銀行、保険、証券などの金融の会社でも、役職に上がる前に論文や面接を課すところがあります。形式は会社ごとに違いますが、金融ならではの材料があります。法令や社内の決まりを守ること(コンプライアンス)と、お客さまの利益を第一に考えること(顧客本位)です。

この記事では、金融の職場で論文と面接の材料をどう集め、どう語るかを説明します。特定の会社の試験の中身には触れません。

※この記事に出てくる職場と例は、説明のために作った架空のものです。論文の決まりに合わせ、そのまま写せる段落や全文の見本は載せていません。

金融の昇格試験でよくある形式

昇格試験の形式は、会社が出す案内で確かめるのが第一です。そのうえで、多くの会社に見られる組み合わせは次のようなものです(推測)。

形式 中身の例 準備の中心
論文 職場の課題と解決策、管理職として取り組みたいこと 自分の職場の事実と数字
面接 実績、抱負、仮定の場面への対応 実績を自分の行動で語る
筆記・資格 業務の知識、社内の決まり、外部の検定 範囲を決めて問題演習
演習 案件処理演習、部下面談の演習 判断の理由と、任せ方

形式の全体像は、昇格試験の形式を知るにまとめました。ここでは、金融の職場で差がつきやすい材料に絞ります。

コンプライアンスの材料

金融の職場では、コンプライアンスは「気をつけること」ではなく、仕事の土台です。そのぶん、論文でも面接でも、どこにでも書ける一般論になりやすいテーマです。

「法令遵守を徹底し、意識を高める」と書いても、読む側には何も伝わりません。材料にするのは、自分の職場で実際に起きうる問題です。

  • 手続きの確認が、特定の人の経験に頼っていないか
  • 忙しい時期に、確認の手順が省かれる場面はないか
  • 小さなミスの報告が、上に届くまでに時間がかかっていないか
  • 新しい商品や手続きの決まりを、全員が同じように理解しているか

見つけた問題は、仕組みと人の両方から手を打つ形で書きます。たとえば、確認の手順を見える形にする(仕組み)と、ミスを早く言える雰囲気を作る(人)を組み合わせます。

コンプライアンスのテーマの論文の組み立ては、昇格論文のテーマ「コンプライアンス・不祥事の防止」で詳しく説明しています。

顧客本位の材料

金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を2017年3月に定め、2021年1月と2024年9月に改訂しています。顧客の最善の利益を考えた業務運営を、金融の会社に求める考え方です。各社は、この原則に沿った取組方針を公表しています。

昇格試験で、この原則の中身を暗記して書く必要はありません。大切なのは、自分の会社の取組方針と、自分の職場の仕事をつなげて語れることです。

材料を集めるときは、次の問いで職場を見直します。

  1. お客さまに説明するとき、伝え方が担当者ごとにばらついていないか
  2. 商品を勧める理由が、お客さまの事情から出ているか、目標の数字から出ているか
  3. お客さまの声(苦情や問い合わせ)が、仕事の見直しに生かされているか

自社の取組方針は、会社のホームページなどで公開されていることが多いので、一度読んでおきます。面接で「会社の方針をどう受け止めているか」と聞かれたときの材料にもなります。

営業目標と育成

金融の職場で多い悩みが、数字の目標と顧客本位の両立です。目標を追うと、お客さまの事情より商品が先に立つおそれがあります。お客さまの事情を優先すると、目標に届かないこともあります。

昇格試験で見られるのは、どちらか一方を選ぶことではないと考えられます(推測)。両方を満たす道を、管理職として仕組みで作れるかです。

  • 目標の立て方:件数だけでなく、継続の率や、お客さまの声も見る
  • 進み具合の確かめ方:数字の会議で、説明の質も話題にする
  • 育成:若手が説明の仕方を先輩から学べる場を作る

育成は、金融の論文でも面接でもよく出る材料です。資格の勉強を励ますことに加えて、お客さまへの説明を一緒に振り返る、といった日々の仕事の中での育て方を書けると、具体的になります。

