昇格面接では、「あなたの職場の課題は何だと考えますか」「役職に就いたら、どんな課題に取り組みますか」とよく聞かれます。答えやすそうに見えて、話が広がりすぎたり、愚痴に聞こえたりしやすい質問です。

この記事では、この質問で見られていることと、問題と課題を分けて答える組み立て方を説明します。

※この記事に出てくる職場と例は、説明のために作った架空のものです。

この質問で見られていること

この質問は、受ける人が職場をどんな高さから見ているかを知るための問いだと考えられます(推測)。答えの中に、次の4つが入っているかで、印象が変わります。

  • 自分の担当だけでなく、係や課の全体を見渡した話になっているか
  • 起きていることだけでなく、なぜ起きているかまで触れているか
  • 役職に就いた後の自分の動きが、具体的に出てくるか
  • 会社や部門の方針と、話している課題が結びついているか

論文の「職場の課題と解決策」と同じ中身を、口頭で短く伝える質問だと考えると準備しやすくなります。どの職場にも当てはまる言葉を、自分の職場の事実に置きかえる手順は、論文で「一般論」と言われたときが面接の準備にも使えます。

問題と課題の違い

答えを組み立てる前に、問題と課題を分けます。

言葉 意味 例
問題 あるべき状態と、今の状態の差 新しく来た人が独り立ちするまでに、半年以上かかっている
原因 差が生まれている理由 教え方が人によって違い、手順が紙になっていない
課題 差を埋めるためにやること 手順をそろえ、教える役を決める

よくある答えは、問題だけを話して終わるものです。「人手が足りません」「若手が育っていません」。これでは、聞く側には職場の不満に聞こえやすくなります。問題、原因、課題、自分の打ち手まで話すと、管理職の目線が伝わります。

架空の例で、よくある答えの直し方を並べます。

よくある答え 聞き手からの見え方 直し方
「若手が育っていません」 状態の説明だけで、何をするかがない 育っていないと分かる事実と、原因を1つ足す
「コミュニケーションが足りません」 どの職場にも当てはまり、中身が見えない 伝わらずに起きた出来事を1つ挙げる
「会社の方針がころころ変わります」 不満に聞こえ、自分の打ち手がない 変わったときに係で困った点と、自分がそろえたいことを言う

3つとも、言っていること自体は事実かもしれません。足りないのは、出来事と、自分が動く部分です。

課題の選び方(大きすぎ・小さすぎ)

話す課題の大きさは、受ける役職に合わせます。

大きさ 例 聞こえ方
大きすぎる 会社の業績を立て直す、業界の人手不足を解消する 自分の手の届かない話に聞こえる
ちょうどよい 係の受け渡しのミスを減らす、課の残業の偏りをならす 役職に就いた後の仕事として描ける
小さすぎる 自分の書類の作り方を見直す 担当者の仕事に聞こえる

主任や係長の面接なら、自分の係やチームの中で、1年ほどで手を打てる課題が話しやすいはずです。課長や管理職の面接なら、課をまたぐ課題や、仕組みを変える課題まで広げると、立場に合いやすくなります。課長の面接で部門の課題を語る準備は、課長・管理職の昇格面接で聞かれることで説明しています。

課題を1つに絞ることも大切です。3つも4つも並べると、どれも浅くなります。1つを深く話し、「ほかには」と聞かれたら2つ目を出します。

同じ課題でも、受ける役職によって語る範囲が変わります。架空の「月末に残業が集中する」という課題で考えます。

  • 主任なら:自分のチームで、案内の時期を前倒しする手順を作り、後輩に教える
  • 係長なら:係全体の予定を一覧にし、担当の割り振りを決め、進み具合を毎週確かめる
  • 課長なら:係をまたいで繁忙の波をならし、人の応援の決まりを作り、部長に効果を報告する

自分が受ける役職の行を、言葉にできるかを確かめます。一段下の行の話しか出てこないなら、打ち手を「誰に任せ、どう確かめるか」まで広げます。

自分の役割と打ち手

課題を話したら、自分が何をするかを続けます。打ち手は、誰が、何を、いつまでに、の形で言えるようにしておきます。

  • 弱い言い方:「チーム全体で情報共有を徹底したいと考えています」
  • 伝わる言い方:「最初の3か月で、受け渡しの手順を1枚にまとめ、週に一度、係の10分の打ち合わせで困った点を出し合う場を作ります」

