昇格試験では、自己PRや実績の記述を書類で出したり、面接の最初に話したりすることがあります。就職活動の自己PRと同じように考えて、強みや人柄を並べてしまう人もいます。
昇格試験の自己PRで評価する側が知りたいのは、あなたが上の役職に就いたとき、何をする人かです。この記事では、そのための材料の選び方と、「役割・行動・結果」の型を説明します。
※この記事に出てくる人物と例は、説明のために作った架空のものです。
昇格試験の自己PRで見られること
| 就職活動の自己PR | 昇格試験の自己PR |
|---|---|
| 強み、人柄、学んだこと | 職場での実績と、その中での自分の役割 |
| 将来の可能性 | 上の役職で、その力をどう使うか |
| 会社に入ってからやりたいこと | その役職で、最初に取り組むこと |
評価する側は、受験者の普段の仕事ぶりを、ある程度知っていることが多いと考えられます(推測)。だからこそ、自己PRでは、知られている評判をなぞるより、自分の行動と考えを、具体的な事実で示すことが大事です。
材料の選び方
自己PRに使う実績は、次の3つの基準で選びます。
- 自分の役割がはっきりしている:チームの成果の中で、自分が何を担ったかを言える
- 人を動かした要素がある:後輩に任せた、他部署を巻き込んだ、上司に提案した
- 数字か、目に見える変化で示せる:件数、金額、期間、率。または前後の比較
大きな成果である必要はありません。小さな改善でも、自分の判断と行動がはっきりしていて、人を動かした要素があれば、昇格試験の材料として十分に使えます。
実績を3つ選んだら、次の型で書き出します。
役割・行動・結果の型
| 要素 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 状況 | どんな課題があったか(1文) | 新人の立ち上がりに半年かかっていた |
| 役割 | その中で、自分が何を任されたか | 新人の指導の担当になった |
| 行動 | 自分が何を考え、何をしたか | 最初の3か月で覚える業務を一覧にし、週1回の振り返りの場を作った |
| 結果 | どう変わったか(数字) | 一人立ちまでの期間が、4か月ほどに縮まった |
| 学び | 次に何を変えたか | 一覧を課の全員で使えるようにした |
一番大切なのは「行動」の欄です。ここに、具体的な動詞が並んでいるかを確かめます。「努めた」「心がけた」「意識した」は、行動ではなく気持ちの言葉です。何をしたのかに置きかえます。
役職の視点への引き上げ
実績を書いた後に、もう1文、役職の視点を足します。
- 主任の試験なら:「この経験を生かし、チームの中で後輩の指導を仕組みにしていきます」
- 係長の試験なら:「係長として、この振り返りの仕組みを係全体に広げ、係員に任せる範囲を広げます」
- 課長の試験なら:「課長として、同じ考え方を課の育成の計画にし、係長に運用を任せます」
自分がやった話から、人に任せて広げる話へ。この1文があるかどうかで、昇格試験の自己PRとしての読まれ方が変わると考えられます(推測)。
書類と面接での違い
同じ実績でも、書類と面接では伝え方を変えます。
| 項目 | 書類 | 面接 |
|---|---|---|
| 長さ | 指定の字数に合わせる | 1分程度で一度区切る |
| 構成 | 型の順に、見出しや段落で分ける | 結論から話し、詳しくは深掘りで |
| 数字 | 正確に書く | 1つか2つに絞って言う |
| 気をつけること | 社外秘の情報、個人が分かる情報を書かない | 書類と食い違うことを言わない |
書類で出した自己PRは、面接で深掘りされる前提で準備します。書いた数字や行動について、「具体的には」「なぜそうしたのか」と聞かれても答えられるよう、裏付けの事実を手元に用意しておきます。
避けたい書き方
- 人柄だけを並べる:「責任感が強く、粘り強い」。それを示す事実がないと、評価する側は確かめられません。
- 「チームで」だけ:チームの成果を書いても、自分の役割が見えないと評価しにくくなります。
- 数字のない成果:「大きく改善した」「多くの顧客に喜ばれた」。どれくらいかを書きます。