両立の書き方を直す例

よくある書き方:「顧客本位を徹底しつつ、目標の達成にも全力で取り組む」

評価する側からの見え方(推測):両方を大事にする姿勢は分かります。けれども、2つがぶつかった場面でどう判断するのか、部下にどう示すのかが書かれていません。管理職の論文としては、ここがいちばん知りたいところだと考えられます。

直し方:ぶつかりやすい場面を1つ具体的に挙げます。たとえば、期末に件数が足りないとき、お客さまの事情に合わない商品を勧めたくなる場面です。そのうえで、課の会議で件数と並べて何を確かめるか、部下が迷ったときに誰に相談できるかを書くと、仕組みとしての両立が見えてきます。

面接での話し方

面接では、実績を「状況、役割、行動、結果、学び」の順で話します。金融の職場では、結果の数字(獲得件数や金額)だけを話しがちです。数字に加えて、どう達成したかの行動を語ります。

  • 弱い言い方:「年間目標を120%達成しました」
  • 伝わる言い方:「担当の先のうち、更新が近い40件を先に洗い出し、説明の資料を作り直してから回りました。結果として目標を上回り、資料は課の全員で使う形にしました」

仮定の質問では、コンプライアンスに関わる場面がよく出ます。「部下が手続きを省いていたら」「目標のために無理な勧め方をしている部下がいたら」といった問いです。答えの骨組みは、事実を確かめる、本人の話を聞く、決まりに沿って判断する、上に報告する、再発を防ぐ、の順です。見過ごさない立場は、迷わずはっきり言います。

金融の実績は、件数や金額の数字が先に立ちがちです。数字にしにくい事務の改善やお客さまへの対応を、どう実績として示すかは、昇格試験の実績の書き方が参考になります。

筆記・資格との関係

金融の会社では、業務の知識を問う筆記や、外部の検定の取得を昇格の条件にしていることがあります。どれが条件かは会社によって違うので、人事の案内で確かめます。

筆記や資格は、範囲が決まっているぶん、計画を立てやすい準備です。ただし、筆記の勉強に時間を取られて、論文や面接の準備が後回しになることがあります。試験日から逆算して、筆記と論文・面接の時間を分けておきます。

業務の知識を問う筆記の進め方は、昇格試験の筆記試験で扱っています。筆記と論文・面接に何週間ずつ使うかを決めるときは、試験日から逆算する昇格試験の準備計画の表が使えます。

架空の例:材料の整理表

地方銀行の支店で係長を目指すZさんは、論文と面接の両方に使える材料を、次のような表にまとめました。

項目 Zさんの職場の材料
問題 窓口の相続の手続きで、書類の不足による出直しが月に15件ほどある
原因 必要な書類の説明が担当者ごとに違い、案内の紙も古い
顧客本位とのつながり 出直しは、お客さまの時間と手間を増やしている
コンプライアンスとのつながり 確認の手順が人によって違い、確認漏れのおそれがある
打ち手 説明の手順を1枚にまとめ、課で読み合わせる/出直しの件数を毎月確かめる
自分の役割 手順づくりの取りまとめ、若手との読み合わせの進行

一つの材料から、顧客本位とコンプライアンスの両方の話ができています。論文では課題と解決策に、面接では実績や抱負の具体例に使えます。保険や証券の職場でも、手続きの説明や確認の手順に置きかえれば、同じ表の形で材料を整理できます。

一人で準備するときの限界

コンプライアンスや顧客本位の論文は、正しいことを書いているつもりでも、読む側には一般論に見えていることがあります。社内の上司に読んでもらうと、会社の方針の言葉に寄せた直しが中心になり、自分の職場の事実が薄くなることもあります。

昇格パスの論文の演習では、区分(民間・自治体・教員)を選んで練習できます。材料の整理、骨組み、時間を計った本番、観点ごとの採点、書き直しの比較までを一人で進められます。採点では、本文の該当箇所を根拠として示します。

本文を代わりに書くことはしません。論文は無料体験の対象に入っていないため、まずは演習の内容をプランの説明でご確認ください。昇格面接の3問は、登録の後に無料で試せます。

プランの説明を見る 無料体験を見る

関連する記事