上司から「今年は受けてみたら」と言われた。順番が来たので受験の案内が届いた。そう言われても、気が進まないことはあります。
受けたくない気持ちは、おかしなことではありません。ただ、気持ちのまま断ると、後で「あのとき確かめておけばよかった」と思うことがあります。この記事では、辞退を決める前に確かめておくことを、順に整理します。受けるように説得する記事ではありません。
※この記事に出てくる人物と職場は、説明のために作った架空のものです。
受けたくない理由を分ける
「受けたくない」の中には、いくつかの違う理由が混ざっていることが多いものです。まず紙に書き出して、次の4つに分けてみます。
| 理由の種類 | 例 | 確かめること |
|---|---|---|
| 試験そのものが不安 | 論文が書けない、面接が苦手 | 形式と準備にかかる時間 |
| 昇格後の仕事が不安 | 部下をまとめる自信がない、責任が重い | 役職の実際の仕事の中身 |
| 生活との両立 | 育児や介護、通院、残業が増えそう | 働き方と勤務の決まり |
| お金と損得 | 残業代がなくなる、割に合わない | 給与の規程と自分の場合の計算 |
分けてみると、「試験が不安」なだけで、昇格そのものは嫌ではない、と気づく人もいます。逆に、生活との両立が理由なら、試験の準備をいくら工夫しても気持ちは晴れません。理由によって、次に確かめることが変わります。
辞退した場合の影響の確かめ方
辞退したときに何が起きるかは、会社や自治体の制度によって大きく違います。思い込みで決めず、次の点を確かめます。
- 次の機会はあるか:翌年も受けられるのか、年齢や在籍年数の条件で受けられなくなるのか
- 評価への影響はあるか:辞退が人事評価に書かれるのか、何も記録されないのか
- 今の等級のまま上がる道はあるか:試験を受けずに上がれる上限はどこか
- 専門職の道はあるか:管理職ではなく、専門性で処遇される仕組みがあるか
調べる先は、人事規程や昇格の制度の説明資料、人事部門です。上司に聞きにくいときは、規程を自分で読むか、人事部門に制度として問い合わせる形にすると、気持ちの話をせずに済みます。
制度の解釈や、不利益な扱いが心配な場合の判断は、この記事ではできません。社内の人事部門や相談窓口、労働組合など、正式な窓口に確かめてください。
給与と仕事の変化
昇格すると、基本給や手当が上がる一方で、残業代の扱いが変わることがあります。上がると思っていたのに、残業の多い月は手取りが減った、という話もあります。
自分の場合にどう変わるかは、次の3つをそろえて計算します。
- 今の1年分の給与(残業代と賞与を含む)
- 昇格後の等級の給与と手当(規程の表から)
- 昇格後に残業代がどう扱われるか(規程から)
仕事の変化は、今その役職にいる人の1週間を思い浮かべると具体的になります。会議の数、部下との面談、上からの資料の依頼、夜や休日の連絡。自分の生活と並べて、無理がないかを考えます。
管理職になりたいかどうかを尋ねた調査もあり、その数字は数字で見る昇格・昇進で紹介しています。迷うのは珍しいことではありません。
受けると決めた場合の最小限の準備
確かめた結果、「今年は受けてみる」と決める人もいます。気が進まないまま受ける場合は、準備を広げすぎないことが大切です。最小限の準備は次の3つです。
- 形式を知る:面接だけか、論文やアセスメントもあるか。時間と字数
- 話す材料を5つ書く:実績、課題、失敗、育成、昇格後にしたいこと。それぞれに事実と数字を1行
- 一度だけ通しで練習する:面接なら声に出して、論文なら時間を計って
面接では「なぜ昇格したいのか」を尋ねられることが多く、乗り気でない人ほど言葉に詰まりやすい質問です。熱意を作らずに、今の立場でやりにくいことと、役職に就けばできることを並べて答える組み立て方は、「なぜ管理職(主任・係長)になりたいのか」に答えにくい人の準備で扱っています。
乗り気でないまま準備すると、答えに気持ちがにじむことがあります。架空の例で比べます。
- 「上司に言われたので受けました」:事実でも、役職で何をする人かが見えない
- 「迷いはありましたが、今の手順の引き継ぎを変えられる立場になれるなら、そこから始めたいと考えて受けました」:迷いを隠さず、役職でしたいことが1つ見える
