管理職への昇格の前に、外部の評価者によるアセスメントを受ける会社があります。1日から2日かけて、いくつもの演習を続けて受ける形が多いと考えられます(推測)。

アセスメントは知識の試験ではないので、「何を勉強すればよいか分からない」と感じる人もいます。この記事では、アセスメントで見られる行動を整理し、演習ごとの準備と当日の過ごし方を説明します。特定の会社や研修の問題は扱いません。

※この記事に出てくる人物と場面は、説明のために作った架空のものです。

アセスメントで見られる行動

アセスメントの評価者が記録するのは、答えの正しさより、演習の中での考え方と動き方です。提供元ごとに項目の呼び名は違っても、見られる行動を並べると、次の8つに整理できます。

  • 状況を広く見て、問題の本質をつかむ
  • 期限までに判断する
  • 方針を一貫させる
  • 人に任せ、巻き込み、調整する
  • 人を育てる(指導、動機づけ)
  • 相手の立場をくむ
  • リスクと倫理を外さない
  • 先を描く(中長期の打ち手)

どの演習でも、評価の材料になるのは、紙や画面に書いたことと、口に出したことだけです。「考えてはいた」は記録に残らないので、判断の理由や相手への気づかいは、短くても言葉にして出します。

もう一つ大事なのは、演習の設定で与えられた役職になりきることです。今の自分の立場や会社の常識はいったん脇に置き、その役職に着任した本人として動きます。

案件処理演習の準備

メールやメモの束を、役職者として時間内に処理する演習です。

  • 1件の型を身につける:誰に、何を、いつまでに、どう確かめるか。判断の理由を1文
  • 全件に先に目を通す:最初の1〜2割の時間で全体をつかむ。後半に前提をひっくり返す案件が置かれることがある
  • 任せる:自分で全部やらず、方向と期限を示して部下や関係部署に任せる
  • つなげる:同じ原因から出た案件をまとめて扱う

形式の全体像は案件処理演習とは、進め方は案件処理演習の進め方にまとめました。

面談演習の準備

部下役(評価者や役者が演じる)と、10〜20分ほど面談する演習です。

  • 最初は聴くことに徹する:さえぎらない、否定しない、急いで結論を出さない
  • 事実と気持ちを分けて聞く:「何が起きたか」と「どう感じたか」を別々に
  • できない約束をしない:自分の権限でできることと、上に相談することを分ける
  • 次の一歩を一緒に決める:誰が、何を、いつまでに。次の面談の日も

面談の資料が事前に渡される形なら、資料から読み取れる事実と、本人に聞かないと分からないことを分けてメモしておきます。聞きたいことが決まっていると、面談の途中で話が逸れても戻りやすくなります。

限られた時間で、部下の困りごとを片付け切る必要はありません。むしろ、相手の話を引き出し、次に会う日まで決めて終えるほうが、管理職の面談として自然です。聞き方の練習の仕方は、部下面談の練習で取り上げています。

討議・分析発表の準備

グループ討議は、数人で資料を読み、時間内に一つの結論を出す演習です。結論を出さないことが大きな失点になります。判断の基準を先に合わせ、その基準で案を比べる進め方を練習します。

分析発表は、資料を一人で読み込み、問題と対策をまとめて発表する演習です。資料の数字を引用し、原因と対策を対応させ、決められた時間で話し切る練習をしておきます。

討議では、次のような一言を用意しておくと、議論を前に進める役に回りやすくなります。

  • 「先に、何を基準に選ぶかを決めませんか」
  • 「〇〇さんの案のよい点を生かして、ここを足すとどうでしょう」
  • 「残り10分です。2つに絞って比べましょう」

分析発表では、発表の最初の30秒で結論を言い切る形にしておくと、時間が足りなくなっても要点は伝わります。

どちらも、一人で練習しにくい演習です。同僚や勉強会で、時間を区切って練習する機会があれば使います。進め方はグループ討議の進め方と分析発表演習の進め方で説明しています。

