部下同士の仲がこじれると、仕事の受け渡しが止まり、周りの人も気をつかうようになります。上司としては早く収めたいところですが、急いで二人を同じ席に座らせると、かえってこじれることがあります。
この記事では、対立している部下と、片方ずつ面談するところから始める手順を説明します。昇格試験の面談演習や案件処理演習でも、部下同士の対立はよく出る題材です。
※この記事に出てくる職場と会話は、説明のために作った架空のものです。
対立の面談で見られること
対立の場面で上司に求められるのは、どちらが正しいかを決めることより、二人が仕事を続けられる形を作ることだと考えられます(推測)。
演習で対立の場面が出たとき、受験者がつまずきやすいのは、目の前の部下の話に引っぱられることです。振り返りでは、次の点を確かめます(推測)。
- どちらか一方の話だけで判断していないか
- 相手の悪口に乗らず、かといって頭ごなしに否定していないか
- 事実と、本人の受け止め方を分けて聞いているか
- 仕事の進め方の問題として、具体的な次の一歩を決めているか
- その後も見ていく姿勢を示しているか
ここでは、対立の場面に絞って説明します。面談全般の流れを先に押さえたい人は、部下面談の練習から読むと、この記事の手順が位置づけやすくなります。
片方ずつ聞く理由
最初は、一人ずつ話を聞きます。理由は3つあります。
- 本音が出やすい:相手の前では言えないことがあります
- 言い合いを避けられる:同じ席で話すと、相手の言葉への反論が始まります
- 上司が公平に聞いていると伝わる:どちらの話も同じように聞く姿を見せられます
聞く順番にも気を配ります。先に相談に来た人から聞くのが自然ですが、もう一人にも同じ日のうちに声をかけます。後回しにされたと感じると、「上司は向こうの味方だ」と受け取られやすいからです。
二人に同じことを伝えます。「二人の話を、それぞれ聞かせてほしい。どちらが悪いかを決めるためではなく、仕事を進めやすくするためです」。
事実と受け止め方を分ける
対立の話には、事実と、本人の受け止め方が混ざっています。分けて聞くと、問題の形が見えてきます。
| 分けること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 何が起きたか(事実) | 「最後にぶつかったのは、いつの、どの仕事のときですか」 |
| どう感じたか(受け止め方) | 「そのやりとりを、どう受け止めましたか」 |
| 仕事への影響 | 「そのことで、仕事のどこが進めにくくなっていますか」 |
| 本人の望み | 「どうなれば、仕事がしやすくなりそうですか」 |
相手の悪口が出てきたときは、「そう感じているんですね」と受け止めるだけにします。「たしかにあの人はそういうところがある」と同意すると、後でもう一人と話すときに、上司の言葉が伝わってしまうことがあります。
二人の話を聞くと、事実の部分が食い違うことがあります。その場でどちらが正しいかを決めず、記録やほかの人の話で確かめられる部分を探します。
上司が判断すること・しないこと
対立の中身によって、上司の動き方は変わります。
上司が判断すること
- 仕事の分担や、受け渡しの手順のあいまいさが原因なら、上司が決め直す
- 会議の進め方や、連絡の手段など、仕事のやり方の決まりを作る
上司が一人で判断しないこと
- ハラスメントの疑いがある場合:会社の窓口と手順につなぎます。進め方はハラスメントの相談を受けた面談で説明しています
- 処分や配置の変更:人事の部門に相談してから決めます
対立の多くは、性格の合わなさに見えて、実は仕事の分担や手順のあいまいさから生まれていることがあります(推測)。性格を直そうとするより、仕事の形を直すほうが、上司の手が届きます。
三者で話す場の作り方
二人の話を聞き、仕事の上の原因が見えてきたら、三人で話す場を作ります。ただし、どちらかが強く嫌がるときは、無理に開きません。
場を作るときは、次の点に気をつけます。
- 目的を最初に言う:「今日は、受け渡しの手順を決めるための話し合いです」
- 過去より、これからの話にする:起きたことの責め合いにしない
