思い出して、文に入れる力
- 字数の中で、言いたいことを絞る力
AIで作った見本を覚えて本番で再現しようとすると、テーマが少し違うだけで使えなくなります。覚えるなら、文章ではなく、職場の材料と骨組みの作り方です。
添削の受け方
書いた論文を見てもらうときも、AIを使う場合と、人に頼む場合で、受け方を分けます。
AIに見てもらう場合は、直した文章を出させるのではなく、「わかりにくい所」「根拠が足りない所」を指摘させる形にします。指摘を受けて、直すのは自分です。AIに見せる前に、論文の見直しチェックリストで自分で点検しておくと、AIの指摘のうち本当に直すべきものを選びやすくなります。
人に見てもらう場合は、上司や先輩、外部の添削などがあります。社内の人に見せにくい内容もあるので、誰に何を見せるかは、自分で決めます。
どちらの場合も、「代わりに書いてもらう」のではなく、「自分の書いたものの弱い所を知る」ために使います。
AIを相手に面接の練習をする場合
論文の中身は、面接で深掘りされることがあります。AIに「この論文を読んだ面接官として、質問を3つして」と頼み、答える練習に使う方法もあります。
この場合も、答えは自分で考えます。AIの質問が的外れなこともあるので、実際の面接で聞かれそうなものを自分で選びます。論文と同じく、職場の情報を入力しすぎないように気をつけます。
架空の例:AIの使い方の線引き
場面:通信会社の営業部で主任をしているQさんは、課長代理の論文の準備にAIを使おうと考えました。
Qさんが決めた線引きは、次のとおりです。
- 使う:テーマごとに考えるべき観点を挙げさせる。自分の骨組みのメモに、抜けている要素がないかを聞く
- 使わない:本文を書かせる。職場の数字や取引先の名前を入力する
- 自分でやる:職場の事実を集め、骨組みを作り、時間を計って手で書く
Qさんは、AIに挙げてもらった観点のうち、自分の職場に当てはまるものを3つ選び、それぞれに職場の事実を書き出しました。本文は、毎回90分を計って、手で書きました。
AIの文章に限らず、市販の本やネットの例文を使うときの注意は、昇格論文の例文を探す前にで説明しています。論文のテーマとしてAIの活用が出たときの書き方は、昇格論文のテーマ「DX・生成AIの活用」にまとめました。
使い方の点検
AIを使った後に、次の問いで自分の使い方を振り返ります。
- 論文の中に、AIの答えから写した文が残っていないか
- 職場の事実は、すべて自分が書き出したものか
- 職場の情報を、伏せずに入力していないか
- AIの指摘を、自分の判断で取捨選択したか
- 時間を計って、自分の手で最後まで書く練習をしたか
1つでも気になる点があれば、その部分は自分で書き直します。
書いたものを見てもらうには
AIの指摘は、どの観点で読んだものかがはっきりしないことがあります。論文の採点の観点に沿って、自分の書いたどの部分が足りないのかを確かめるのは、一人では難しいところです。
昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。
本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。
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