昇格面接の終わりに、「最後に何かございますか」「ひとことどうぞ」と促されることがあります。気が抜けたところで聞かれるので、何も浮かばずに「特にありません」と答えてしまう人もいます。

最後の一言だけで合否が決まることは、まずないと考えられます(推測)。それでも、30秒ほどの時間を、面接全体の印象を整える場として使うことはできます。この記事では、その使い方を説明します。

※この記事に出てくる人物と答えの例は、説明のために作った架空のものです。

「最後に一言」で見られていること

この問いには、決まった正解はありません。評価する側が見ていることは、次のようなものだと考えられます(推測)。

  • 面接の流れを受けて、要点を短くまとめられるか
  • 言い足りなかったことを、落ち着いて補えるか
  • 昇格後の役割を、自分の言葉で言えるか
  • 時間の感覚があるか(長々と話し始めないか)

最後に急に熱弁をふるうと、それまでの落ち着いた受け答えと合わない印象を残すことがあります。短く、面接の内容とつながった一言にするのが基本です。

30秒の型

30秒は、文字にすると150字前後です(話す速さによって変わります)。次の3つを、1文ずつ言うと収まります。

  1. お礼:「本日はありがとうございました」
  2. 面接で伝えたことの核:「お話ししたとおり、新人の立ち上がりを早める仕組みづくりに、まず取り組みたいと考えています」
  3. 役職者としての姿勢:「チームの成果に責任を持つ立場として、部下の力を引き出すことに力を注ぎます」

2つ目が大事です。面接の中で話した内容を、一番短い形で言い直します。新しい話を持ち出すより、話したことを一本の線にまとめるほうが、評価する側の記憶に残りやすくなります。

言い残しを補う使い方

面接の中で、うまく答えられなかった質問があれば、最後の一言で補う手があります。

  • 「先ほどの部下育成のご質問で、言葉が足りなかった点を一つ補わせてください」
  • そのうえで、事実を1つと、自分がしたことを1つ、短く言う

補うのは1点だけにします。あれもこれもと付け足すと、30秒では収まりません。また、面接官の評価に反論する形にならないよう、「補足」の言い方にとどめます。

深掘りで崩れた答えを、最後に取り返そうと長く話すのは逆効果です。崩れたことを気にしすぎず、「これからどうするか」で締めるほうが、前を向いた印象になります。

避けたい一言

次のような一言は、避けたほうが無難です。

避けたい一言 評価する側の見え方
「特にありません」だけ 準備していない、または意欲が薄い印象を残すことがある
「どうしても合格したいです。よろしくお願いします」 気持ちは伝わるが、役職者として何をするかが見えない
面接と関係のない新しい話題 時間の感覚や、話をまとめる力に疑問を持たれる
「緊張してうまく話せませんでした」 言い訳に聞こえ、落ち着きのなさが残る
会社や上司への要望・不満 他責や評論家の印象になる

「特にありません」が、どんな場合でもいけないわけではありません。面接官が時間を気にしている様子なら、「本日はありがとうございました。お話しした取り組みに、全力で臨みます」と一言で終えるのも一つの判断です。

役職によって、締めの一文を変える

3つ目の「役職者としての姿勢」は、受ける役職によって中身が変わります。

  • 主任:「チームの中で、後輩が迷わず動けるよう、手順と相談の場を整えます」
  • 係長:「係の仕事が特定の人に偏らないよう、任せ方と確認の仕方を決めていきます」
  • 課長:「課の方針を係長と一緒に決め、任せたうえで結果に責任を持ちます」

例をそのまま使う必要はありません。面接で話した抱負と同じ方向の一文にします。抱負と締めの言葉の向きがずれていると、どちらが本心なのかと受け取られかねません。

よくある一言と直し方

課長の面接を受けたある受験者(架空)は、最初、次の一言を用意していました。

今日はうまく話せなかったところもありますが、熱意だけは誰にも負けません。よろしくお願いします。

評価する側から見ると、熱意は伝わっても、課長として何をする人かが見えません。前半の「うまく話せなかった」も、言わなくてよい弱気の一言です。

この受験者は、抱負で話した「係長に任せる範囲を広げる」を核にして、次のように直しました。

本日はありがとうございました。お話しした、係長に任せる範囲を広げる取り組みを、着任後の最初の半年で形にします。

熱意という言葉は消えましたが、何に力を注ぐのかがはっきりし、面接全体ともつながりました。

準備しておく2つの候補

当日の流れで使い分けられるよう、2つの候補を用意しておきます。

  • 候補A(まとめ型):お礼+面接で伝えたい核+役職者としての姿勢。言い残しがないときに使う
  • 候補B(補足型):お礼+補いたい1点+これからどうするか。答えに詰まった質問があったときに使う

候補Aの「核」は、面接の前に1文で決めておきます。たとえば「最初の1年でやること」を1つ。これは、抱負の質問への答えの核と同じものにしておくと、面接全体がつながります。

架空の例:保険会社の営業係長

保険会社の営業係長のCさん(41歳)は、課長の面接で、部下育成の質問に詰まりました。若手に任せた経験を聞かれ、うまく例が出てこなかったのです。

最後に一言を求められたとき、Cさんは候補Bを使いました。

先ほどの育成のご質問に、一つ補足させてください。昨年、若手に新規の顧客訪問を任せ、私は同行をやめて、訪問後の振り返りだけを週1回にしました。課長になっても、任せて振り返る形を続けたいと考えています。

事実が1つ、自分がしたことが1つ、これからが1つ。30秒ほどで収まり、詰まった印象を和らげる締めになりました。

面接官の様子に合わせて長さを変える

用意した30秒の一言も、その場の様子によって長さを変えます。

  • 面接官が時計を見ている、次の受験者が待っている:お礼と一言だけにして、10秒ほどで終える
  • 面接官がうなずきながら聞いている:用意した30秒をそのまま話す
  • 面接官から「どうぞ、ゆっくり」と言われた:それでも1分を超えないようにする

長さを変えても、核になる一文は変えません。短くするときは、お礼と核の一文だけを残します。

前日にやっておくこと

前日は、最後の一言のために新しい言葉を作るより、次の2つを確かめる時間にします。

  1. 面接で伝えたい核の一文(最初の1年でやること)を、声に出して言えるか
  2. 補足型の候補Bで使えそうな事実を、2つほど思い出しておく

当日の面接で、どの質問に詰まるかは分かりません。補足に使える事実を手元に持っておくと、詰まった質問があっても、最後に落ち着いて補えます。

声に出して時間を確かめる

30秒の一言は、頭の中では短く感じても、声に出すと長くなりがちです。一度、時計を見ながら声に出して、長さを確かめておきます。

面接で詰まりやすい人は、面接で頭が真っ白になる人の準備も参考にしてください。最初の一文を決めておく考え方は、最後の一言にも使えます。

「最後に一言」がない面接もある

面接によっては、最後に一言を求められないまま終わることもあります。そのときに、自分から話し始める必要はありません。用意した核の一文は、抱負の質問への答えの中で使えば十分です。

最後の一言は、あくまで面接全体の締めくくりです。ここに準備の時間をかけすぎず、実績や抱負の材料をそろえることを先にします。

一人で確かめるときの限界

30秒の一言は、一人でも時間を計って練習できます。ただ、この一言の良し悪しは、その前の受け答えとのつながりで決まります。深掘りを受けた後に、話したことを一文にまとめ直す練習は、実際に質問に答えてみないとできません。

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