昇格面接では、部下の育成についての質問がよく出ます。「部下をどのように育てたいですか」「後輩の指導で工夫したことは」といった問いです。
主任や係長を目指す人の中には、まだ正式な部下を持ったことがない人も多いはずです。この記事では、育成の経験が浅くても、自分の言葉で答えるための材料の集め方と、話の組み立て方を説明します。
※この記事に出てくる人物と例は、説明のために作った架空のものです。
育成の質問で見られていること
役職に上がると、自分で成果を出すことより、人を通じて成果を出すことが求められます。育成の質問は、その切り替えができそうかを確かめる問いだと考えられます(推測)。
そのため、部下を持った年数より、答えの中に次の4つが出てくるかが大きく効きます。
- 人を育てることを、役職の仕事の一部として話しているか
- 育て方についての自分なりの考えが、借り物でない言葉で出てくるか
- その考えが、実際の場面での動き方につながっているか
- 注意や評価のような、言いにくいことにも触れているか
経験が浅いときに使える材料
正式な部下がいなくても、育成の材料はあります。思い出す手がかりは次のとおりです。
| 材料 | 例 |
|---|---|
| 後輩への指導 | 新人に仕事を教えた、質問に答えた |
| 異動してきた人の受け入れ | 職場の手順を説明した、慣れるまで声をかけた |
| 派遣・パートの人への説明 | 作業の手順を伝えた、ミスを一緒に直した |
| 自分が育てられた経験 | 上司や先輩のどんな関わり方で、自分が伸びたか |
| プロジェクトのまとめ役 | 役割を分けた、進み具合を確かめた |
自分が育てられた経験は、とくに使いやすい材料です。「先輩が、答えを言わずに『どう思う』と聞き返してくれたことで、自分で考える癖がついた。自分もそうしたい」のように、考え方の根拠になります。
経験が浅いことを隠す必要はありません。「正式な部下を持ったことはありませんが、後輩の指導で〜」と前置きして、持っている材料で話します。前置きは一文で済ませ、すぐに具体的な場面に入ると、経験の浅さより中身のほうが印象に残ります。
育成の考え方を一つに絞る
育成の考え方は、一つに絞って言えるようにします。いくつも並べると、どれも浅く聞こえます。
考え方の例は、次のようなものです。
- 答えを先に言わず、まず本人に考えてもらう
- 少しずつ任せる範囲を広げる
- できたことを、その場で具体的に伝える
- 本人の得意なことから任せる
どれを選ぶかは、自分の経験に合うものにします。選んだ考え方を、「なぜそう考えるのか」と一緒に言えるようにしておきます。理由は、自分が育てられた経験や、後輩を指導した経験から出すと、借り物でない話になります。
具体的な場面で語る
考え方を言ったら、それを具体的な場面に落とします。考え方だけでは、聞き手はそれが本当に行動になっているかを確かめられません。
- 弱い言い方:「部下の主体性を尊重し、自ら考えて動ける人材を育てたいです」
- 伝わる言い方:「後輩に月末の締めの作業を教えたとき、最初の月は一緒にやり、次の月は後輩にやってもらって私が確かめ、3か月目からは任せました。困ったときだけ聞きに来る形にしたところ、半年後には新しく来た人に後輩が教えられるようになりました」
伝わる言い方では、任せる段階を3つに分けて話しています。任せ方の段階(一緒にやる、やってもらって確かめる、任せる)は、育成の話で使いやすい骨組みです。
役職に就いた後の話も、一つ用意しておきます。「係長になったら、新しく来た人には最初の1か月、週に一度15分の面談をして、困っていることを聞きます」のように、頻度と中身を入れて話します。
評価や指導の厳しい場面
育成の質問には、「部下が言うことを聞かなかったら」「何度言っても同じミスをする部下がいたら」といった深掘りが続くことがあります。
答えの骨組みは、次の順です。
- 事実を確かめる(いつ、何が、どのくらい)
- 本人の話を聞く(なぜそうなっているか、本人はどう見ているか)
- 期待していることを、具体的に伝える
- 一緒に次の一歩を決める
- 決めた日に確かめる。改善が見えないときは、上司に相談する
「優しく見守ります」だけでも、「厳しく注意します」だけでも、片寄って聞こえます。聞くことと、はっきり伝えることの両方を入れます。
年上の部下や、経験の長い人への関わり方を聞かれることもあります。相手の長年のやり方に敬意を払いつつ、係として決めたことは遠回しにせず頼む、という姿勢で話します。年上の部下と1対1で話すときの進め方は、部下面談の場面別の進め方で取り上げています。
