昇進試験の面接は、多くの会社で使われている形式です。管理職への昇格で試験やアセスメントを行う企業に中身を聞いた調査では、面接が80.8%でした(労務行政研究所、2022年、197社)。

面接は、一度だけとは限りません。人事の担当者が聞く面接と、役員が聞く面接を分けて行う会社もあります。面接官が違えば、確かめたいことも少しずつ違います。

この記事では、役員面接と人事面接で見られやすい点を分けて説明し、どちらにも通じる準備の仕方をまとめます。

※この記事に出てくる人物と答えの例は、説明のために作った架空のものです。面接官ごとの違いは一般的な傾向で、会社によって異なります。

面接官によって見ていることが違う

面接官は、自分の立場から「この人を上げてよいか」を考えます。立場が違えば、気になる点も違います。

面接官 気にしやすいこと よく出る問いの例
役員 会社の方向と合うか。任せて大丈夫か 会社の課題をどう見ているか。部門をどうしたいか
人事 役職の役割をわかっているか。人を任せられるか 部下の育成、評価、困った部下への対応
直属以外の部門長 他部門と協力できるか 他部署との調整で苦労した経験

どの面接官も、話の中身に加えて「答え方」を見ています。結論から話せるか、深掘りされても落ち着いて答えられるか、という点です。

役員面接で見られること

役員は、日々の仕事ぶりを直接は知らないことが多い立場です。限られた時間で、「この人に部門を任せたら、会社の方向に沿って動くか」を確かめようとします。

役員面接で聞かれやすいのは、次のような問いです。

  • 会社(または事業)の今の課題を、どう見ていますか
  • あなたの部門は、3年後にどうなっているべきですか
  • 管理職になったら、まず何を変えますか
  • 会社の方針に、納得できないところはありますか

ここで気をつけたいのは、自分の担当の話だけで終わらないことです。担当の成果は、会社や部門の課題とつなげて話します。

ずれやすい答え:「今の担当の売上を伸ばしたい」で終わる答えです。役員から見ると、担当者の目線のままに見えやすくなります。

直し方:「部門として〜が課題で、そのために自分のチームは〜をする」と、部門の課題を先に置きます。会社が公表している方針や中期計画があれば、その言葉と自分の話をつなげます。

方針に納得できないかを聞かれたときは、反対意見を言うこと自体は問題ではないと考えられます(推測)。ただし、決まった後は組織として実行する、という姿勢を添えます。

課長以上の面接では、役員面接の問いが中心になることが多いと考えられます(推測)。部門の課題と方針の語り方は、課長・管理職の昇格面接で聞かれることで、問いごとに分けて説明しています。

人事面接で見られること

人事の担当者は、昇進後の役割の定義や、評価の仕組みをよく知っている立場です。「役割をわかったうえで受けているか」「人を任せて大丈夫か」を確かめようとします。

人事面接で聞かれやすいのは、次のような問いです。

  • 今の役職と、昇進後の役職の違いを、どう考えていますか
  • 部下(後輩)を、どう育ててきましたか
  • 評価に納得していない部下がいたら、どうしますか
  • 部下がハラスメントを訴えてきたら、どうしますか

ずれやすい答え:「丁寧に話を聞きます」で終わる答えです。何を、どの順に聞き、どこにつなぐかが見えません。

直し方:事実を確かめる、関係者の話を聞く、判断の基準を示す、上司や人事に報告する、再発を防ぐ、という順で話します。

たとえば「部下から、仕事を抱えきれないと相談されたら」と聞かれたら、次のように骨組みを置きます。

  • どの仕事で手が回らなくなっているかを、本人から具体的に聞く
  • 係やチーム全体の仕事の量と、割り振りの偏りを確かめる
  • 自分の権限で、優先順位や分担を決め直す
  • 自分だけで変えられない部分は、上司に根拠を添えて相談する