迷った事実は、隠さなくてかまいません。迷ったうえで、何を考えて受けると決めたかを短く言えれば十分です。
辞退するときの伝え方
辞退を決めたら、伝え方で関係をこじらせないようにします。気をつけたいのは次の点です。
- 早めに伝える:締め切りの直前より、決めた時点で
- 理由は短く、事実で:「今は家庭の事情で、昇格後の働き方を続けられる見込みが立たないため」のように
- 今の仕事への姿勢を添える:「今の担当では、引き続き〇〇に力を入れます」
- 次の機会について一言:「状況が変わったら、改めて相談させてください」と言えるなら言う
会社や上司への不満を理由にすると、話がそちらに流れます。辞退の理由と、職場への意見は、別の機会に分けたほうが伝わりやすくなります。
架空の例:迷っている係長代理
食品メーカーの物流部門で係長代理をしているBさん(39歳)は、課長の試験を勧められました。最初は「とにかく受けたくない」と思いました。
理由を書き出すと、次の2つでした。論文を書いたことがなく不安なこと。子どもの送り迎えがあり、夕方以降の会議が増えるのが心配なこと。
規程を読むと、翌年以降も受けられることが分かりました。人事部門に問い合わせると、課長の会議は原則として日中に行う運用だと説明されました。論文は、材料を集めれば準備できそうだと考えました。
Bさんは、今年は受けると決めました。もし規程や運用が違っていれば、辞退を選んでいたかもしれません。どちらを選んだとしても、確かめたうえで決めたことに意味があります。
決めるまでの期限を区切る
迷う時間が長くなると、準備の時間も、辞退を伝える時間も短くなります。受けるかどうかを決める日を、先に決めておきます。
- 受験の申し込みや辞退の締め切りを確かめる
- 締め切りの1〜2週間前を「決める日」にする
- それまでに確かめること(制度、給与、働き方)を、表の「確かめること」の列から書き出す
- 決める日に、分かったことと分からないことを並べて決める
決める日までに分からないことが残った場合は、分からないまま決めることになります。その場合は、「分からない部分があっても、今年は見送る」「分からない部分は受けながら確かめる」のどちらにするかを、先に決めておくと迷いが減ります。
上司から返事を急かされたとき
決める前に、上司から「受けるよね」と聞かれることもあります。その場で答えを出さず、いつまでに返事をするかだけを伝えると、話がこじれにくくなります。
- 「制度を確かめてからお返事したいので、〇日までお時間をください」
- 「家庭の予定を確かめたいので、来週中にお返事します」
返事の期日を自分から言うと、先延ばしではなく、考えている途中だと伝わります。
身近な人と話すときは
受けるかどうかは、自分一人で抱えず、家族や信頼できる人と話してみるのも一つの方法です。話すときは、次の順にすると、気持ちの話だけで終わりにくくなります。
- 理由を4つに分けた表を見せる
- 確かめた事実(辞退の影響、給与の計算、働き方)を伝える
- まだ分からないことを挙げ、いつまでに誰に確かめるかを決める
職場の同僚に相談するときは、話が広まることも考えに入れます。制度の確認は人事部門に、気持ちの整理は職場の外の人に、と分けると、話しやすくなります。
一人で確かめるときの限界
制度や給与の確認は、規程と人事部門への問い合わせで一人でも進められます。ただ、受けると決めた後の面接で、迷いを抱えたまま深掘りに答えるとどう聞こえるかは、自分では分かりにくいものです。気が進まなくても、一度声に出して答えておくと、本番の負担がかなり変わります。
昇格パスの無料体験では、登録の後に、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で1回ずつ練習できます。答えると「具体的には」などの深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。
個人で申し込んで使え、実名や勤務先の登録は要りません。会社に知らせることもありません(ログインにはメールアドレスか LINE を使います)。受けるかどうかを決める材料の一つにしてください。
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