昇格試験の中に、筆記試験が入っている会社があります。面接や論文に比べると情報が少なく、何を勉強すればよいのか見当がつかない、という人も多いはずです。
筆記試験の中身は、会社によって大きく違います。一般常識を問うもの、経営や会計の知識を問うもの、自社の制度を問うもの、短い論述を求めるものなどです。
この記事では、自分の会社の筆記試験で何が出そうかの見当の付け方と、分野ごとの準備の仕方を説明します。特定の会社の問題は扱いません。
※この記事に出てくる会社、人物、例は、説明のために作った架空のものです。
筆記試験で出やすい分野
昇格試験の筆記試験で出る分野は、この記事では大きく次の5つに分けて考えます。実際の組み合わせは会社ごとに違います。
| 分野 | 中身の例 |
|---|---|
| 一般常識・ビジネス常識 | 敬語、文書の書き方、ビジネスの用語、計算 |
| 時事 | 経済や社会の動き、自社の業界の動き |
| 経営・管理の知識 | 経営戦略、マーケティング、会計の基本、人事・労務の基本 |
| 自社の知識 | 経営の方針、中期の計画、就業規則や人事の制度、自社の数字 |
| 論述 | 短い字数で、考えや対応を書く設問 |
会社によっては、外部の業者が作るテストや、パソコンで受けるテストを使うこともあります。
見当の付け方
最初にすることは、自分の会社の筆記試験で、どの分野が出るかを確かめることです。
- 人事からの案内に、試験の分野や範囲が書かれていないかを読む
- 前に受けた先輩に、どんな種類の問題が出たかを聞く(問題そのものを聞き出す必要はない)
- 会社が受験者向けに配る資料(教材、推薦図書、社内の研修の資料)があるかを確かめる
案内に「経営の基礎知識」とあれば、経営・管理の知識が中心だと考えられます。「当社の理念と方針について」とあれば、自社の知識が中心です。分野がわかれば、準備の時間を配分できます。
一般常識・ビジネス常識の準備
一般常識やビジネス常識は、範囲が広く、すべてを覚えるのは難しい分野です。社会人として長く働いていれば、多くはすでに身についています。
準備は、問題集を1冊選び、一通り解いて、間違えた分野だけを見直す形にすると、使う時間を絞れます。敬語や漢字、計算の問題は、解き慣れておくだけで時間を短くできます。
時事の準備
時事は、試験に近い時期の動きを中心に見ておくと準備しやすくなります。ただ、ニュースのすべてを追うのは無理があります。次の3つに絞ります。
- 経済の大きな動き(物価、金利、為替、雇用など)
- 自社の業界に関係する動き(法律の改正、技術の変化、競合の動き)
- 働き方や人事に関係する動き(労働の法律、多様な働き方など)
ニュースを読んだら、「それが自社の仕事にどう影響するか」を一言メモしておきます。論述の設問や、面接で時事を聞かれたときにも、そのメモが材料になります。分野の絞り方と、ニュースを自分の仕事に引き寄せるメモの取り方は、昇格試験の時事問題で詳しく扱っています。
経営・管理の知識の準備
経営や管理の知識を問う試験では、入門書を1冊通して読み、問題集で量をこなす形が基本です。
この分野では、似た言葉の区別でつまずきやすくなります(推測)。たとえば、次のような組み合わせです。
- 売上総利益と営業利益の違い
- 固定費と変動費の違い
- 効率(少ない手間で)と効果(よい結果を)の違い
似た言葉を表にまとめ、自分の言葉で違いを言えるようにしておくと、選択式でも論述式でも対応しやすくなります。
自社の制度・数字の準備
自社の知識を問う問題は、範囲が決まっているので、準備の効果が出やすい分野です。
- 経営の方針、理念、中期の計画の要点
- 自社の売上や利益、社員数などの大きな数字(公開されている範囲で)
- 就業規則や人事の制度の要点(昇格の仕組み、評価の仕組み、労働時間の決まり)
自社の資料は、社内の情報の置き場所や、株主向けの資料、社内報にあることが多いはずです。管理職として部下に説明できる程度に、要点をまとめておきます。
論述式の設問への備え