人事の担当者は、評価や勤務の制度を知っています。制度の言葉(評価の項目、面談の時期など)を正しく使えるかも、聞いていると考えられます(推測)。自社の手引きを、面接の前に読み直しておきます。ハラスメントや心身の不調など、自分だけで判断すべきでないことは、会社の窓口につなぐ一言を答えに入れておきます。

直属の上司以外に伝わる話し方

面接官の多くは、直属の上司ではありません。普段の仕事ぶりを知らない人に、短い時間で伝える必要があります。

次の3つを意識すると、知らない人にも伝わりやすくなります。

  1. 結論を一文目に置く:「いちばんの成果は、〜です」と先に言います。
  2. 社内の言葉を言いかえる:部署の略語や、内輪のプロジェクト名は、一般的な言葉に直します。
  3. 数字を1つ入れる:期間、件数、割合のどれかを入れると、規模が伝わります。

架空の例で比べます。物流会社の主任のGさん(36歳)は、実績を聞かれて、最初はこう答えていました。

2課のB案件で、例の仕分けの見直しをやりました。

社内の人なら通じますが、役員や人事には伝わりません。Gさんは、次のように言い直しました。

倉庫の仕分けの手順を見直し、出荷ミスを半年で月12件から4件に減らしました。私は、現場の5人と手順を作り直す役でした。

結論、数字、自分の役割が、最初の二文に入っています。

準備する材料の一覧

役員面接と人事面接の両方に備えるには、次の材料を書き出しておきます。1つにつき3〜4行で十分です。

材料 役員面接で使う 人事面接で使う
いちばんの実績(数字つき) ○ ○
部門・会社の課題と、自分ならどうするか ○
昇進後の1年でやること ○ ○
後輩・部下の育成の経験と、相手の変化 ○
困った部下への対応(仮定の問い) ○
失敗と、その後に変えたこと ○ ○
会社の方針と、自分の考えのつながり ○

表の○は目安です。どちらの面接官にも使える材料から先にそろえると、準備が早く進みます。材料に書く社外秘の数字や取引先の名前は、面接で口にしてよい範囲かを、書く段階で確かめておきます。

質問の系統ごとの備えは、昇格面接でよく聞かれることに整理しています。

面接官が複数いるとき

役員と人事が同じ席に並ぶ面接もあります。その場合は、質問した人に向けて答えつつ、ときどきほかの面接官にも目を向けます。

答えの中身は、質問した人の立場に寄せます。役員から聞かれたら会社や部門の話に、人事から聞かれたら育成や評価の話に、材料の使い方を変えます。同じ実績でも、話の締めの一文を変えるだけで、相手の関心に届きやすくなります。

面接官どうしで、前の答えを踏まえた深掘りが続くこともあります。前の答えと食い違わないよう、材料の数字は一つの紙にまとめておきます。

練習の仕方

当サイトで読んだ体験記では、面接での受け答えのつまずきが8件ありました(2026年10月)。緊張で頭が真っ白になった、一般論になった、などです。件数は少ないので、よくあるつまずきの例として見てください。

練習は、次の順で進めます。

  1. 材料を1分で話す:時間を計って、声に出します。長くなるものは、結論と数字を残して削ります。
  2. 深掘りを3段まで考える:「具体的には」「なぜ」「次に同じことがあったら」と自分に問います。
  3. 面接官を変えて考える:同じ材料を、役員に話すなら会社の課題に、人事に話すなら育成につなげます。
  4. 録音して聞き直す:結論が一文目にあるか、社内の言葉が残っていないかを確かめます。

一人で確かめるときの限界

材料の一覧と1分の話は、一人で準備できます。ただ、自分で考える深掘りは、答えやすい問いに偏ります。役員や人事の立場から、答えのどこを突かれるかは、自分の外から問いを受けてはじめて分かります。

昇格パスの無料体験では、登録の後に、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で1回ずつ練習できます。答えると「具体的には」などの深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。

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