昇格面接では、実績と並んで「これまでの失敗の経験を教えてください」と聞かれることがあります。成功の話は準備していても、失敗の話は何を選べばよいか迷う人が多い質問です。

この記事では、失敗の質問で見られていることと、話す失敗の選び方、話の組み立て方を説明します。

※この記事に出てくる人物と例は、説明のために作った架空のものです。

失敗経験を聞く理由

面接官が失敗を聞くのは、失敗そのものを責めるためではないと考えられます(推測)。失敗の話からは、次の4つが透けて見えるからです。

  • 自分の失敗を、ごまかさずに認める人か
  • 起きたことを、自分の行動の側から振り返る人か
  • 振り返った後で、実際にやり方を変えた人か
  • 役職に就いた後、部下の失敗にどう向き合いそうな人か

最後の点は見落とされがちです。管理職は、部下の失敗を受け止め、次に生かす役目を持ちます。自分の失敗をどう扱ったかは、その姿勢を想像する材料になります。

話す失敗の選び方

話す失敗は、次の3つの条件で選びます。

条件 理由
仕事の上の失敗であること 私生活の失敗では、役職の仕事とのつながりが見えにくい
自分の判断や行動が原因に含まれること 「運が悪かった」では学びが語れない
その後に変えたことがあること 学びが行動に出ていることを示せる

大きさの目安は、「職場に影響は出たが、取り返しのつかない事態ではなかった」くらいが話しやすいはずです。

避けたほうがよい失敗もあります。

  • 小さすぎる失敗(「メールの宛先を間違えた」だけ):学びが浅く見えやすい
  • 法令や安全に関わる重大な失敗で、まだ片付いていないもの:面接の場で説明しきれないことがある
  • 他人の失敗を自分の失敗のように話すもの:深掘りで食い違いが出やすい

候補を2〜3つ書き出し、条件に合うものを1つ選びます。もう1つを予備にしておくと、「ほかには」と聞かれたときに慌てません。

原因を自分の行動で語る

失敗の話で一番差がつくのは、原因の語り方です。

  • 弱い言い方:「取引先の担当が急に変わり、引き継ぎがうまくいかなかったためです」
  • 伝わる言い方:「担当が変わると聞いた時点で、私から新しい担当に会いに行くべきでした。忙しさを理由に、メールの挨拶だけで済ませていました」

弱い言い方は、事実としては正しくても、原因を外に置いています。伝わる言い方は、自分が何をしなかったかを具体的に言っています。

自分を責めすぎる必要はありません。「私の性格が甘かった」のような言い方は、次に何を変えたかにつながりません。原因は、性格ではなく行動で言います。

その後に変えたこと

学びは、「〜の大切さを学びました」で終わらせず、その後に変えた行動で示します。

学びの言い方 行動での示し方
確認の大切さを学んだ それ以降、担当が変わる先には、2週間以内に会いに行くと決めている
報告の大切さを学んだ 遅れが出そうなときは、決まった日の前に上司に一報を入れるようにした
人に頼ることを学んだ 締め切りの1週間前に、残りの作業を係で分ける時間を取るようにした

さらに一歩進めて、その行動を周りにも広げた話があると、管理職の視点が伝わりやすくなります。自分の失敗から作った手順を、係の決まりにした、といった話です。

話の順番は、実績の話と同じ型が使えます。状況、自分の役割、失敗した行動、結果(影響)、原因、その後に変えたこと。全体で1分ほどにまとめ、深掘りされたら詳しく話します。

避けたい話し方

失敗の質問で、評価を下げやすい話し方があります。

  • 失敗を成功の話にすり替える:「失敗しましたが、最終的には目標を達成しました」で終わる。失敗から何を学んだかが見えません
  • 失敗がないと言う:「大きな失敗はありません」は、自分を振り返っていないように聞こえやすいところです
  • 言い訳が長い:事情の説明が長くなると、原因を外に置いているように聞こえます
  • 誰かを悪く言う:前の上司や同僚の名前を出して責めると、管理職としての姿勢に疑問を持たれます

架空の例で、話の終わり方を比べます。

終わり方 聞き手からの見え方
「この経験で、確かめることが大事だと身にしみました」 学びが言葉だけで、何が変わったかが見えない
「それからは、担当が変わる先には2週間以内に会いに行っています。昨年は4社でそうしました」 学びが行動になり、続いていることが分かる

