管理職のアセスメント研修では、案件処理演習や面談演習と並んで、グループ討議がよく組み込まれます。数人の受講者で課題について話し合い、時間内に結論を出す演習です。
討議の間、評価者は部屋の後ろや横で、受講者の発言や行動を記録していることが多いと考えられます。この記事では、評価者がどんな行動を記録していそうか、そこから逆算した準備の仕方を説明します。
※この記事に出てくる討議と発言は、説明のために作った架空のものです。評価の仕組みは、実施する会社や機関によって違います。
アセスメントの討議の特徴
採用の面接のグループディスカッションと比べると、アセスメントの討議には次のような特徴があると考えられます(推測)。会社や機関によって違うので、目安として見てください。
| 特徴 | 中身 |
|---|---|
| 評価の観点が決まっている | 管理職に求める行動の観点(判断、対人、統率など)ごとに見る |
| 行動を記録する | 「誰が、いつ、何を言ったか」を書き留め、後で観点に振り分ける |
| 個人ワークと組み合わせる | 討議の前に一人で資料を読み、自分の案を書く時間がある |
| 振り返りがある | 討議の後に、自分の行動を振り返る用紙を書く |
記録の対象は、発言の中身に限りません。ほかの人の話をどう受けたか、どう返したかも、関わり方として書き留められると考えておくほうが安全です。発言の回数が多くても、人の話をさえぎってばかりでは、対人の観点で評価が下がるおそれがあります。
アセスメント研修の全体像は、アセスメント研修とはで説明しています。
評価者が記録する行動
評価の観点は、会社や機関ごとに名前が違います。ここでは、多くの観点に共通しそうな行動を、記録に書きやすい「誰が何をした」の形に置きかえました。
| 観点の系統 | 記録されやすい行動 |
|---|---|
| 問題をつかむ | 資料の数字や事実を示して、論点を整理した |
| 判断する | 判断の基準を出した。選択肢を比べて、選ぶ理由を言った |
| 討議を進める | 進め方を提案した。時間を知らせ、結論に向かわせた |
| 人に関わる | 発言の少ない人に話を振った。ほかの人の案のよい点を認めた |
| 意見を通す | 反対意見を根拠とともに出した。必要なときは、自分の案を引っ込めた |
| 配慮する | 相手の話を最後まで聞いた。強い言い方をしなかった |
この表は、自分の行動を振り返る点検表としても使えます。討議の練習の後に、どの行動が出たか、出なかったかに印を付けます。
個人ワークとのつながり
アセスメントの討議では、討議の前に個人ワークの時間が置かれることがあります。資料を読み、自分の案と理由を書く時間です。
個人ワークでの準備が、討議での発言の質を決めます。個人ワークで書いておきたいのは、次の3つです。
- 自分の案と、その理由:1つに絞り、理由を2つ
- 判断の基準:何を重く見て選ぶか
- 資料の中の、使える数字や事実:3つほど
討議では、個人ワークで書いた自分の案に固執しないことも大切です。ほかの人の案のほうが基準に合うなら、そちらに乗り、自分の案のよい部分を足す形で貢献します。よりよい案が出たときに自分の案を引っ込めるのは、負けではなく、結論の質を優先した行動として記録されえます。
個人ワークのメモの形
個人ワークのメモは、討議の中でちらっと見て使えるように、短く書きます。たとえば、架空の「新しい営業所の最初の半年で何を優先するか」という課題なら、次のような形です。
- 案:既存の取引先の近くから顧客を開拓する
- 理由:移動が短い。紹介を受けやすい
- 基準:半年で売上が立つか、人手が足りるか
- 使える事実:資料の地域別の見込み客の数、採用の応募の数
メモを文章で書き込むと、討議の中で読み上げることになりがちです。言葉は短くして、自分の言葉で話す余地を残します。
記録に残りにくい行動
評価者が書き留められるのは、外から見える行動です。次のような行動は、本人が意識していても、記録に残りにくいものです。
- 心の中で、人の意見をよいと思っていた(口に出していない)
- 資料の数字に気づいていた(発言で示していない)
- 時間が気になっていた(声に出して知らせていない)
どれも、一言足すだけで記録に残る行動に変わります。「今の案はよいと思います」「資料の2枚目に数字があります」「残り10分です」と、短く口に出すことを意識します。
討議の後の振り返り
討議の後に、振り返りの用紙を書かせる形式があります。「討議の中で、自分の果たした役割は」「もう一度やるなら、何を変えるか」といった問いです。