演習ごとの、始めの5分でやること

どの演習も、始めの数分で流れが決まりやすいものです。演習ごとに、最初にやることを決めておくと、緊張していても手が動きます。

演習 始めの5分でやること
案件処理演習 指示文と設定資料を読み、自分の役職と使える時間をメモする。全件に目を通し、重い案件に印を付ける
面談演習 資料から、部下について分かっている事実と、分かっていないことを分けて書く。最初の一言を決める
グループ討議 進め方と時間の配分を提案する準備をする。判断の基準の候補を2つ書く
分析発表 発表の時間から逆算して、話す順(結論、根拠、対策)を決める。資料の数字に印を付ける

始めの5分の動きは、事前に何度か声に出したり書いたりしておくと、当日に自然に出てきます。

当日の体調と時間の使い方

アセスメントは長丁場です。中身の準備と同じくらい、体調と時間の管理が結果に響きます。

  • 前日は早く寝る:考える力と表情に、睡眠不足がそのまま出る
  • 最初の演習から力を出す:最初の印象は、後の演習まで尾を引きやすい
  • 演習の合間に、次の演習の観点を確かめる:「次は何を見られるか」を一言メモしておく
  • 前の演習を引きずらない:うまくいかなかった演習は、終わった時点で切り替える
  • 評価者の指摘を受け止める:介入やフィードバックに防御的にならない。受け止める姿勢も見られている
  • 当日の指示を最優先する:練習した型と違う指示があれば、指示に合わせる

当日に書く振り返りのシートがある形式もあります。事前に書ける部分(自分の強みと弱み)は、前もって考えておくと時間に追われません。

架空の例:2日目の朝に崩れた人

建設会社の工事課で係長をしているFさん(45歳)は、1日目の案件処理演習で時間が足りず、重要な案件を空欄で残してしまいました。

2日目の朝、Fさんは「もう駄目だ」と思い、面談演習でも言葉が出にくくなりました。振り返ると、崩れたのは中身より気持ちのほうでした。

演習は、それぞれ別の観点で評価されることが多いと考えられます(推測)。1つの演習の失敗で、すべてが決まるわけではありません。Fさんは次の受験に向けて、「演習が終わるたびに、良かった点を1つだけメモして切り替える」という手順を決めました。

結果の受け止め方

アセスメントの結果は、点数や段階の評価、評価者のコメントで返されることがあります。

  • コメントを観点の言葉に置きかえる:「視野が狭い」なら、問題把握の観点
  • 演習ごとに、どの行動が足りなかったかを書き出す
  • 一番弱い観点を1つ選び、次の練習の中心にする

報告書の読み方と、結果が悪かった後に何から手を付けるかは、アセスメントの結果が悪かったときで順を追って説明しています。試験全体として振り返るときは、昇格試験に落ちた理由を、自分で推し量る方法も使えます。

アセスメントの前にやっておく自己点検

アセスメントの前に、評価の系統ごとに、自分の強みと弱みを書き出しておきます。

系統 自分の強み(例) 自分の弱み(例)
問題を見抜く 数字に強い 人の問題を見落としがち
判断する 決めるのが速い 理由を言葉にしない
任せる — 自分でやってしまう
人を育てる 後輩の相談に乗る 助言が早すぎる

弱みの欄に書いたことは、演習の直前に見返します。「この演習では、自分でやらずに任せる」と一言で思い出せるようにしておくと、当日の行動が変わります。

一人で確かめるときの限界

案件処理演習のように書く演習は一人でも練習できますが、面談や討議のように相手がいる演習は、相手の反応を受けて自分がどう動くかを確かめにくいものです。自分の言葉や記述が、評価者の記録にどう残るかも、一人では分かりにくい点です。

昇格パスの無料体験では、登録の後に、部下面談1場面、昇格面接3問、案件処理演習1案件を、文字でそれぞれ1回練習できます(論文は対象外です)。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言や記述を確かめられます。

個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。グループ討議と分析発表の演習はないため、そちらは同僚や勉強会での練習と組み合わせてください。

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