管理職の打ち手は、自分が全部やることではありません。誰に任せるか、どう確かめるかも入れます。「手順のまとめは、経験の長い〇〇さんと若手の二人に任せ、私は月に一度、出来を確かめます」のように話せると、任せ方の考えも伝わります。

会社や部門の方針とのつながりも、一言入れられると強くなります。今年の部門の目標が「お客さまの待ち時間を減らす」なら、受け渡しのミスを減らすことが、その目標にどうつながるかを言います。

課題の材料を集める手順

課題がすぐに思いつかない人は、ふだんの仕事の中から材料を拾います。次の順に、1週間ほどメモを取ってみます。

  1. 困った場面を書く:手戻り、待ち時間、問い合わせ、残業が出た場面を、その日のうちに1行で
  2. 同じ場面を束ねる:1週間後に読み返し、似た場面をまとめる
  3. 回数か時間を数える:束ねた場面が、週や月にどのくらい起きているかを見積もる
  4. 原因を1つ書く:手順、役割、情報の流れのどこで起きているかを考える
  5. 役職でできることを書く:受ける役職の立場で、1年でできる手を1つ書く

この手順で拾った課題は、自分の職場の事実から出てきたものなので、深掘りされても答えに詰まりにくくなります。

数字で示す

問題と効果は、できるだけ数字で示します。

  • 問題の数字:ミスの件数、かかる日数、残業の時間、問い合わせの件数
  • 効果の数字:何をどれだけ減らすか、いつまでに

正確な数字がわからなければ、「おおよそ月に10件ほど」のような言い方でかまいません。数字にしにくい課題でも、「以前は〜だったが、今は〜」という前後の比べ方で示せます。

数字が手元にない人は、面接の前に、職場の記録をいくつか確かめておきます。面接で数字を言うと、その数字の根拠を聞かれることがあるからです。社外秘の数字は、割合や前の年との比べ方に置きかえ、伏せたまま話せる形にしておきます。

深掘りへの備え

課題の答えは、面接官が掘り下げやすい話題です。想定しておきたい問いを4つ挙げます。

  • 「その原因は、本当にそれだけですか」
  • 「今の上司は、その課題に何か手を打っていないのですか」
  • 「あなたの打ち手に、周りが反対したらどうしますか」
  • 「その課題が解決したかは、どう確かめますか」

2つ目の問いには注意が要ります。今の上司や前任者を批判する形で答えると、印象が悪くなりやすいところです。「今も〜には取り組んでいますが、〜の部分はまだ手が回っていないと見ています」のように、今の取り組みを認めたうえで、自分が足したいことを話します。

3つ目の問いには、反対の理由を聞く、小さく試してから広げる、上司に相談して方針として示してもらう、といった答えが考えられます。

架空の例:答えの組み立て

保険代理店で主任をしているSさんは、係長の面接に向けて、次のように答えを組み立てました。

段 Sさんの材料
問題 契約の更新の案内が、締め切りの直前に集中し、月末に残業が20時間ほど増える
原因 案内の時期を担当者がそれぞれ決めていて、全体の量が見えていない
課題 更新の案内の時期を、係全体でならす
打ち手 更新の予定を一覧にし、月の前半に半分を案内する決まりを作る。一覧の管理は若手に任せ、私は毎週確かめる
効果 半年で月末の残業を半分にする

表の中身を、1分ほどで話せるように練習します。文章を覚えるのではなく、表の行の順番を覚えます。

Sさんは、深掘りへの答えも1行ずつ用意しました。原因がほかにもあるかと聞かれたら、繁忙期に休みが重なることも挙げる。周りが反対したら、まず1か月だけ試して残業の時間を比べる。こうした備えがあると、深掘りの質問にも落ち着いて答えやすくなります。

一人で練習するときの限界

答えの組み立ては一人でもできます。ただ、深掘りでどこを突かれるかは、自分では予想しきれないものです。原因の見立てや打ち手のどこが弱いかは、問われて初めて分かることが多くあります。

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