- 決まりを先に決める:相手の話をさえぎらない、人ではなく仕事のやり方の話をする
- 上司が書き役になる:決まったことを、その場で書いて見せる
最後に、誰が、何を、いつから変えるかを確かめます。上司がすることも入れます。
| だれが | 何を | いつから |
|---|---|---|
| 二人 | 受け渡しは口頭ではなく、共有の表に書く | 来週の月曜から |
| 上司 | 二人の分担の境目を、表にして配る | 今週中 |
| 三人 | 進み具合を確かめる | 2週間後の金曜 |
面談の前に用意すること
一人ずつ話を聞く前に、次のものを手元にそろえておきます。
- 二人の担当と分担の境目:仕事の割り振りの表や、受け渡しの手順書
- 目に見える事実:遅れた仕事、やり直しになった書類、周りから聞いた声(誰から聞いたかは、相手に言わない)
- 自分が決められる範囲:分担や手順は自分で変えられるか、上の判断が要るか
- 二人それぞれのよい点:面談の中で、具体的に伝えられるもの
4は忘れられがちです。対立している部下は、自分が責められていると身構えています。仕事ぶりのよい点を一つ伝えると、話を聞く姿勢が伝わります。
つまずきやすい受け答え
- 片方の言い分にうなずきすぎる:「それはひどいね」と返すと、その言葉がもう一人に伝わることがあります。「そう受け止めたんですね」と、受け止めの言葉にとどめます。
- すぐに三人で話そうとする:二人の話を聞く前に同席させると、相手の前で引けなくなります。三者の場は、仕事の上の原因が見えてからにします。
- 気持ちの問題で片付ける:「大人なんだから」とまとめると、仕事の上の原因が残ります。二人の事実を確かめてから、何を変えるかを決めます。
その後の見守り
話し合いで決めたことは、守られるかどうかを見ていきます。確認の日には、二人それぞれに、仕事がしやすくなったかを短く聞きます。
改善が見えたら、その場で認めます。うまくいっていないときは、どちらかを責めるのではなく、決めた手順のどこが合っていないかを一緒に考えます。
対立が周りの人に影響していた場合は、周りの人の負担にも目を配ります。間に入って気をつかっていた人がいれば、その苦労をねぎらいます。
架空の例:営業と事務の受け渡し
場面:機械の販売会社で営業課長をしているUさんは、営業担当のAさんと、事務担当のBさんの対立に気づきました。Aさんは「Bさんが書類を後回しにする」と言い、Bさんは「Aさんの依頼はいつも急で、内容が足りない」と言っています。
最初の練習で、Uさんは二人を同時に呼び、次のように切り出しました。
二人とも大人なんだから、仲良くやってほしい。
二人とも黙ってしまいました。評価する側から見ると、事情を聞かずに、気持ちの問題として片付けています。
Uさんは、まずAさんと一人で話す形に直しました。
書類のやりとりで、仕事が進めにくくなっていると聞きました。どちらが悪いかを決めたいのではなく、進めやすくしたいと思っています。どんな場面で困っているか、聞かせてもらえますか。
この後、同じ日にBさんにも同じ目的を伝えて話を聞きます。二人の話から、依頼の締め切りと、書類に要る情報の決まりがないことが見えてくるかもしれません。どう進むかは、二人の答え次第です。
一人で確かめるときの限界
片方ずつ聞く手順は、表にして準備できます。けれども、部下が感情的になったり、もう一人を強く責めたりしたときに、同意せずに受け止められるかは、生身の反応のある相手と話さないと分かりません。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談の1場面(評価に納得していない部下)を文字で1回練習できます。この記事の場面とは違いますが、相手の言い分を受け止めながら事実と気持ちを分けて聞く点は共通です。部下役は、聞き方によって話す内容が変わります。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言を確かめられます。
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