終わりの一文を、学びの言葉ではなく、今も続けている行動で締めると、話全体の印象が変わります。

深掘りへの備え

失敗の話には、深掘りの質問が続きやすいものです。次の問いに、1〜2文で答えられるようにしておきます。

  • 「そのとき、ほかにどんな選択肢がありましたか」
  • 「周りの人は、どう受け止めていましたか」
  • 「今、同じことが部下に起きたら、どうしますか」
  • 「その後、同じような失敗はありましたか」

3つ目の問いは、役職に就いた後の姿を確かめる問いです。部下を責めずに事情を聞く、一緒に原因を考える、仕組みで防ぐ、といった答えを、自分の失敗の経験とつなげて話せると、話に一貫性が出ます。

たとえばTさんなら、「部下が同じ誤出荷を起こしたら、まず何が起きたかを一緒に確かめます。自分も同じ失敗をしたので、手順のどこで抜けたかを本人と探し、係の1枚の紙に書き足します」と答えられます。自分の失敗の経験が、部下への接し方の根拠になっています。

深掘りで言葉が出なくなっても、少し間を置いてから話し始めれば十分です。間の取り方や、質問の意図を確かめる一言は、昇格面接で答えられない質問が来たときで紹介しています。

架空の例:話の組み立て

物流会社で主任をしているTさんは、係長の昇格面接に向けて、次のように失敗の話を組み立てました。

段 Tさんの材料
状況 繁忙期に、新しい取引先の出荷を担当した
失敗した行動 出荷の手順の違いを、自分だけが知っている状態で作業を始めた
結果 自分が休んだ日に誤出荷が3件出て、取引先に謝りに行った
原因 手順の違いを紙にせず、係の人に伝えていなかった
変えたこと 取引先ごとの違いを1枚にまとめ、朝礼で共有するようにした。今は係の決まりになっている

表の中身を、自分の言葉で1分にまとめて話す練習をします。文章を丸暗記すると、深掘りされたときに言葉が出にくくなります。

1分の中の配分は、おおよそ次のくらいが目安です。

段 長さの目安
状況と失敗した行動 15秒
結果(影響) 10秒
原因 10秒
変えたこと 25秒

いちばん長く話すのは、変えたことの部分です。状況の説明が長くなりやすい人は、状況を一文に縮めると、後半に時間を回せます。録音して聞き返し、変えたことにたどり着くまでに何秒かかっているかを測ってみると、直す場所が分かります。

Tさんの表は、実績を整理するときの表と同じ骨組みです。成功の話を同じ形でそろえる方法は、昇格試験の実績の書き方を参考にしてください。

失敗の材料が見つからないとき

「大きな失敗をした覚えがない」という人もいます。その場合は、失敗を広く捉え直すと、材料が見つかります。

  • 期限に間に合わせたが、周りに無理をさせた仕事
  • 自分で抱え込み、後で人に頼めばよかったと思った仕事
  • 予定どおりに進まず、計画を立て直した仕事
  • 相手の意図を取り違え、やり直しになった仕事

結果として大きな問題にならなかったものでも、「自分のやり方を変えるきっかけになった」なら、失敗の話として使えます。思い出すときは、手帳や過去のメールを見返すと、当時の状況や数字がよみがえりやすくなります。候補が見つかったら、上の3つの条件に照らして1つに絞ります。

ほかの質問とつなげておく

失敗の話は、面接のほかの質問と内容がつながっていると、話に一貫性が出ます。たとえば、Tさんの失敗の話は、「職場の課題は何か」の質問にもつながります。取引先ごとの手順の違いが人の記憶に頼っている、という課題です。

面接の前に、実績、失敗、職場の課題、育成の考え方の4つの答えを並べ、同じ経験が違う角度から語れるかを確かめておきます。答えどうしが食い違っていないかの点検にもなります。

一人で練習するときの限界

話の組み立ては一人でもできます。ただ、深掘りの質問は、自分で作ると答えやすいものに偏ります。原因を自分の行動で語れているかも、自分で読み返すだけでは判断しにくいところです。

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