振り返りでは、次の点に気をつけます。
- 事実で書く:「積極的に発言した」ではなく、「開始5分で、判断の基準を2つ提案した」
- よくなかった点も書く:「後半、ほかの人の意見を聞かずに自分の案を繰り返した」
- 次にどうするかを書く:「反対意見を受けたら、まず相手の根拠を聞き返す」
振り返りの書き方の型は、試験の前に決めておけます。当日ゼロから考えると、時間が足りなくなりやすいところです。
準備の仕方
グループ討議は、一人では伸ばしにくい演習です。それでも、一人でできる準備はあります。
| 準備 | やり方 |
|---|---|
| 発言の型を決める | 論点の整理、基準の提案、反対意見、時間の知らせ、の4つの言い回しを準備する |
| 個人ワークの練習 | 資料つきの課題を1つ選び、15分で自分の案・基準・数字を書く |
| 振り返りの型を決める | 事実、よくなかった点、次にどうするか、の3段で書く |
| 同僚との練習 | 可能なら、3〜4人で30分の討議を1回試す |
準備の中でいちばん効くのは、同僚との練習です。1回でも人と話し合ってみると、発言の型を出すタイミングがつかめます。
当日は、評価者の目を意識しすぎないことも大切です。評価者を見ながら発言すると、討議の相手に向き合っていないように見えます。話している相手の方を向いて話します。
記録に残る行動を、司会以外の立場からどう出すかは、グループ討議で司会をしない人の評価のされ方に発言の例をまとめています。基準を決めてから案を比べる、という討議の流れそのものは、グループ討議(昇格試験)の進め方が入口になります。
評価者や進行役が口を挟んだとき
アセスメントの討議では、評価者や進行役が途中で口を挟むことがあります。「その案では予算が足りませんね」「もっと別の見方はありませんか」といった一言です。
こうした一言は、討議を深めるきっかけとして受け止めます。慌てて案を全部捨てたり、反発したりすると、条件が変わったときの動き方として、そのまま記録に残りかねません。
- 指摘を受け止める:「予算の点は、確かに足りません」
- 討議の場に返す:「予算の範囲に収めるには、どこを削れるか、みなさんの意見を聞かせてください」
司会でなくても、この返しはできます。条件が変わったときに討議を立て直す発言は、評価者の目に留まりやすいと考えられます。
架空の例:評価者の記録から見えること
場面:5人の討議で、「新しい営業所の立ち上げで、最初の半年に何を優先するか」を30分で決めます。
ある受講者Hさんの行動を、評価者が記録したとすると、次のような形になります(架空)。
| 時間 | 記録された行動 |
|---|---|
| 3分 | 資料の数字から、見込み客の多い地域を示した |
| 10分 | 「採用と顧客開拓、どちらを先にするかで分かれていますね」と論点を整理した |
| 18分 | 他の人の案を受け入れ、自分の案の一部を足す形を提案した |
| 26分 | 残り時間を知らせ、結論をまとめる言い方を提案した |
一方で、「20分ごろ、発言の少ない人の話をさえぎった」という記録が残ることもありえます。よい行動とよくない行動の両方が記録され、観点ごとに振り分けられる、と考えて準備します。
Hさんの記録を観点に振り分けると、3分の行動は「問題をつかむ」、10分は「討議を進める」、18分は「人に関わる」と「意見を通す」、26分は「討議を進める」に入ります。20分のさえぎりは「配慮する」の側で、よくない記録として残ります。
このように、一つ一つの行動は小さくても、観点ごとに数えると、強いところと弱いところがはっきり出ます。練習の後に自分の発言を書き出し、同じように観点へ振り分けてみると、記録される側から見た自分の姿に近づけます。
一人で確かめるときの限界
討議は相手がいないと練習しにくく、自分の行動が評価者にどう見えたかも、自分ではわかりにくいものです。昇格パスにも、グループ討議の演習はありません。同僚との練習の機会があれば、一人が評価者役になって、この記事の表で行動を記録してみると、記録される側の感覚がつかめます。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で1回ずつ練習できます。答えると「具体的には」などの深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。考えを根拠とともに短く言う練習は、討議で記録に残る発言にもつながります。
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