昇格試験やアセスメントのグループ討議では、「司会を取らないと評価されない」と考える人がいます。けれども、司会は1つの討議に1人だけです。ほかの参加者は、司会以外の立場で討議に加わることになります。

この記事では、司会をしない人が、どんな発言で討議に貢献し、評価につなげられるかを説明します。

※この記事に出てくる討議と発言は、説明のために作った架空のものです。

司会が有利とは限らない

グループ討議で評価されるのは、役割の名前ではなく、討議の中での行動だと考えられます(推測)。司会を取っても、話を回すだけで中身に踏み込まなければ、評価につながりにくいことがあります。逆に、司会でなくても、討議を前に進める発言をすれば、その行動が評価の対象になります。

討議を前に進める行動を、役割と切り離して並べると、次のようになります。

  • 論点を整理し、話し合う順番を示す
  • 判断の基準を出し、選択肢を比べる
  • 反対意見や別の見方を、根拠をつけて出す
  • ほかの人の意見を取り込み、よりよい案にする
  • 時間を意識させ、結論に向かわせる
  • 発言の少ない人に話を振る

このうち、司会だけができる行動はほとんどありません。司会でない人も、どの行動でも貢献できます。

時間配分や結論のまとめ方を含めた討議の流れは、グループ討議(昇格試験)の進め方をあわせて読むと、どの段階でどの発言が効くかがつかみやすくなります。

論点を整理する発言

討議が始まってしばらくすると、話があちこちに飛ぶことがあります。そのときに、論点を整理する発言をすると、討議の流れを前に進められます。

  • 「ここまで、費用の話と、人手の話の2つが出ていると思います。どちらから決めましょうか」
  • 「目的をもう一度確かめたいのですが、今回は来期の売上を伸ばす案を1つ選ぶ、ということでよいでしょうか」
  • 「選ぶ基準を先に決めると、比べやすくなると思います。費用と、効果が出るまでの期間の2つでどうでしょう」

3つ目の、判断の基準を先に出す発言は、とくに効果があります。基準が決まると、選択肢を比べる話し合いに移れます。基準なしで選択肢を出し合うと、好みの言い合いになりやすいからです。

反対意見の出し方

討議で全員が同じ方向に流れているときに、別の見方を出せると、討議の質が上がります。ただ、出し方を誤ると、場の空気を壊したように見えることもあります。

反対意見は、次の順で出します。

  1. 相手の案のよい点を認める:「A案は、すぐに始められる点がよいと思います」
  2. 気になる点を、根拠とともに言う:「ただ、資料では、人手が今より2人足りなくなるので、続けられるかが気になります」
  3. 代わりの案か、確かめる問いを出す:「人手の点を補う方法があれば、A案でよいと思います。何か案はありますか」

相手を言い負かすことは目的ではありません。反対意見は、結論をよくするための材料として出します。

時間を意識させる一言

討議の大きな失点は、時間内に結論が出ないことです。司会でなくても、時間を意識させる一言で貢献できます。

  • 「残り15分です。そろそろ2つに絞りませんか」
  • 「残り5分なので、結論をまとめる人を決めましょう」
  • 「この点は決めきれないので、条件付きでA案、という形でまとめてはどうでしょう」

時間を言うときは、責めるような言い方にならないようにします。「時間がないですよ」ではなく、次に何をするかの提案とセットで言います。

まとめに参加する

討議の終わりには、結論をまとめる場面があります。司会がまとめる場合でも、司会でない人がまとめに参加する方法はあります。

  • 結論の言い方を提案する:「結論はA案で、理由は費用と期間の2つ、ということでよいでしょうか」
  • 抜けている点を補う:「B案を選ばなかった理由も、一言入れておきませんか」
  • 発表の役を引き受ける:結論を発表する役が決まっていなければ、手を挙げる

「どれも大事」のような折衷のまとめは、何も選んでいないように見えやすいところです。選んだ案と、選ばなかった案の理由をはっきりさせるまとめを提案します。

やらないほうがよい発言

司会でない立場で目立とうとして、かえって評価を下げやすい発言もあります。

  • 司会の進行を奪う:司会がいるのに、勝手に次の論点へ移す。提案は司会に向けて出します
  • 人の話をさえぎる:自分の意見を早く言いたくても、相手の話が終わるまで待ちます
  • 同じ意見を繰り返す:一度出した意見を何度も言うと、ほかの意見を聞いていないように見えます
  • 資料にない話を持ち込む:自分の会社の事情など、討議の前提にない話は、議論をそらします

どれも、討議を前に進めたいという気持ちから出やすい発言です。発言する前に、「この一言で、討議は結論に近づくか」と一度考えます。

書記や時間係を引き受けたとき

司会以外の役割として、書記や時間係を頼まれることもあります。どちらも、うまく使えば討議を前に進める立場になります。

書記は、出た意見を書き留めるだけの係ではありません。ホワイトボードや用紙に、意見を「基準」「案」「気になる点」に分けて書くと、それ自体が論点の整理になります。書きながら、「今の意見は、費用の基準の話として書いてよいですか」と確かめると、整理する発言にもなります。

時間係は、残り時間を伝えるだけでなく、次の段階への切り替えを提案できる立場です。「残り20分なので、ここからは2つの案を比べる時間にしませんか」と、時間と次の動きをセットで言います。

どちらの役割も、自分の意見を言わなくてよい役ではありません。役割の仕事をしながら、案への意見も一度は出しておきます。

流れが一つの案に決まりかけたとき

討議の後半で、全員が一つの案に傾き、検討が浅いまま決まりそうになることがあります。司会でない人が、ここで役に立てる場面です。

  • 「決める前に、この案の弱い点を一つだけ確かめておきませんか」
  • 「選ばなかったB案の理由を、発表で言えるように整理しておきましょう」

流れを止めるのではなく、結論の質を上げるための一言として出します。反対のための反対にならないよう、短く、具体的に言います。

発言が少ないと感じたとき

討議の途中で、自分の発言が少ないと感じることもあります。焦って中身のない発言を増やすより、次の発言を1つ入れることを考えます。

  • それまでの議論を短くまとめる
  • 発言していない人に意見を聞く:「〇〇さんは、どう思われますか」
  • 資料の数字や事実を示す:「資料の3ページに、去年の数字が出ています」

発言の数より、討議を前に進めた発言があるかが問われると考えられます。評価者が討議の中で何を書き留めているかは、アセスメント研修のグループ討議で取り上げています。

架空の例:司会でない人の発言

場面:6人の討議で、「来年度、店舗の人手不足に対して、会社として何に取り組むか」を40分で決めます。司会は別の人が務めています。

Jさんは、次のような発言をしました。

時間 Jさんの発言 行動
5分 「案を出す前に、選ぶ基準を決めませんか。費用と、半年で効果が出るかの2つでどうでしょう」 基準の提案
15分 「採用を増やす案はよいと思います。ただ、資料では応募が去年より減っているので、定着の案と組み合わせたほうがよいと思います」 根拠のある反対意見
25分 「まだ話していない〇〇さんは、店舗の経験からどう見ますか」 発言の少ない人に話を振る
32分 「残り8分です。定着の案に絞って、具体策を2つ決めませんか」 時間を意識させる

Jさんの発言は4回ですが、どれも討議を前に進めています。

一人で確かめるときの限界

グループ討議は、相手がいないと練習しにくい演習です。発言の言い回しは準備できますが、ほかの人の発言に合わせて出せるかは、実際に討議してみないとわかりません。昇格パスにも、グループ討議の演習はありません。

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