- 会社や他人への不満:「前任者のやり方が悪かったので」。事実として必要なら短く書き、自分の行動に字数を使います。
- 役職の言葉だけを借りる:「リーダーシップを発揮し」「マネジメント力を生かし」と書いても、何をしたかは伝わりません。任せた、決めた、相談した、といった行動の言葉に置きかえます。
- 盛った数字:深掘りで崩れると、自己PR全体の信頼を失います。
実績が見つからないと感じるとき
「書けるような実績がない」と感じる人は、成果の大きさで材料を探していることが多いと考えられます(推測)。次の問いで、日々の仕事を見直してみます。
- 自分が始めて、今も続いているやり方はあるか
- 後輩や同僚から、よく相談されることは何か
- 前任者から引き継いだときより、よくなったことは何か
- 他部署や外部とのやり取りで、自分が間に入って進めたことはあるか
- 上司から「これは任せた」と言われた仕事は何か
問いに答えが出たら、それぞれについて「前はどうだったか」「今はどうか」を1行ずつ書きます。前と後を並べると、数字がなくても変化が見えてきます。
小さな改善でも、自分の判断と行動、相手の変化がそろっていれば、昇格試験の材料になります。
架空の例:自治体の税務の主任
市役所の税務課で主任をしているQさん(33歳)は、最初、自己PRを次のように書いていました。
私は責任感が強く、どんな仕事も最後までやり遂げます。
Qさんは型に沿って、実績を書き直しました。
- 状況:納付の相談の電話が、月末に集中して長くつながらなかった
- 役割:電話対応の手順の見直しを任された
- 行動:よくある質問を10項目にまとめ、担当者の手元に置いた。月末の担当の割り振りを変えた
- 結果:月末の電話の待ち時間が、半分ほどに減った
- 係長として:同じやり方を、窓口と郵送の問い合わせにも広げる
「責任感」という言葉は消えましたが、最後までやり遂げる人であることは、事実から伝わる形になりました。
字数が指定されているとき
書類の自己PRに字数の指定があるときは、型の要素ごとに字数の目安を決めてから書きます。400字なら、状況に50字、役割に50字、行動に150字、結果に80字、役職の視点に70字ほどです。
一番多く字数を使うのは「行動」です。字数が足りないときは、状況の説明を削り、行動を残します。
字数に余裕があるときも、実績を2つ、3つと増やすより、1つの実績の「行動」を厚くすることをすすめます。誰に相談し、何を決め、どこでつまずいて、どう立て直したか。行動の中の判断が見えると、上の役職でどう動く人かが想像しやすくなります。
書き上げた後の点検
書き終えたら、次の問いで読み直します。
- 「私は」で始まる行動の文が、2つ以上あるか
- 「努めた」「心がけた」「意識した」が残っていないか
- 数字か、前と後の比べられる変化が、1つ以上あるか
- 人を動かした場面(任せた、巻き込んだ、提案した)が入っているか
- 最後の1文に、受ける役職での動き方が書かれているか
- 社外秘の数字や、個人が分かる情報が入っていないか
1つでも抜けていたら、その要素だけを書き足します。全体を書き直す必要はありません。
面接で「自己PRを1分で」と言われたとき
面接の最初に、自己PRを口頭で求められることもあります。書類と同じ型を、話す順に組み替えます。
- 最初の一文で、何をした人かを言う(「新人の立ち上がりを早める仕組みを作りました」)
- 次に、状況と自分の役割を1文ずつ
- 行動を2つに絞って話す
- 結果の数字を1つ言う
- 最後に、受ける役職でどう広げるかを1文で言う
書類の文章をそのまま暗唱すると、書き言葉が残って聞き取りにくくなります。メモには要素の見出しだけを書き、話す言葉は毎回その場で組み立てます。
面接で実績を話す練習は、昇格面接でよく聞かれることの準備の手順も参考にしてください。
一人で確かめるときの限界
書類の自己PRは、点検の問いで一人でも整えられます。ただ、書いた行動や数字について「なぜそうしたのか」と聞かれることがあります。そのとき書類と食い違わずに答えられるかは、問われてみないと分かりません。
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