よくある答えと直し方
育成の質問で出やすい答えを、架空の例で並べます。
| よくある答え | 聞き手からの見え方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 「部下の主体性を大切にしたいです」 | 考えは分かるが、何をするかが見えない | 主体性が育ったと分かる場面を1つ挙げる |
| 「自分がやって見せて、覚えてもらいます」 | 見せた後、相手がどうなったかが見えない | 任せる段階と、確かめ方を足す |
| 「部下とは何でも話せる関係を作ります」 | 関係づくりは伝わるが、育成の中身が薄い | 関係を作った後に、何を任せたかを言う |
| 「ミスをしたら、厳しく指導します」 | 叱る場面しか見えない | 事情を聞く手順と、次の一歩の決め方を入れる |
どの答えも、間違いではありません。足りないのは、相手がどう変わったか、という結果の部分です。
材料を引き出す問い
材料が思い浮かばないときは、次の問いに1行ずつ答えてみます。
- この1年で、誰かに仕事を教えた場面はあったか
- 教えた相手は、今、何を一人でできるようになったか
- 教えるときに、自分が気をつけていたことは何か
- うまく伝わらなかったとき、教え方をどう変えたか
- 自分が伸びたと感じたのは、誰のどんな関わり方のおかげか
答えが1つでも書ければ、それが育成の話の芯になります。答えが書けない問いがあれば、次の数週間の仕事の中で、意識して材料を作ることもできます。
役職に就いた後の育成を話すとき
「係長になったら、部下をどう育てますか」と、これからの話を聞かれることもあります。経験が浅い人ほど、ここで大きな言葉に頼りがちです。
これからの話は、次の3つをそろえると具体的になります。
- 誰を:新しく来た人、伸び悩んでいる人、次のリーダー候補など、相手を1人か1つの層に絞る
- 何を任せるか:最初に任せる仕事を1つ決める
- どう確かめるか:週に一度の短い面談、月末の振り返りなど、頻度と場を決める
たとえば「次のリーダー候補の後輩に、まず週次の進み具合の取りまとめを任せます。最初の2か月は毎週10分、まとめ方を一緒に見直します」のように話します。過去の経験と同じ任せ方の段階を使うと、これからの話にも裏付けが出ます。
面談演習とのつながり
昇格試験に面談演習がある場合、面接で話した育成の考え方と、面談演習でのふるまいが食い違わないようにします。面接で「まず本人に考えてもらう」と話したのに、面談演習で一方的に助言を続けると、話と行動が合っていないように見えることがあります。
面談演習で評価されやすい聞き方は、部下面談の練習で説明しています。面接の準備と面談の準備を、同じ考え方でつなげておくと、どちらでも話がぶれにくくなります。
架空の例:答えの組み立て
食品メーカーの工場で、主任を目指すRさん(入社8年目)は、正式な部下を持ったことがありません。次のように材料をまとめました。
| 段 | Rさんの材料 |
|---|---|
| 考え方 | 手順の「理由」まで教えると、人は自分で判断できるようになる |
| 根拠 | 自分が新人のとき、先輩が手順の理由を説明してくれたので、想定外のことが起きても慌てなかった |
| 場面 | 派遣の人に、検査の手順を教えるとき、なぜその順番かを一緒に説明している |
| 結果 | 検査の手順の抜けが、教え始めてから3か月で半分ほどに減った |
| 役職に就いたら | 手順書に「なぜ」の欄を加え、新しく来た人と一緒に読み合わせる |
この表の行を順にたどれば、1分ほどの答えになります。育成以外に主任の面接で出やすい質問と、その組み立て方は、主任の昇格面接で聞かれる質問例と、答えの組み立て方で確かめられます。
一人で練習するときの限界
材料の整理は一人でもできます。ただ、「それでも部下が動かなかったら」と重ねて聞かれたときに、言葉が続くかは、相手がいないと確かめにくいものです。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で1回ずつ練習できます。答えると「具体的には」などの深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。
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