部下が話し始めると、別の仕事や過去の出来事へ話題が広がる。最後まで聞こうとしているうちに、面談の時間が終わってしまう。そんなときは、話を止めることより、何を先に扱うかを一緒に決めることを考えます。
以下は、面談の進め方を振り返るための提案です。話の長さから相手の性格を評価するものではありません。例に登場する職場と会話は、説明のために作った架空のものです。
話の長さと、論点の数を分ける
長く話していても、一つの出来事を詳しく説明している場合があります。一方、短い話の中に、複数の困りごとが入る場合もあります。時間だけで判断せず、どんな論点が出ているかを拾います。
たとえば「納期が短い」「依頼の条件が変わる」「相談しても返事が遅い」は、似た不満に見えて、必要な確認先が違います。上司が一つにまとめすぎると、本人が伝えたかった違いが消えてしまいます。
メモでは、話された順番をそのまま書き続けるより、論点を短い言葉で分けます。相手が息をついたところで、その整理が合っているかを確かめます。上司の分類が正解だと決めないことが前提です。
本題へ戻す前に、受け取った内容を示す
いきなり「話を戻しましょう」と言うと、相手には聞いてもらえなかったと映るかもしれません。先に、何を受け取ったかを短く返します。全部を言い直す必要はありません。
「納期の問題と、依頼が途中で変わる問題があるのですね」と整理できれば、その後で優先を相談できます。内容が違うと言われたら、先に修正します。要約を相手の発言を終わらせる道具にしないようにします。
| 上司の動き | 確かめること | 避けたい進め方 |
|---|---|---|
| 論点を拾う | 何について困っているか | 話し方そのものを注意する |
| 要約を返す | 本人の意図と合っているか | 勝手な解釈で短くする |
| 優先を相談する | 今日どこまで扱うか | 上司だけで残りを切り捨てる |
| 本題へ戻る | 具体的に確認する場面は何か | 同じ大きな問いを繰り返す |
架空の例:営業担当の不満が広がる
営業担当との面談で、納期の遅れを確かめる場面を考えます。本人は、見積りの手順、他部署の返答、以前の担当者のやり方まで話し始めました。上司は、どこから答えればよいか分からなくなりました。
この場合、全部に順番に返答すると、面談の目的から離れやすくなります。まず、現在の案件に影響していることと、以前からの改善要望を分けます。そのうえで、今日決める必要がある納期の件から扱うことを相談します。
以前からの改善要望も、なかったことにはしません。別に確認する内容としてメモし、いつ扱うかを決めます。後で話すと言ったことを放置すると、次の面談で同じ話が繰り返される理由にもなります。
本題へ戻る問いは、具体的にします。「いまの案件で、返事を待っている確認はどれですか」と聞けば、説明する範囲を絞れます。相手の困りごと全体を解決しようとする問いから、今日動かす仕事の問いへ移る方法です。
時間を伝えるときは、話す価値を下げない
時間の残りを伝えることはできます。ただし、「長いので短くしてください」と、話す人の問題だけにしないようにします。残り時間で何を確かめ、何を決めたいかを一緒に示します。
時間が足りない場合は、結論を急がせるだけでなく、扱う範囲を減らします。必要な事情が分からないまま対策を決めるより、今日決めることと、調べてから決めることを分けます。
また、時間を区切るたびに上司が長い説明をすると、相手の発言時間がさらに減ります。要約は短く、確認の問いも一つずつにします。上司自身の話の長さも、振り返りの対象です。
本題から外れて見える話にも、つながりを確かめる
一見関係のない話が、今の問題の背景であることもあります。すべてを脇道と決めつけるのではなく、今日の仕事とどうつながるかを聞けます。関連が分かれば、扱う順序を変えることもあります。
たとえば、他部署の過去の対応への不満が、現在の確認依頼を避ける理由になっているかもしれません。出来事の批判に乗るのではなく、今どこで仕事が止まっているかへつなげます。
関連が薄い話は、別の話題として置けます。その場合も、何を残したかを短く確かめます。上司の頭の中だけで切り分けず、本人と扱いを共有します。
終了時に、残った話を見える形にする
面談の終わりには、決まったことと、残っていることを並べます。残った話をすべて次回に持ち越すとは限りません。別の担当へ確認するものや、本人が整理するものに分けられます。
| 残った内容 | 次の扱いの例 |
|---|---|
| 今日の仕事に必要な未確認情報 | 確認する相手と返答予定を決める |
| 手順全体の改善要望 | 別に整理して話す機会を決める |
| 上司の権限外の要望 | 相談先と、本人へ伝える予定を決める |
| 本人の考えがまだまとまらない点 | 整理する問いを一つ決める |
この扱いを決めることが、面談の外でも話を受け止める方法になります。今日扱わないことと、今後も扱わないことを混同しないようにします。
同じ話へ戻ったときの扱い
いったん整理した後、本人が同じ話をもう一度始めることがあります。要約が意図と違っていたのか、大事な点が残っているのかを確かめます。同じ内容だからと、すぐに打ち切る必要はありません。
一方、同じ出来事の説明が続き、今日の判断が進まない場合は、何が決まれば前に進めるかを尋ねます。話を聞く時間と、選択を考える時間を区別する方法です。
上司の回答が曖昧なままだから、本人が繰り返している可能性もあります。確認すると言ったこと、まだ答えられないことを明確にします。聞き方だけを直しても、上司側の返答が不足していれば、同じ論点は残ります。
要約を返す際は、話の順番を変えても、本人が強調した点は落とさないようにします。
次の練習で、要約を一度だけ入れる
話を整理する練習では、相手の内容を三つ程度の見出しにまとめてみます。数をそろえることが目的ではないので、二つでもかまいません。要約の後に、認識が合っているかを確かめる言葉を添えます。
そのうえで、今日扱う論点を相談します。毎回の発言を短くしようとするより、一度だけ要約を入れる場面を決める方が、変化を振り返りやすくなります。流れの全体は1on1の進め方と部下面談のコツで確認できます。