筆記試験の中に、短い論述を求める設問があることもあります。「部下が〇〇したら、どう対応するか」「職場の課題を一つ挙げ、対策を述べよ」のような形です。
短い論述でも、論文と同じ組み立てが使えます。
- 結論を先に書く
- 理由か事実を1つ書く
- 何をするかを具体的に書く
数百字の論述なら、序論を長く書く余裕はありません。最初の1文で結論を書き、残りで理由と行動を書く形なら、限られた字数でも筋が伝わります。書く前に材料と骨組みを決めておく考え方は、昇任・昇格論文は「書く前」で決まるが参考になります。
時間の配分
筆記試験では、最後まで解き終わらずに点を落とすことがあります。次の配分を目安にします。
- 最初の数分で全体を見渡し、論述の設問があるかを確かめる
- 選択式は、迷ったら印を付けて先に進み、最後に戻る
- 論述の設問があれば、その時間を先に確保しておく
パソコンで受けるテストでは、前の問題に戻れない形式もあります。案内で形式を確かめ、問題集でもその形式に慣れておきます。パソコンのテストを自宅などで受ける形なら、受ける日を締切の間際に置かず、余裕のある日にしておくと、体調を崩したときにも慌てずに済みます。
架空の例:準備の時間の割り振り
場面:食品メーカーの営業部で働くIさん(35歳)は、2か月後に係長の昇格試験を受けます。案内には「筆記試験(経営の基礎知識・当社の方針)と面接」とありました。
Iさんは、使える時間を、次のように割り振りました。
- 経営の基礎知識:入門書を1冊読み、問題集を2周(全体の半分の時間)
- 当社の方針:中期の計画と社長の年頭のあいさつを読み、要点を10行にまとめる(全体の2割)
- 時事:業界紙の見出しを週に1回読み、自社への影響を一言メモする(全体の1割)
- 残り:面接の準備
筆記の範囲がわかったことで、準備の時間を無駄にせずに済みました。
範囲がわからないときの進め方
案内に分野が書かれておらず、聞ける先輩もいないこともあります。そのときは、次の順で準備します。
- 自社の知識(方針、計画、制度)を先に固める。範囲が決まっていて準備の効果が出やすく、面接の材料にもなる
- 経営・管理の基本の言葉を、入門書の目次に沿って一通り押さえる
- 時事は、自社の業界に関係する動きだけに絞る
- 一般常識は、問題集を1冊解く程度にとどめる
範囲がわからない試験で、すべての分野を深く準備するのは無理があります。広く浅く押さえ、自社の知識だけは深く、という配分にしておけば、大きく外すことは少ないと考えられます(推測)。
筆記試験の点数が、合否のどれくらいの重みを持つかも会社によって違います。面接や論文の準備の時間を削りすぎないように、全体の計画の中で筆記の時間を決めます。
筆記の中の短い論述の組み立て方は、昇格試験の小論文(800〜1,200字)も参考になります。
自社の知識を1枚にまとめる
自社の知識は、資料を読むだけでは覚えにくいものです。読んだ後に、A4の紙1枚に次の項目をまとめておくと、試験の前日にも見返せます。
- 経営の方針や理念を、自分の言葉で1〜2文に言いかえたもの
- 中期の計画の重点を3つ以内で
- 自分の部署の仕事が、その重点のどれにつながるかを1行で
- 昇格や評価の仕組みのうち、受ける役職に関わる部分
3つ目の行は、筆記の論述にも、面接の抱負にもそのまま使えます。方針の言葉を丸暗記するより、自分の仕事とのつながりを言えるほうが、管理職を選ぶ試験の目的に合っています。
筆記以外の準備とのつなぎ方
筆記試験の準備は、面接や論文の準備にもつながります。自社の方針の要点は面接の抱負に、時事のメモは論文の背景に使えます。
一人で確かめるときの限界
選択式の問題は、問題集の答えと照らせば一人でも確かめられます。一方で、論述の設問は、書いたものが問いに答えているか、筋が通っているかを、自分で判断するのが難しいところです。
昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。
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